項、原子的論理式、論理式
〇健全な研究室
エーリル
「代入って文字を変えるだけだよね」
さトぅー
「そうだけど、もうちょっと待って。
論理式が定義できればその話ができるから」
エーリル
「じゃあ論理式の定義を教えて」
さトぅー
「それもちょっと準備がいるの。
『耳』が定数記号、『長い』が項数1の関数記号としよう。
『長い耳』は文章じゃないけど、なんとなく意味はわかるでしょ?」
エーリル
「さトぅーさんの耳よりは長いってわかる」
さトぅー
「だからまず、文章にはならないけど意味がわかりそうな記号の列を定義して、それを使って論理式を定義する」
■項の定義
nを1以上の自然数(1,...)とする。
(1) xが変数記号 ならば xは項
(2) cが定数記号 ならば cは項
(3) fが項数nの関係記号でt_1,...,t_nが項 ならば f(t_1,...,t_n)は項
(4) (1),(2),(3)以外は項ではない。
エーリル
「んー、例がほしい」
さトぅー
「いいわよ」
■例
耳,鼻:定数記号
y_1:変数記号
長い:項数1の関数記号
混ぜた:項数2の関数記号
・耳,鼻は定数記号だから、耳,鼻は項。
・y_1は変数記号だから、y_1は項。
・長いは項数1の関数記号で耳は項だから、長い(耳)は項。
・混ぜたは項数2の関数記号でy_1,長い(耳)は項だから、
混ぜた(y_1,長い(耳))は項。
・混ぜた(耳)は項の定義(1),(2),(3)以外だから項ではない。
・長い耳は項の定義(1),(2),(3)以外だから項ではない。
エーリル
「項数って関数記号を項にするのに必要な項の数のことなのか」
さトぅー
「そういうこと。混ぜた(耳)は項数2なのに項が1つしかないから文法ミスになったわけね」
エーリル
「OK、わかってきた。
これで論理式の準備はできたの?」
さトぅー
「命題論理の命題変数は覚えてる?
φとかψで使ってた文字」
エーリル
「この目に焼き付いてる」
さトぅー
「命題変数が命題論理の論理式の、限界まで分けた一番小さな文章だったのわかる?」
エーリル
「あー、言われてみればそうかも」
さトぅー
「今から一階述語論理で命題変数のようなものを定義する」
■原子的論理式の定義
nを1以上の自然数(1,...)とする。
Rが項数nの関係記号でt_1,...,t_nが項のとき、
R(t_1,...,t_n)を原子論理式と定義する。
さトぅー
「さっきの例に関係記号を加えて例を作ってみて」
エーリル
「さっきと同じ要領でできそう」
■例
耳,鼻:定数記号
y_1:変数記号
長い:項数1の関数記号
混ぜた:項数2の関数記号
走った:項数2の関係記号
・鼻,混ぜた(y_1,長い(耳))は項で、走ったは項数2の関係記号だから、
走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は原子論理式。
・走った(鼻)は原子的論理式ではない。
エーリル
「なんか、凄い光景の文章になった」
さトぅー
「えーっと、とりあえず文章ができたってことでいい?」
エーリル
「バッチリできたと思います」
さトぅー
「準備ができたから、いよいよ論理式を定義するわ」
エーリル
「待ってました」
■論理式Fmlの定義
(1) φが原子論理式 ならば φはFml
(2) φとψがFml ならば (φ⇒ψ)はFml
(3) φがFml ならば (¬φ)はFml
(4) φがFmlでxが変数記号 ならば (∀x φ)はFml
(5) (1),(2),(3),(4)以外はFmlではない。
エーリル
「原子的論理式を命題変数みたいなものと思えば(3)までは命題論理と一緒か。
(4)の∀だけ様子が違う」
さトぅー
「(∀xφ)は『すべてのxについてφ』って読めばいい。
命題論理では項が使えないから変数も使えない。
対して一階述語論理では、変数が使えるから『すべて』が使えるの」
エーリル
「文法が違うと定義できるできないがあるのか。
言われるまで気づかなかった」
さトぅー
「さっきの例で何か論理式を作ってみる?」
エーリル
「これは∀一択でしょ」
■例
耳,鼻:定数記号
y_1:変数記号
長い:項数1の関数記号
混ぜた:項数2の関数記号
走った:項数2の関係記号
・走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は原子論理式だから、
走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は論理式。
・走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳)))は論理式でy_1は変数記号だから、
(∀y_1 走った(鼻,混ぜた(y_1,長い(耳))))は論理式。
エーリル
「これを自然言語で考えたら『すべてのなにかを長い耳と混ぜた場所で鼻が走った』みたいな強い主張になる」
さトぅー
「異様な光景すぎて考えたくないんだけど」