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エルフに数学を装備するだけ  作者: めいぜんおーえす
二章:ことばを作るよー
18/51

⇒と証明と定理

追加したい:証明図

○健全な研究室


さトぅー

「次はG0で必ず使える、論理式と推論規則よ」


エーリル

「必ず使えるってどういうこと? 公理と違うの?」


さトぅー

「公理は自分で勝手に決めていいルール。

 でも今からいうルールは絶対に変えたらダメ。

 論理的(logical)公理( axiom)っていうんだけど、これが変わると言語も変わる」


エーリル

「言語設定なら仕方ない」


さトぅー

「長くなるから論理式にAx1,Ax2,Ax3って名前をつける」




■G0で必ず使える論理式(論理的公理)


Ax1 (φ⇒(ψ⇒φ))

Ax2 ((φ⇒(ψ⇒ρ))⇒((φ⇒ψ)⇒(φ⇒ρ)))

Ax3 (((¬ψ)⇒(¬φ))⇒(φ⇒ψ))



さトぅー

「しつこく言うけど、Ax1,Ax2,Ax3は固定。普通の公理は論理的公理と別に設定する。

 それと文の変形ができるような推論規則も必要ね」




■推論規則:⇒el


φ (φ⇒ψ)

--------[⇒el]

 ψ




天々城

「elは(elimin)(ation)の略だナ」


エーリル

「φと(φ⇒ψ)からψって文に変形できるっていうのが⇒elの定義?」


天々城

「大体そういうことだナ。

 あとは仮定や結論を定義してないといけない」



■仮定と結論の定義

φ_1,...,φ_n,ψを論理式とする。


φ_1 .... φ_n

--------------[R]

ψ


となる推論規則Rがあるとき、ψはφ_1,...,φ_nを仮定とする結論と定義する。

論理的公理と公理は、仮定かつ結論と定義する。



天々城

「この変形する元の論理式を『仮定』、

 変形された論理式を『結論』と定義するわけだ。

 しかも推論規則を組み合わせても推論規則になる」


さトぅー

「論理式を論理式にうつす写像なんだけど、メタな言語がわかってないと無理か」


天々城

「どこかの階層で理解してもらうしかない」


エーリル

「えっと……、えっと?」


天々城

「保留で」


エーリル

「保留で」


さトぅー

「このAx1,Ax2,Ax3,⇒elの組で命題論理G0が定義された。

 言い方を変えれば、この組を変えれば言語も変わるってわけね」


エーリル

「命題論理という兵器を手に入れた」


天々城

「圧倒的英知の力」


エーリル

「で、どうしゃべるの?」


さトぅー

「じゃあ証明を定義しようか」



証明(proof)の定義

φ_1,……,φ_Nは論理式の「有限」列で、

(1) Nが1のとき、φ_1が論理的公理または公理ならφ_1は証明。

(2) Nがn+1のとき、φ_1,……,φ_nが証明で、φ_n+1が論理的公理または公理またはφ_1,……,φ_nの中からいくつかを仮定とする推論規則の結論なら証明。




さトぅー

「あと定理も定義する」




定理(theorem)|-の定義

Tを公理とする。

証明φ_1,……,φが存在するとき、T |- φ(φはTの定理)と定義する。




天々城

「命題論理以外の言語の証明と定理の定義も大体一緒だナ。

 稀に例外もあるが」


エーリル

「よくわからない。例がほしい」


さトぅー

「じゃあ証明してみよう」




■thm0.0

{} |- (φ⇒φ)


-----------------

さトぅー

「まず、自分が示したい定理を書く」


エーリル

「thm0.0と{}はなに?」


さトぅー

「thm0.0は定理に名前をつけただけ。

 このあと何回か使うつもりだから、全部書いてたら面倒くさいでしょ」


エーリル

「たしかに」


さトぅー

「{}は公理がなにもないってこと。

 あるなら{φ}とか{(¬φ),(φ⇒ψ)}とか書く」


エーリル

「論理的公理は書かないの?」


さトぅー

「今、命題論理の言語で証明をしようとしてるじゃない?

 言語で固定しっぱなしだから省略するの」


エーリル

「なるほど、わかった」

----------------


proof


1 (φ⇒((φ⇒φ)⇒φ)) [Ax1]


---------------

エーリル

「1ってなに?」


さトぅー

「証明を定義したときに、φ_1って出てきたよね」


エーリル

「あっ、論理式の列の1番目ってこと?」


さトぅー

「そうそう。行数ともいう」


エーリル

「それで1番目がAx1……。

 あれ、でもこれAx1と違う論理式じゃ……」


さトぅー

「そっか。言い忘れてた。

 Ax1,Ax2,Ax3,⇒elはすべての論理式で使っていいの。

 だから、Ax1の論理式(φ⇒(ψ⇒φ))に出てくるψに(φ⇒φ)を代入したら1行目になってるでしょ?」


エーリル

「あー、ほんとだ」


さトぅー

「1行目は論理的公理Ax1だから証明の定義から証明になってる」


エーリル

「やりたいことがわかってきた」

------------------------



2 ((φ⇒((φ⇒φ)⇒φ))⇒((φ⇒(φ⇒φ))⇒(φ⇒φ))) [Ax2]

3 ((φ⇒(φ⇒φ))⇒(φ⇒φ)) [⇒el 1,2]


------------------------

エーリル

「[⇒el 1,2]ってなに?」


さトぅー

「1行目と2行目を仮定にして推論規則⇒elを使った。

 その結論が3行目ってこと。

 だから1行目から3行目も証明になってる」


エーリル

「たぶんそうだと思ってた」

-----------------------


4 (φ⇒(φ⇒φ)) [Ax1]

5 (φ⇒φ) [⇒el 4,3]


さトぅー

「これで証明終了」


天々城

「倒した」


エーリル

「倒した」


天々城

「今から{} |- (φ⇒φ)を倒す。

 proof、戦歴。

 そして倒した」


さトぅー

「なに教えてるのよ」


エーリル

「んー。考えた足跡が証明で、考えていきついた先が定理って感じる」


天々城

「実際、それしかやってないからナ。

 格好つけて証明とか定理とか言ってるだけ」


エーリル

「わかる」


さトぅー

「さっき倒した倒した言ってなかった? ねえ?」

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