影
「ピュアキュン企画」参加作品です。
俺は佐々木孝太。ごく普通の高校二年生だ。部活はサッカー部。自分でいうのもなんだが、クラスでは目立つ存在だと思っている。体育は好きだし、勉強も中の上だ。
そんな俺を悩ますのは一人の女子。飯島かおり。彼女はクラスで目立つ存在ではない。大人しい数人のグループの中にいる。
何故俺を悩ますのかって?好きだからに決まってるじゃないか!
あれは高校入試の日。俺は消しゴムを忘れてしまった。ペン入れをガサガサとあさっていたとき、斜め前に座っていた彼女が消しゴムを差し出してきた。
「私もうひとつあるから使って」
俺には天使のように見えた。そして高校で同じクラスになれた時は運命だと思った。でも彼女は大人しく、声をかけずらい。それに、消しゴムを返したくなかった。それが唯一俺と彼女を繋いでいると思うからだ。
そうして高校二年生でも同じクラスに!やっぱり運命か?でも皆のまえでは話しかけられない。気持ちはジリジリとしている。
ある夕方、彼女とその友達が教室の窓辺でお喋りをしていた。夕陽に照らされて、彼女の影が長く伸びる。
横向きの彼女の影。さらりと彼女の髪の毛が揺れる。優しげな微笑み。
俺はたまらず、彼女の影にそっと自分の唇を重ねた。彼女と俺の影が重なる。
俺にとっては、それがファーストキスだった。