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〇健全な研究室



天々城

「クワトロドルフはなにをやってるんだ?」


クアトロドルフ

「なにって、さトぅーさんから一階述語論理を教えてもらってるんだよ。

 びっくりするくらい文法が多いね」


さトぅー

「自然演繹で∧∨⇔∃が最初からある体系でやってるから、文法が多いのは当たり前よ。

 すぐに覚えちゃったから、あとは実践で感覚をつかむだけね」


天々城

「お前、無駄に記憶力はいいからナ。

 一回生で文系科目の点数が良かったの、やたら自慢してただろう?」


クアトロドルフ

「アレはただの報告さ。

 ボクはあくまで合同算術しかわからない」


さトぅー

「はいはい、もう論理を哲学って言わないでよね」


クアトロドルフ

「キミの話でなんとなくわかったから言わないよ、約束しよう」


さトぅー

「下手に約束なんてしないほうがいいわよ」




天々城

「クアトロドルフが復帰したところで、続きを話そう。

 自然数には大きいとか小さいとかあるよナ」


エーリル

「100000000とかすごく大きい感じ」


ディアナ

「自然数では0が一番小さいですね」


天々城

「ペアノ算術では大小を定義できる。

 これを使えば2つの数を比べて、大きい小さいがわかるってわけだ」




(以上)の定義

m,n:項

l:変数記号

(m≦n) :⇔ (∃l ((m+l) = n))




天々城

「mとnにズレがあるってことだナ」


エーリル

「あー、そういう定義でいいのか」


天々城

「≦は⇒とよく似ている」




■thm2.15(≦の反射性)

n:変数記号


PA |- (∀n (n≦n))


proof

1 (n = n) [=の反射性]

2 (∀n ((n+0) = n)) [PA2]

3 ((n+0) = n) [∀el 2]


c:変数記号


4 (∃c ((n+c) = n)) [∃in 3]

5 (n≦n) [def≦ in 4]





ディアナ

「nはn以上ですかね。

 ちょっと不思議な感じですけど」


天々城

「必ずズレがあるような大小関係も定義できるが、後回しだ。

 次へ進む」




■thm2.16(≦の推移性)

m,n,l:変数記号


PA |- (∀m (∀n (∀l (((m≦n)∧(n≦l))⇒(m≦l)))))


proof

1 ((m≦n)∧(n≦l)) [ax]


c,d,e:変数記号


2 (∀m (∀n (∀l (((m+n)+l) = (m+(n+l)))))) [+の結合性]

3 (((m+c)+d) = (m+(c+d))) [AAel 2]

4 ((m+(c+d)) = ((m+c)+d)) [=の可換性 3]


5 (m≦n) [∧elR 1]

6 (∃c ((m+c) = n)) [def≦ el 5]

7 ((m+c) = n) [ax]

8 (((m+c)+d) = (n+d)) [項の代入原理 7]


9 (n≦l) [∧elL 1]

10 (∃d ((n+d) = l)) [def≦ el 9]

11 ((n+d) = l) [ax]


12 ((m+(c+d)) = l) [=の3推移性 4,8,11]

13 (∃e ((m+e) = l)) [∃in 12]

14 (m≦l) [def≦ in 13]


15 (((n+d) = l)⇒(m≦l)) [⇒in 14 el 11]

16 (∀d (((n+d) = l)⇒(m≦l))) [∀in 15]

17 (m≦l) [∃el 10,16]


18 (((m+c) = n)⇒(m≦l)) [⇒in 17 el 7]

19 (∀c (((m+c) = n)⇒(m≦l))) [∀in 18]

20 (m≦l) [∃el 6,19]


21 (((m≦n)∧(n≦l))⇒(m≦l)) [⇒in 20 el 1]

22 (∀l (((m≦n)∧(n≦l))⇒(m≦l))) [∀in 21]

23 (∀n (∀l (((m≦n)∧(n≦l))⇒(m≦l)))) [∀in 22]

24 (∀m (∀n (∀l (((m≦n)∧(n≦l))⇒(m≦l))))) [∀in 23]



エーリル

「今までの証明となんか雰囲気が違う」


天々城

「∃が出てくるからナ。

 大体長くなるのは仕方ない」


エーリル

「∃こわい」



天々城

「次に≦の『反対称性』っていうのを証明する」


クアトロドルフ

「……これちょっとヘンだね。

 反対称性を証明しようとすると妙に引っかかる」


天々城

「暗算したのか?」


クアトロドルフ

「いや、感だよ」


天々城

「そうか。いやまあ、これが実際引っかかるんだ。

 だから先に引っかかりを倒しておくぞ」




■thm2.17

0:定数記号

c,d:変数記号

+:項数2の関数記号


PA |- (∀c (∀d (((c+d) = 0)⇒(c = 0))))


proof

1 (∀n ((n+0) = n)) [PA2]

2 ((c+0) = c) [∀el 1]

3 (c = (c+0)) [=の可換性 2]


4 ((c+0) = 0) [ax]


5 (c = 0) [=の推移性 3,4]

6 (((c+0) = 0)⇒(c = 0)) [⇒in 5 el 4]


k:変数記号


7 (∀m (∀n ((m+S(n)) = S((m+n))))) [PA3]

8 ((c+S(k)) = S((c+k))) [AAel 7]

9 (S((c+k)) = (c+S(k))) [=の可換性 8]


10 ((c+S(k)) = 0) [ax]


11 (S((c+k)) = 0) [=の推移性 9,10]


12 (∀n (¬(S(n) = 0))) [PA1]

13 (¬(S((c+k)) = 0)) [∀el 12]


14 (c = 0) [explosion 12,13]

15 (((c+S(k)) = 0)⇒(c = 0)) [⇒in 14 el 10]

16 ((((c+k) = 0)⇒(c = 0)) ⇒ (((c+S(k)) = 0)⇒(c = 0))) [⇒in 15]

17 (∀k ((((c+k) = 0)⇒(c = 0)) ⇒ (((c+S(k)) = 0)⇒(c = 0)))) [∀in 16]

18 (∀d (((c+d) = 0)⇒(c = 0))) [数学的帰納法 6,17]

19 (∀c (∀d (((c+d) = 0)⇒(c = 0)))) [∀in 18]




天々城

「2つの自然数を足して0になったら必ず片方は0になる。

 ちょっと計算すれば、当然両方とも0だナ」


エーリル

「PA1をはじめて使った」


ディアナ

「これを使うんですか?」


天々城

「そうだ」




■thm2.18(≦の反対称性)

m,n:変数記号


PA |- (∀m (∀n (((m≦n)∧(n≦m))⇒(m=n))))


proof

1 ((m≦n)∧(n≦m)) [ax]


c,d,l:変数記号


2 (∀m (∀n (∀l (((m+n)+l) = (m+(n+l)))))) [+の結合性]

3 (((m+c)+d) = (m+(c+d))) [AAel 2]

4 ((m+(c+d)) = ((m+c)+d)) [=の可換性 3]


5 (m≦n) [∧elR 1]

6 (∃c ((m+c) = n)) [def≦ el 5]

7 ((m+c) = n) [ax]

8 (((m+c)+d) = (n+d)) [項の代入原理 7]


9 (n≦m) [∧elL 1]

10 (∃d ((n+d) = m)) [def≦ el 9]

11 ((n+d) = m) [ax]


12 (∀n ((n+0) = n)) [PA2]

13 ((m+0) = m) [∀el 12]


14 (m = (m+0)) [=の可換性 13]


15 ((m+(c+d)) = (m+0)) [=の4推移性 4,8,11,14]


16 (∀m (∀n (∀l (((l+m) = (l+n))⇒(m = n))))) (+の左簡約律)

17 (((m+(c+d)) = (m+0))⇒((c+d) = 0)) [AAel 15]


18 (∀c (∀d (((c+d) = 0)⇒(c = 0)))) [thm2.17]

19 (((c+d) = 0)⇒(c = 0)) [AAel 18]


20 (((m+(c+d)) = (m+0))⇒(c = 0)) [⇒の推移性 17,19]

21 (c = 0) [⇒el 15,20]

22 ((m+c) = (m+0)) [項の代入原理 21]

23 ((m+0) = (m+c)) [=の可換性 22]


24 (m = n) [=の3推移性 14,23,7]


25 (((n+d) = m)⇒(m = n)) [⇒in 24 el 11]

26 (∀d (((n+d) = m)⇒(m = n))) [∀in 25]

27 (m = n) [∃el 10,26]


28 (((m+c) = n)⇒(m = n)) [⇒in 27 el 7]

29 (∀c (((m+c) = n)⇒(m = n))) [∀in 28]

30 (m = n) [∃el 6,29]


31 (((m≦n)∧(n≦m))⇒(m = n)) [⇒in 30 el 1]

32 (∀n (((m≦n)∧(n≦m))⇒(m = n))) [∀in 31]

33 (∀m (∀n (((m≦n)∧(n≦m))⇒(m = n)))) [∀in 32]



天々城

「証明は+の可換性くらいの難易度だろうナ」


ディアナ

「これは⇔inとよく似てますね」


天々城

「≦と=はきっと仲がいいんだろう」


エーリル

「反対称性の証明えぐい」

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