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数学徒は無機物にも礼儀正しい

○健全な研究室




天々城(てんてんじょう)

「なんでも光れば良いってもんじゃない」


エーリル

「光が存在するから、どうしようもないし」




 ディアナは窓に張り付き、外の景色を眺めていた。高くそびえ立つ建造物。地面に敷き詰められた石のタイル。部屋の内装までもがドワーフの技術を凌駕していた。




天々城

「こちらの小さい鎧さんは?」


エーリル

「ドワーフの姫で、名前はディアナ。

 こっちはディアナの鎧」


天々城

「ディアナ姫の()さん初めまして。

 数学徒の天々城です。こっちは俺のレポート」


エーリル

「大変、レポートさんから魂が感じられない」


天々城

「レポートさんは無機物だ」


エーリル

「魂を感じないものは無機物なのね。

 また一つ強くなった」


天々城

「ディアナ姫とその鎧ではない方はどちら様?」


エーリル

「…………他にいました?」


天々城

「オマエだよ」


エーリル

「エルフで賢者やっているエーリルです」


天々城

「賢者は冗談だろ。賢者ジョーク」


エーリル

「エルフとドワーフの言葉は私が創りました」


天々城

「ちょっと信じられないのでディアナ姫に確認を取らせてください」


ディアナ

「*********」


天々城

「ディアナ姫がバグった」


エーリル

「翻訳魔法かけるの忘れてた、ほいっ」


ディアナ

「――――通じていますか?」


天々城

「魔法ッテ凄イナ」


ディアナ

「ドワーフ族の姫、ディアナと申します」


天々城

「どうも、天々城です。

 さっきエーリルさんがエルフとドワーフの言葉を創ったとか言ってたけど、本当の話?」


ディアナ

「ええ。間違いありません」


天々城

「オマエが賢者エルフで俺の予想が焦土になった」


エーリル

「えっへん」


ディアナ

「出会って早々に申し訳ないのですが、相談がございます。

 事は急を要するのです」


天々城

「解決はできないかもしれないが、聞くだけならいくらでも」





~ディアナ姫の洗練された相談~

何と物々交換できるかを伝え、そして忘れない方法。





天々城

「物々交換は闇を生む」


ディアナ

「それは承知しております。

 しかし今のままでは……」


エーリル

「魔法は使っちゃ駄目って言うし、言葉は消える(・・・)し。

 私はお手上げ」


天々城

「言葉って消えるか?」


エーリル

「そうだけど」



天々城

「――――もしかして、文字がないのか?」



ディアナ

「『文字』ですか?」


天々城

「俺のレポートとかほら、何か書いてるだろ」


エーリル

「何かの模様だと思ってた」


天々城

「中世風ファンタジーかと思ったら原始風ファンタジー。

 闇の魔導書とか、ルーン文字が刻印された魔剣とかもないので、俺のロマンが塵になった」


ディアナ

「この模様があれば解決するのですか?」


天々城

「努力次第だナ」


ディアナ

「努力は惜しみません。

 ご迷惑をおかけしますが、どうか我々に力をお貸しください」


天々城

「こういうトリップ体験で俺の人生が強化されたし、その分をお礼はしたいと思っている。

 話しかできないけどナ」


ディアナ

「よろしくお願い致します」


天々城

「とは言っても、文字に関してはそこの賢者エルフに発想を伝えるだけだ」


エーリル

「文字は分からないよ」


天々城

「言葉マスターのエーリルさんは、どうやって言葉を創った?」


エーリル

「『アエエエエエエエエ』とか叫んでたけど、微妙だったので『ディアナ』にした」


天々城

「衝撃が走り抜けた」


ディアナ

「最初は気が狂ったかと思っていました」


エーリル

名前(・・)がないなら叫ぶしかないじゃない」


天々城

「エーリルさんの代弁をするなら、こういうこと」




【 ドワーフの姫 (音の相手を決める) ディアナ 】




エーリル

「言われてみれば」


ディアナ

「当たり前では」


天々城

「俺にできるのは当たり前のことだけだね。

 だから当たり前のようにこうしてやる」




【 指を曲げる (模様の相手を決める) 1 】




エーリル

「そういうことかッ!」


ディアナ

「どういうことですか?」


エーリル

「私の言葉は音を相手に選んでいたから、声にした途端に消えてしまう」


天々城

「人が喋る度に『貴様、音が失われているではないか』って言うと闇の力を味わえる」


エーリル

「目に見える相手を選べば、すぐには消えない!」


ディアナ

「もう少しわかりやすくお願い致します」


天々城

「賢者エルフが新しい知識を手に入れて喜んでいる顔」


ディアナ

「なるほど、消えてませんね」


天々城

「これを石に刻むと、遙か未来に賢者エルフの喜びの顔を伝えることができる」


ディアナ

「前半は素晴らしい発想だと思いますが、後半で少し複雑な心境になりました」


天々城

「俺からはそんなもんだナ。

 そっちの言葉がどんな物か知らないし」


ディアナ

「十分です。我々が欲していたものを頂きました。

 誠にありがとうございます」



エーリル

「――――よし、ちょっと残る!」


天々城

「へ?」


エーリル

「ディアナは先に帰ってて。

 私は力を手に入れる」


ディアナ

「私一人でどうやって帰れば」



\カッ/



エーリル

「さらば、ディアナ」


天々城

「姫ェエエエ!」

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