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口から草

○健全な研究室




大学生の天々城(てんてんじょう)が光を受けてヤバみを感じた。

研究室の数学書や安物のパソコンも光を受けたから間違いない。

耳の長い女性が床で四つん這いになってたのには、男の性かどきりとした。

だが天々城は数学徒なので、女性が草を食べていてもどうということはない。



天々城

「オマエ、口から草生やしてどうした」


エーリル

「****!?」


天々城

「え?」


エーリル

「え?」


天々城

「今のは俺の耳が間に合わなかっただけ。

 二回目は素晴らしい発音で答えてくれる」


エーリル

「*************!」


天々城

「ごめん。ハードル上げすぎた」



エーリル

(こいつの言葉は魔法で分かるのに、発音できなくて詰んだ。

 もうちょっと魔力があれば会話もできるのに。

 ここは何とかしてお腹すいてる風な感じを装うしかない)お腹を押える



天々城

「お腹にパワーをタメてるんですか?

 次はもっと眩い光で研究室を照らしてくれるんですか?」


エーリル

「ん?」


天々城

「違いましたか。クッキーあげるので光ってください。

 俺のじゃないからあとは知らない」クッキー渡す


エーリル

「ん?」


エーリル

(食べ物に違いないけど、毒が入ってたらヤバイ。

 でもコレ絶対おいしい予感がするのよね。

 見た目からもうね、強い)



耳の長い女性はクッキーを手に取ると、まず鼻を近づけた。

オレンジは分かる。それ以外は全く知識にないが、食べなければならないという使命感にかられた。

意を決して口にそれを放り込んだ時、食という概念を通り越して体に魔力が満ちるのを感じた。



エーリル

「――――味の暴力」


天々城

「ほらー、やっぱり喋れる。反応を見た時点で分かった」


エーリル

「これ、全部食べていい?」


天々城

「そこにあるんだから、食べることはできる」


エーリル

「頂きます。ありがたく頂きます」


天々城

「頂いているところ申し訳ないけど、何しに来たの?

 数値計算なら他に任せた方がいい」


エーリル

「はい?」


天々城

「映画研究会ですらないからな

 耳の特殊メイクは凄いと思うよ、うん」


エーリル

「耳は元々なんだけど、貴方の耳なんか丸いじゃない」


天々城

「世界の大多数の人は耳が丸いし、普段は特殊メイクをしない」


エーリル

「じゃあ確かめる?」


天々城

「ほー。やる気だな」



エーリルは丸い耳を握り、天々城は尖った耳を握る。

何を思ったか、両者は一切加減をせずに渾身の力で引っ張りあった。




エーリル・天々城

「う゛ぁあああああああああああああああああああああああああああああ!?」




二人揃って床に伏した。

耳を押さえて悶え苦しんでいる。



エーリル

「耳がァアッ! ヤバい耳がァア耳がヤバいィッ!」


天々城

「絶対軟骨が逝ったって。

 痛みの電気で神経が逝ったって」


エーリル

「お互いに真の耳を持ってるってことでいいですか?! いいですよね!?」


天々城

「もう耳とかどうでもいいので、ここに来た経緯を教えてください」




~アメーバでも分かる! ここまでのエーリルさん~


食べ物がない

→草を食べればいいんじゃね?

→光になる

→耳が痛い


エーリル

「こんな感じで」


天々城

「因果律がバグってる」





両者復帰。

回転椅子に腰掛け、エーリルはクッキーをもぐもぐしていた。



エーリル

「私もよく分からないけど、変な所に来たのは分かる」


天々城

「普通の研究室だよ。

仮に変だとしても、一番変なのはオマエだよ」


エーリル

「研究って風魔法とか」


天々城

「数学な」


エーリル

「新魔法!? 新魔法ですかッ!」


天々城

()回も新魔法を唱えなくていいよ」



エーリル

「――――ニカイってどういう意味?」



天々城

「え?」


エーリル

「え?」


天々城

「2回ってアレだよ。建物の二階じゃない方の」


エーリル

「なるほど。分からない」


天々城

「ちょっと待て。

 まさかとは思うけど、今残ってるクッキーの数は分かるか?」


エーリル

「これ?」


天々城

「それな。クッキーな」


エーリル

「だいぶ食べたけど、まだ残ってる(・・・・)


天々城

「3個とか4個とかの言い方で」


エーリル

「なるほど。分からない」






天々城

「オマエ。もしかして、数が分からない?」






エーリル

「少なくなったのは分かるよ。食べたし」


天々城

「分からないのは分かった。

 特別に古代兵器を伝授してやるから手を広げてみな」


エーリル

「なんか魅力的な響き」


天々城

「俺がクッキーを渡す。

 クッキーを受け取ったら指を曲げるんだ。

 俺もやるから真似すればいい、オーケー?」


エーリル

「オーケー」




・クッキー → 親指を曲げる

・クッキー → さらに人差し指を曲げる

・クッキー → さらに中指を曲げる

・クッキー → さらに薬指を曲げる




エーリル

「こ、これは……っ!」


天々城

「『指を曲げた数』と『クッキーの数』が一致しているだろ?」


エーリル

「この古代兵器、使っていい? 丁度今欲しかったところなの」


天々城

「いいけど、その数え方じゃ10くらいで……」


エーリル

「やった! これでご飯が食べられる!

 誰だか知らないけどありがとう! ありがとう!」


天々城

「待て、まだ話は終わってない」


\カッ/

◆人物紹介

天々城:男数学徒 大学の一回生

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