一話 高校に上がったら友達が出来ると思ったら大間違いだった。
俺は、友達が出来ない。
こよなく二次元を愛し、こよなく三次元を嫌い、こよなく――――
世界を嫌った。
「もうこの世界が二次元になっちまえば良いのに」
そんな非現実的な妄言が口から溢れる。
嘘吐け。
それは自分がこの世界を愛してないからだろ?
幼稚園では同じ人間と戯れるのが好きだった。
小学校ではガキみたいな知能の人間が好きではなかった。
中学校ではゲスな論理しか言わない色ボケが嫌で堪らなかった。
高校になったら……………まぁ、それは今から造る。
俺みたな人間を[友達]と言うだけのたった二文字の関係になれるのか?
それは至って簡潔な答えで、[無理]だ。
同じ二文字なのに理由は全て違い、同じ二文字なのに与える全ての印象、現象はホログラフィーの様に虚栄消える。
だけど、そう言うのってカッコいい。
俺はまだまだガキだ。
世界も世間もそんなの知らない、俺は至って平々凡々で、常識的な模範生。
俺を不憫に思う奴はいないだろうな。
俺以外は。
ながったらしい校長の話を聞き、既に居る自分より年上の人間達に向けられる。
なんとも清々しい。
自分の席は………窓際。
それも一番後ろだった。
その位置は理論上最も素晴らしい席であり、一番この学校に在籍する人間が好む席だろう。
他者を蹴落とし、他人を蔑む。
至って平々凡々な事じゃないか?
隣に座る女子…………チャラそうな茶髪の女子だが、目鼻立ちは整っている。
世間的に言えば、[可愛い]という事だろうか。
だが生憎その三文字は、既に二次元に使われている。
終始彼女を気にする事もないだろう。
何せ、もう会話をする事は無いのだからな? 絶対に。
「ねぇ、キミ………根炉君って言うの?」
「おびぃっ!?」
何か変な声出た。
な、ななな何だコイツは他人の名前を呼ぶなど気持ち悪い何を考えて居るんだこの俗物め!!
ドキドキが止まらない。
生まれてこの方、やはり他人と喋るのは苦手だ。
特に女子、特に初対面。
「なんだ…………俺と隣で悪かったな……」
「いやいや、キミみたいなイケメン君と席が隣で嬉しいよ!」
「いけ……!? そ、それは俺の事言ってるのか貴様……」
彼女は満面の笑みでそう答える。
いやいやいやまてまて。
俺は生まれてずっとイケメン等と思った事はないし、言われた事もない。
だが、彼女は嘘偽りも無いような無垢な瞳で此方を見ている。
「お、お世辞はよせ…………気持ち悪いし」
「あはは、酷いねキミ」
おい、待て。
こいつ、同情してやがるな?
同情。
俺が最も嫌い、最も鬱陶しく思う言葉。
その同情だけで気分は乱される。
まるで自分がそんな経験があるかの様に振る舞い、近付こうとする。
中学校もその様な目をする女達が結構居た。
俺はその度に跳ね除け、忌み嫌っていた。
「おい、そんな見るんじゃない」
俺は思わず目を逸らす………が、逸らせなかった。
「ひはひは、ほっほおははひひほうほ~{要約:いやいや、もっとおはなししようよ~}」
彼女は顔の皮膚を全方向に向け、それはもう……言葉に出来ない顔になっていた!!
皮膚を思いっきり伸ばした少女は………残念過ぎる顔になっていた。
「ぶふぉ!? お、おまえなんだその顔………ククク……!」
「今度は……首里城!!」
彼女は一旦顔を戻し、再び顔を変形させる。
それはまるで………
首里城!!!
どうやってやったんだその顔! 変形しない箇所に肉が変形しており………最早神だ!!
その角どうなってんの!? 何で顔だけで首里城が出来るの!?
「お、お前ってすげぇな………」
「えへへ~、そうでしょ?」
思わず口に出してしまう。
彼女は赤くなった頬を撫でながら、笑ってそう言う。
なんだこれ、久し振りに笑った。
少し、肩が軽くなった気がした。
結局彼女とはチマチマ話すようになっていた。
それがどこか懐かしくて、嬉しかった。