表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼少年の話  作者: 美橘
7/17

ガランの思惑

クシャナ村の警備隊長ガランは高慢で職務怠慢だと、周りの人は口々に言っていた。

だのに警備隊長を続けていられるのは、家柄とその権力のおかげだ。

そしてガランは体の弱い、美しくて優しいサラを気に入っている。

自分の悪い噂や評判を聞いても、分け隔てなく接する少女。

優しくされたのは、幼い頃に死んだ母親以外初めてだった。

あの笑顔が欲しいと思った。

自分なら、手に入れられると思っていた。

だがサラの隣にはルカがいた。

ルカがサラに気があることなど、明々白々だ。

あのガキさえいなければ…。


ガランの胸は躍っていた。


「お前、狼の居場所を知っているのか!?教えろ!どこにいる!!」


求めていた答えが見つかった喜びと、復讐への怒りとでルカの肩を掴む手に力が入る。

痛がるルカをよそに、男は激しく揺さぶる。


「あああわわわ…!!は、ははなぁせえぇぇ!!」


なんとかしようともがいてみるが、とても解放してくれそうにない。

困り果てるルカはいよいよ気持ち悪くなってきた。


「何をしておる!やめんか!」


少しかすれた、けれどよく響く叫び声が男の動きを止めた。

集まっていた村人達が表情を明るくする。

一斉に視線を集めたのはドクだった。


「村長…」


ガランはドクを見て内心舌打ちをする。

いいところだったのに邪魔が入った…。


「ドクじいちゃん!」


ルカはやっと解放され、ドクが救世主の如く輝いて見えた。


「わしが村をちょっと離れとる間にこんな騒ぎが起きるとは…。ガラン、おぬしにも責任を問わねばならんようだ。そしてそこの2人、わしの家に来なさい」


有無を言わさぬ気迫でそれだけ言うと、ドクは来た道を戻り始めた。

男もすっかり意気消沈し、ばつが悪そうにドクの後に続いた。

ルカも2人を追いかけようとするが立ち止まり、ガランを見上げる。


「俺は、悪いなんて思ってないからな」


それだけ言って立ち去ろうとすると、ガランはルカの腕を力強く掴み、耳元で言った。


「今に分かる。お前の犯した罪の重さを。その身をもって…な」


ガランの言葉にルカは一瞬ぞくっとしたが、腕を振り解いて走った。

なぜだろう。

ものすごくサラに会いたい。

サラといた場所に戻ったが姿はなく、近くの人に聞いたらサロメと家に帰ったらしい。

ルカはしぶしぶドクの家に向かった。


ガランは1人隊舎に戻り、申請書を書いていた。

ここに国というものはなく、それぞれの部族の村を統括している役所があるだけだ。

ガランはその所轄で働いていることになる。

父親が所長を勤めているおかげだが。

申請書には「処刑」の文字が書かれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ