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エルフに数学を装備するだけ  作者: めいぜんおーえす
三章:一階述語論理
34/51

自由変数、一階述語論理の論理的公理、推論規則

2017/1/30

∀inの定義を修正しました

〇健全な研究室



さトぅー

「代入は定義した。

 自由変数を定義すれば、論理的公理と推論規則の話ができるわね」


エーリル

「どんな定義?」




自由(free )変数(variable)fvの定義

nを1以上の自然数(1,...)とする。


(1) Rが項数nの関係記号でt_1,...,t_nが項 ならば

  fv(R(t_1,...,t_n)) := tv(t_1)∪...∪tv(t_n)


φ,ψを論理式,xを変数記号とする。

(2) fv((φ⇒ψ)) := fv(φ)∪fv(ψ)

(3) fv((¬φ)) := fv(φ)

(4) fv((∀x φ)) := fv(φ)\{x}


fv(φ)をφに含まれる自由変数と読むことにする。




エーリル

「tvは項に含まれる変数記号の集まりってわかるけど、\ってなに?」


さトぅー

「直感的には左の集まりから右の集まりを引くの」




・例:変数x,y,zについて

{x,y,z}\{x,y} = {z}




エーリル

「\の右の集まりをキャンセルするのか。

 ……あれ、{x}\{y}なんかはどうなるの?

 左の集まりにキャンセルする相手がいないんだけど」


さトぅー

「相手がいないモノは無視するの。例えばこんな感じ」




・例:変数x,yについて

{x}\{y} = {x}




エーリル

「代入に比べたら簡単か」


さトぅー

「いくつか自由変数の例を作るわね」




■例

y_1,z:変数記号

走った:項数1の関係記号

混ぜた:項数2の関数記号



・fv((∀z (¬混ぜた(y_0,z))))

 = fv((¬混ぜた(y_0,z)))\{z} [fvの定義(4)]

 = fv(混ぜた(y_0,z))\{z} [fvの定義(3)]

 = (tv(y_0)∪tv(z))\{z} [fvの定義(1)]

 = ({y_0}∪{z})\{z} [tvの定義(2)]

 = {y_0,z}\{z} [∪を計算]

 = {y_0} [\を計算]


・fv((走った(z)⇒(∀z 混ぜた(y_0,z))))

 = fv(走った(z))∪fv((∀z 混ぜた(y_0,z))) [fvの定義(2)]

 = tv(z)∪(fv(混ぜた(y_0,z))\{z}) [fvの定義(2),fvの定義(4)]

 = {z}∪(({y_0}∪{z})\{z}) [tvの定義(2),fvの定義(1)]

 = {z}∪({y_0,z}\{z}) [∪を計算]

 = {z}∪{y_0} [\を計算]

 = {z,y_0} [∪を計算]



さトぅー

「感覚的には∀がくっついてない変数を全部取ってくる感じかしら。

 だたし、∀の外側で生き残っている場合は自由変数になるわね」


エーリル

「なるほどなるほど。

 変数が∀に捕まったとしても、∀の外まで逃げ切ったら自由なのね」


さトぅー

「あとはメタじゃない一階述語論理の=。

 今までの=はメタだったけど、ここからは違うことにするわね」




■項数2の関数記号、関係記号

項数2の関数記号、関係記号について、次のように定義し、都合によって使い分ける。


t,u:項


f:項数2の関係記号

(tfu) :⇔ f(t,u)


R:項数2の関係記号

(tRu) :⇔ R(t,u)


特に等号=は、以下のように定義される。


=:項数2の関係記号

(t = u) :⇔ =(t,u)




エーリル

「今まで=は2つの変数の間に書いたけど、定義しないと文法ミスになるのか。

 言われてみれば当たり前だった」


さトぅー

「1+2とかもそうね。

 文法に従うなら+(1,2)だけど、伝統とか読みやすさの都合でこんな並び方で書くこともある」


天々城

「できれば統一してほしいんだけど、不便になることもあるんだよナあ……」


さトぅー

「確認だけど、公理は自分で決めていいものだったわよね?」


エーリル

「うん、そうだった」


さトぅー

「ここからは公理系は公理の集まり、公理は公理系の中の一つとして言葉を使い分けるけど、大丈夫?」


エーリル

「OK」


さトぅー

「これですべての準備が整ったから、一階述語論理の論理的公理、推論規則を紹介できる」


エーリル

「長かった」




■一階述語論理G1の論理的公理


φ,ψ,ρ:論理式

x,y,z:変数記号

t:項

とする。


Ax1 (φ⇒(ψ⇒φ))

Ax2 ((φ⇒(ψ⇒ρ))⇒((φ⇒ψ)⇒(φ⇒ρ)))

Ax3 (((¬ψ)⇒(¬φ))⇒(φ⇒ψ))

Ax4 ((∀x φ)⇒(φ[t/x]))

Ax5 ((∀x (φ⇒ψ))⇒(φ⇒(∀x ψ))) [fv(φ)はxを含まない]

Ax6 (∀x (x = x))

Ax7 (∀x (∀y ((x = y)⇒((φ[x/z])⇒(φ[y/z])))))




■一階述語論理G1の推論規則


φ (φ⇒ψ)

-----------[⇒el]

ψ




φを結論とするすべての仮定かつ公理ψが、fv(ψ)がxを含まないとき


φ

--------[∀in]

(∀x φ)




エーリル

「Ax7まであるし、なんか括弧書きがある……。

 いやでも、Ax1,Ax2,Ax3,⇒elは命題論理と一緒か」


さトぅー

「残りのAx4,Ax5,∀inは∀の扱いを、Ax6,Ax7は=の扱いを言っているわね。だから命題論理を拡張して、文章の内部まで扱えるようにしたのが一階述語論理になっている」


エーリル

「やっぱりパワーアップか。

 じゃあ命題論理の定理って、一階述語論理でもいえるのかな」


さトぅー

「そうなんだけど、一つ修正しないといけない」


エーリル

「えっ、なに?」


さトぅー

「──演繹定理」

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