日本語再入門講座【音声・音韻】 ~特殊拍~
前回、「拍」 について解説した。
日本語は原則「1つの音につき、1拍」 である。
「拍」 の例外は、前回に触れた「拗音」 があることも説明した。
さて、今回は「拍」 の種類の1つ「特殊拍」 について説明する。
日本語には3種類の「特殊拍」 がある。
「長音」、「撥音」、「促音」 が「特殊拍」 と呼ばれる。
名前を聞いただけで難しそうに思うかもしれないが、「長音」 とは「伸ばす音」 のことだ。
「びょ『う』いん」「おじ『い』さん」「コ『ー』ヒ『ー』」 のように、伸ばす音は単独では成立しない。
『撥音』 とは「撥ねる音」、すなわち「ん」 のことを指す。
「ん」 の発音だが、後ろの音の口の形で息を鼻に抜き1拍待つことで発生できる音である。
この撥音は日本語独特の発声法で他の言語ではあまりないものだ。
その為外国人にとっては、「撥音」 の「発音」 は、難しい部類に入る。
「促音」 とは「つまる音」、すなわち「っ」 を表す。
「が『っ』こう」「ほ『っ』かいどう」 などがこれにあたる。
この「特殊拍」も「一音一拍」 のルールが適用される。
では、何が「特殊」 なのだろうか。
答えは、「『特殊拍』 単独では、発音ができない」 という点だ。
例えば「コーヒー」 の「-」 のみを発音出来るだろうか。
あるいは「がっこう」 の「っ」 のみでは発音できない。
では「ん」 はどうだろうか。
実は「ん」 の発音はかなり難しいのだ。
理由は「ん」 のあとに来る音によって、「ん」 の発音方法が異なってくるからだ。
撥音「ん」 の発声法は、撥音の次に来る子音と調音点(その子音をどこで発生するか)を同じにする1拍の長さの鼻音だ。
難しく書いたが、簡単に書くと「ん」 の次に来る音によって、発声方法が異なってくるということである。
論より証拠。
次に挙げる単語を発音してもらいたい。その際、「ん」 をどの様に発声しているのかを注意してほしい。
①さんま
②サランラップ
③こんにちは
④たんか
⑤ペン
実はこれら①~⑤の「ん」 は全て、異なる場所で発声しているのだ。
例えば①は「ま行」 なので、両方の唇を震わせて発声している。
また②は歯茎に舌を付けて発声していないだろうか。
同様に③~⑤の舌の位置を確認してもらいたい。恐らく全て異なる位置にあるはずだ。
つまり、「ん」 の発音はその後ろに来る音で決定されるため、これも他の特殊拍同様に単体では成立できない拍と言えるだろう。
まとめると、「特殊拍」 は、「促音」「長音」「撥音」 の3つがあり、それ単独では拍として機能しない。