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×と分配法則2

〇健全な研究室



天々城

「+と×の可換性が証明できたのは正直デカい。

 文字を入れ替えるだけで証明できるのがあるからナ」


ディアナ

「例えばどんな定理ですか?」


天々城

「そうだナ。とりあえず『1』を定義しよう」




■1の定義

1:=S(0)




エーリル

「0の次か」


ディアナ

「1だけを定義するなら、他の数も一緒に定義すればいいと思うのですが」


天々城

「0と1は自然数の中でかなり特別な数だからだ。

 0は+の単位元で、×の吸収元。

 そして1は×の単位元になる」




■thm2.10(×の右単位元)


PA |- (∀n ((n×1) = n))


proof

1 (1 = S(0)) [1の定義]

2 ((n×1) = (n×S(0))) [項の代入原理 1]


3 (∀m (∀n ((m×S(n)) = ((m×n)+m)))) [PA5]

4 ((n×S(0)) = ((n×0)+n)) [AAel 3]


5 (∀n ((n×0) = 0)) [PA4]

6 ((n×0) = 0) [∀el 5]

7 (((n×0)+n) = (0+n)) [項の代入原理 6]


8 (∀n ((0+n) = n)) [+の左単位元]

9 ((0+n) = n) [∀el 8]


10 ((n×1) = n) [=の4推移性 2,4,7,9]

11 (∀n ((n×1) = n)) [∀in 10]




■thm2.11(×の左単位元)

n:変数記号

×:項数2の関数記号


PA |- (∀n ((1×n) = n))


proof

1 (∀n ((n×1) = n)) [×の右単位元]

2 ((n×1) = n) [∀el 1]


3 (∀m (∀n ((m×n) = (n×m)))) [×の可換性]

4 ((n×1) = (1×n)) [AAel 3]

5 ((1×n) = (n×1)) [=の可換性 4]


6 ((1×n) = n) [=の推移性 5,2]

7 (∀n ((1×n) = n)) [∀in 6]




エーリル

「×の可換性が火を噴いた」


ディアナ

「数学的帰納法を使いませんでしたね」


天々城

「おかげで証明も半分くらいで済んでいるナ。

 スキルを揃えたらあとは発動するだけって感じだ」


ディアナ

「道具が揃えば便利になるということでしょうかね」


天々城

「まあ、数学に限った話じゃないけどナ」




■thm2.12(+×の右分配法則)

m,n,l:変数記号

+,×:項数2の関数記号


PA |- (∀m (∀n (∀l (((m+n)×l) = ((m×l)+(n×l))))))


proof

1 (∀m (∀n ((m×n) = (n×m)))) [×の可換性]

2 (((m+n)×l) = ((l×(m+n))) [AAel 1]


3 (∀m (∀n (∀l ((m×(n+l)) = ((m×n)+(m×l)))))) [+×の左分配法則]

4 ((l×(m+n)) = ((l×m)+(l×n))) [AAel 3]


5 ((l×m) = (m×l)) [AAel 1]

6 ((l×n) = (n×l)) [AAel 1]

7 (((l×m)+(l×n)) = ((m×l)+(n×l))) [項の代入原理 5,6]


8 (((m+n)×l) = ((m×l)+(n×l))) [=の3推移性 2,4,7]

9 (∀l (((m+n)×l) = ((m×l)+(n×l)))) [∀in 8]

10 (∀n (∀l (((m+n)×l) = ((m×l)+(n×l))))) [∀in 9]

11 (∀m (∀n (∀l (((m+n)×l) = ((m×l)+(n×l)))))) [∀in 10]




天々城

「分配法則もこのくらいの変形で倒せる」


ディアナ

「可換性すごいですね」


天々城

「可換性はいいぞ」




■thm2.13(+の右簡約律)

m,n,l:変数記号

+:項数2の関数記号


PA |- (∀m (∀n (∀l (((m+l) = (n+l))⇒(m = n)))))


proof

1 ((m+0) = (n+0)) [ax]


2 (∀n ((n+0) = n)) [PA2]

3 ((m+0) = m) [∀el 2]

4 ((n+0) = n) [∀el 2]


5 (((m+0) = (n+0)) ⇔ (m = n)) [論理式の代入原理 3,4]

6 (m = n) [⇔elL 1,5]

7 (((m+0) = (n+0))⇒(m = n)) [⇒in 6,1]


k:変数記号


8 (((m+k) = (n+k))⇒(m = n)) [ax]

9 ((m+S(k)) = (n+S(k))) [ax]


10 (∀m (∀n ((m+S(n)) = S((m+n))))) [PA3]

11 ((m+S(k)) = S((m+k))) [AAel 10]

12 ((n+S(k)) = S((n+k))) [AAel 10]


13 (((m+S(k)) = (n+S(k))) ⇔ (S((m+k)) = S((n+k)))) [論理式の代入原理 11,12]

14 (S((m+k)) = S((n+k))) [⇔elL 9,13]


15 (∀m (∀n ((S(m) = S(n))⇒(m = n)))) [PA0]

16 ((S((m+k)) = S((n+k)))⇒((m+k) = (n+k))) [AAel 15]


17 ((S((m+k)) = S((n+k)))⇒(m = n)) [⇒の推移性 16,8]

18 (m = n) [⇒el 14,17]

19 (((m+S(k)) = (n+S(k)))⇒(m = n)) [⇒in 18 el 9]


20 ((((m+k) = (n+k))⇒(m = n)) ⇒ (((m+S(k)) = (n+S(k)))⇒(m = n))) [⇒in 19 el 8]

21 (∀k ((((m+k) = (n+k))⇒(m = n)) ⇒ (((m+S(k)) = (n+S(k)))⇒(m = n)))) [∀in 20]

22 (∀l (((m+l) = (n+l))⇒(m = n))) [数学的帰納法 7,21]

23 (∀n (∀l (((m+l) = (n+l))⇒(m = n)))) [∀in 22]

24 (∀m (∀n (∀l (((m+l) = (n+l))⇒(m = n))))) [∀in 23]




天々城

「同じものを足して、しかも等しいなら元の数も一緒って感じだろうナ」


エーリル

「(n+1)と(1+1)が等しいと(n = 1)か、ふむふむ」


ディアナ

「足したときに条件が揃えば『戻せる』ということですか?」


天々城

「いきなり核心をついてくるとは、さすがドワーフの姫」




■thm2.14(+の左簡約律)

m,n,l:変数記号

+:項数2の関数記号


PA |- (∀m (∀n (∀l (((l+m) = (l+n))⇒(m = n)))))


proof

1 (∀m (∀n ((m+n) = (n+m)))) [+の可換性]

2 ((m+l) = (l+m)) [AAel 1]


3 ((l+m) = (l+n)) [ax]


4 ((l+n) = (n+l)) [AAel 1]


5 ((m+l) = (n+l)) [=の3推移性 2,3,4]

6 (∀m (∀n (∀l (((m+l) = (n+l))⇒(m = n))))) [+の右簡約律]

7 (((m+l) = (n+l))⇒(m = n)) [AAel 6]

8 (m = n) [⇒el 5,7]

9 (((l+m) = (l+n))⇒(m = n)) [⇒in 8 el 3]

10 (∀l (((l+m) = (l+n))⇒(m = n))) [∀in 9]

11 (∀n (∀l (((l+m) = (l+n))⇒(m = n)))) [∀in 10]

12 (∀m (∀n (∀l (((l+m) = (l+n))⇒(m = n))))) [∀in 11]




エーリル

「可換性は最強」


天々城

「数学の中でも『可換』『有限』『線形』『ハウスドルフ』あたりはかなり穏やかな性格をしてるナ、。

 これが『非可換』『無限』『非線形』『非ハウスドルフ』とかなるとラスボスなのに四天王になる」


エーリル

「ラストとは一体」


クアトロドルフ

「響きだけでも恐ろしいね。

 人の人生を崩壊させかねないよ」


さトぅー

「無限生成非可換群を分類せよとか?」


天々城

「やめてさしあげろ」

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