エルフは指を曲げると力が高まる
○エルフの村――エーリルの家の前
この日、ドワーフの姫がエルフの村を訪れていた。背はエルフの半分ほどで、金属の鎧を身に纏っている。シリアスな相談をするはずだったが、目の前の男エルフの方がシリアスしていた。
男エルフ
「エーリル様が、エーリル様が……」
ディアナ
「どうなさいましたか?」
男エルフ
「ドドド、ドワーフの姫君!」
ディアナ
「失礼。エーリルと話がしたいのですが」
男エルフ
「それが何と言いますか、唐突に光になられてしまって」
ディアナ
「エルフは唐突に光になるのですか?」
男エルフ
「まさか。あのようなことは例がありません。
草を食べただけであんなことになるなんて」
\カッ/
エーリル
「おかえり私」
男エルフ
「エーリル様!」
ディアナ
「さっきの話、信じましょう」
エーリル
「古代兵器を伝授してもらった」
男エルフ
「心配しました。ご無事でなりよりです」
エーリル
「私と次の次の次の次の、次の次の次の次の次で村全員っと」指を曲げる
男エルフ
「何の儀式ですか?」
エーリル
「両手の指の数と、村のエルフの数は同じ」
男エルフ
「何をいきなり」
エーリル
「なので、木の実を取ってくるときに自分の指を数えれば、村全員分を丁度取ってくることができる。
優れたエルフならこの重大さがわかるよね?」
男エルフ
「…………ッ!」
エーリル
「これならよっぽどの事がない限り、木の実を取りすぎることはないし、木の実が少なすぎることもない」
男エルフ
「光になることで知恵を授かったのですね!」
エーリル
「光の先は不思議空間だった」
男エルフ
「この方法、村の者たちに伝えるべきでは」
エーリル
「そう思う。伝言お願いできる?
私は指を曲げながら強くなりたい」
男エルフ
「承知しました。お任せください」
ディアナ
「エーリル。ちょっと」
エーリル
「ごめん。気づいてなかった」
ディアナ
「その話、詳しく教えてください」
○エルフの村――エーリルの家
ディアナ
「指を使って数える発想はありませんでした」
エーリル
「なんであんな単純なことを思いつかなかったのかと敗北感に包まれた」
ディアナ
「でも食べ物は頂いたんですよね?」
エーリル
「食べ物を頂くことによって強い幸福感に包まれた」
ディアナ
「では幸福感に包まれたところで相談に乗ってください」
エーリル
「指を使って数えればいい」
ディアナ
「相談に乗りなさい」拳を握りしめる
エーリル
「すみません調子に乗ってました。
解決するからパンチはやめて」
ディアナ
「ドワーフが自分の食べ物や金属鉱石などを他人と交換するのはご存じですよね」
エーリル
「もちろん。エルフとドワーフでも色々交換するし」
ディアナ
「例えば、さっきの男エルフは貴重な薬草を、私は魔力が籠もった宝石を交換する。
その後、私は魔力が籠もった宝石を、エーリルはただの雑草を交換する」
エーリル
「そしたら私は闇になって浄化される」
ディアナ
「大体そういうことが起こりました。
つまり詐欺ですね」
エーリル
「なるほど。その罪人を私が浄化するわけね」
ディアナ
「私が欲しいのは知恵です。
魔力は要らない」
エーリル
「じゃあ、ご所望の知恵は?」
ディアナ
「何と何が交換できるかを伝え、そして忘れない方法。
薬草と宝石が交換できると決めたとしても、それが伝わらなかったり、忘れたりしては不便でしょう?」
エーリル
「そっか。言葉は言ったらなくなるから、覚えるのには向いてない」
ディアナ
「交換する物も沢山あります」
エーリル
「ムズカシイなー」
ディアナ
「だから相談しに来たのです」
エーリル
「いやでも、何か心当たりがあるのよね」
ディアナ
「指を使って数えればいいなんて言うのは駄目ですよ」
エーリル
「――――うん、やっぱりそれね」
ディアナ
「まさか。そんな訳ないでしょう」
エーリル
「草を食べればすべてわかる」
◆人物紹介
ディアナ:ドワーフの姫。小さめ。