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エルフに数学を装備するだけ  作者: めいぜんおーえす
三章:一階述語論理
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項、原子的論理式、論理式

〇健全な研究室



エーリル

「代入って文字を変えるだけだよね」


さトぅー

「そうだけど、もうちょっと待って。

 論理式が定義できればその話ができるから」


エーリル

「じゃあ論理式の定義を教えて」



さトぅー

「それもちょっと準備がいるの。

 『耳』が定数記号、『長い』が項数1の関数記号としよう。

 『長い耳』は文章じゃないけど、なんとなく意味はわかるでしょ?」


エーリル

「さトぅーさんの耳よりは長いってわかる」


さトぅー

「だからまず、文章にはならないけど意味がわかりそうな記号の列を定義して、それを使って論理式を定義する」




(term)の定義

nを1以上の自然数(1,...)とする。


(1) xが変数記号 ならば xは項

(2) cが定数記号 ならば cは項

(3) fが項数nの関係記号でt_1,...,t_nが項 ならば f(t_1,...,t_n)は項

(4) (1),(2),(3)以外は項ではない。




エーリル

「んー、例がほしい」


さトぅー

「いいわよ」




■例

耳,鼻:定数記号

y_1:変数記号

長い:項数1の関数記号

混ぜた:項数2の関数記号


・耳,鼻は定数記号だから、耳,鼻は項。

・y_1は変数記号だから、y_1は項。

・長いは項数1の関数記号で耳は項だから、長い(耳)は項。

・混ぜたは項数2の関数記号でy_1,長い(耳)は項だから、

 混ぜた(y_1,長い(耳))は項。


・混ぜた(耳)は項の定義(1),(2),(3)以外だから項ではない。

・長い耳は項の定義(1),(2),(3)以外だから項ではない。



エーリル

「項数って関数記号を項にするのに必要な項の数のことなのか」


さトぅー

「そういうこと。混ぜた(耳)は項数2なのに項が1つしかないから文法ミスになったわけね」


エーリル

「OK、わかってきた。

 これで論理式の準備はできたの?」


さトぅー

「命題論理の命題変数は覚えてる?

 φとかψで使ってた文字」


エーリル

「この目に焼き付いてる」


さトぅー

「命題変数が命題論理の論理式の、限界まで分けた一番小さな文章だったのわかる?」


エーリル

「あー、言われてみればそうかも」


さトぅー

「今から一階述語論理で命題変数のようなものを定義する」




原子的(atomic)論理式( formula)の定義

nを1以上の自然数(1,...)とする。


Rが項数nの関係記号でt_1,...,t_nが項のとき、

R(t_1,...,t_n)を原子論理式と定義する。




さトぅー

「さっきの例に関係記号を加えて例を作ってみて」


エーリル

「さっきと同じ要領でできそう」



■例

耳,鼻:定数記号

y_1:変数記号

長い:項数1の関数記号

混ぜた:項数2の関数記号

走った:項数2の関係記号


・鼻,混ぜた(y_1,長い(耳))は項で、走ったは項数2の関係記号だから、

 走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は原子論理式。


・走った(鼻)は原子的論理式ではない。



エーリル

「なんか、凄い光景の文章になった」


さトぅー

「えーっと、とりあえず文章ができたってことでいい?」


エーリル

「バッチリできたと思います」


さトぅー

「準備ができたから、いよいよ論理式を定義するわ」


エーリル

「待ってました」




■論理式Fmlの定義

(1) φが原子論理式 ならば φはFml

(2) φとψがFml ならば (φ⇒ψ)はFml

(3) φがFml ならば (¬φ)はFml

(4) φがFmlでxが変数記号 ならば (∀x φ)はFml

(5) (1),(2),(3),(4)以外はFmlではない。




エーリル

「原子的論理式を命題変数みたいなものと思えば(3)までは命題論理と一緒か。

 (4)の∀だけ様子が違う」


さトぅー

「(∀xφ)は『すべてのxについてφ』って読めばいい。

 命題論理では項が使えないから変数も使えない。

 対して一階述語論理では、変数が使えるから『すべて』が使えるの」


エーリル

「文法が違うと定義できるできないがあるのか。

 言われるまで気づかなかった」


さトぅー

「さっきの例で何か論理式を作ってみる?」


エーリル

「これは∀一択でしょ」




■例

耳,鼻:定数記号

y_1:変数記号

長い:項数1の関数記号

混ぜた:項数2の関数記号

走った:項数2の関係記号


・走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は原子論理式だから、

 走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は論理式。


・走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は論理式でy_1は変数記号だから、

 (∀y_1 走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳))))は論理式。




エーリル

「これを自然言語で考えたら『すべてのなにかを長い耳と混ぜた場所で鼻が走った』みたいな強い主張になる」


さトぅー

「異様な光景すぎて考えたくないんだけど」


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