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石(伝説ではない)

○エーリルの家




 ディアナ姫が現状報告のために、エーリルの家を訪れていた。

 魔石の明かりで背の高い輪郭と小さな輪郭が照らされている。




ディアナ

「なかなか進展しないものですね」


エーリル

「十進法は二進法よりも文字が増えにくいって話?」


ディアナ

「いえ、物々交換に使う文字の話です」


エーリル

「そっか。もう十進法の話じゃないだね……」


ディアナ

「それは先日の話でしょう。

教えて頂いたことには感謝していますが、今はそれではない」


エーリル

「ちょっと100まで数えてた」


ディアナ

「では今度は私の話を聞いてください」拳を握りしめる


エーリル

「すみません調子に乗ってましたパンチはやめて」



ディアナ

「文字を考えて仲間に教えるのですが、これがどうにも伝わらない」


エーリル

「鋼の鎧をアロエの鎧にする嫌がらせとかしたんでしょ」


ディアナ

「微妙なので有り得ないですね」


エーリル

「アロエじゃ駄目か」


ディアナ

「原因は明らか。ドワーフたちは覚えるのが面倒くさいのです」


エーリル

「沢山覚えるってなると私も固まるけど」


ディアナ

「例えば、『/』のような簡単な模様を文字にしました」


エーリル

「書くのは便利ね」


ディアナ

「『意味が分からない』『意味を覚えるのがシンドイ』と言われました」


エーリル

「なるほど」


ディアナ

「今度は、意味しているものと同じような形の模様を文字にしました」


エーリル

「意味は覚えやすいわね」


ディアナ

「『模様を覚えるのがシンドイ』『書くのがシンドイ』と言われました」


エーリル

「なるほど」


ディアナ

「私の心が折れました」


エーリル

「えっと……ほら。

 何かありがたい言葉を文字にすればいいんじゃない? コンビニとか」


ディアナ

「『努力次第』」


エーリル

「…………」


ディアナ

「エルフと比べると、我々(ドワーフ)は拳で解決したがる種族です。

 頭を使う技術には、まだ時代が追いついていないのかもしれない」


エーリル

「使える者が使って勝手に強くなればいい」


ディアナ

「画期的な発想だっただけに、悔やまれます」




エーリル

「――――ところで、ここに石があってね」


ディアナ

「はい?」


エーリル

「まず、石を殴る」ドゴォ


ディアナ

「素手で砕くんですね」


エーリル

「次に砕けた石を体温で温める」


ディアナ

「卵じゃあるまいし」


エーリル

「次は復元魔法」


ディアナ

「手間がかかるんですね」


エーリル

「復元しちゃった……」


ディアナ

「えぇ……」


エーリル

「ま、まずは石を殴る。文字の力で」ドコォ


ディアナ

「素手は変わらないんですね」


エーリル

「そうするとゴーレムになる」


ディアナ

「もう私には理解できません」


エーリル

「これを繰り返した結果がこれ」


ディアナ

「なっ……」




 エーリルの背後から手の平サイズのゴーレムが数体湧いた。

 少なくとも高位魔法。石と石の間を魔力で繋ぎ、動けるようにしている。





エーリル

「腕の可動範囲が鹿よりもいい」


ディアナ

「鹿と張り合わなくてもいいでしょう」


エーリル

「足の可動範囲も鹿よりもいい。私はこれで満足」


ディアナ

「高位魔法が泣いてますよ。

 一体いくつの石を操ればそんなことになるのやら」


エーリル

「1体につき11個で、3体だから………」


ディアナ

「こっちのゴーレム、1体だけ12個の石でできてますね」


エーリル

「んん? んー」


ディアナ

「数えないんですか?」


エーリル

「なにか思いついたんだけど、もやもやする」


ディアナ

「何を悩んでいるか私にはさっぱりです」


エーリル

「でもディアナの気分が落ち着いたみたいだし、あとで考えよう」


ディアナ

「ああ、なるほど――――。そういうことでしたか」


エーリル

「そういうこと」


ディアナ

「少し、気長にやってみます」


エーリル

「こっちも気長に考えてみる」

◆世界観

・かなり原始的

・文字の文化がない

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