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武勇伝  作者: 生時
1/3

前編

作者からのメッセージ




 この物語は、ただの格闘小説ではありません。僕自身の自伝でもあります。

それは、僕自身が、クローン病という病気を抱えていて、その病気を知ってもらいたいからです。だけど僕自身、闘病記が書けるような生き方をしていません。

そこで、作り話の中に少しだけ真実を書いてみました。(クローン患者の友達も、その方がいいと言ってくれましたし・・・)

だから、自伝といっても、ほとんどが作り話です。

だが、第九章は、僕の実話です。

また、何故格闘モノなのかというと、武道が好きで、病気をしてからもやっていたのですが、やはり格闘技は病気を抱えながらやるのは難しい・・・だがら、格闘モノの物語を書く事にしました。物語の中でなら、格闘技を続けられるし、それに、この物語を書くため、様々な格闘関係の本(漫画も含む)を読みました。そういった意味では、武道をやり続ける事が出来ました。

けど、この物語を読んだら、僕自身いかに弱くて、愚か者かが分かります。

でも、この物語でクローン病や、あとイジメの事、そして生きたくても生きられない人もいる・・・だから自殺をしてほしくないと言う事を伝えるができたら、落ちこぼれの僕でも生きていて良かったと思います。

僕自身、本当に弱い人間だから、何度も死にたいと思ったか分かりません。

この物語を書く前も、世の中がイヤになりました。

だが、そんな時、一冊の闘病記を読んで、生きることの大切さを思い出しました。

それに、病院で知りあって、せっかく友達になったのに亡くなってしまった友たちのためにも、生きなければいけないと思いました。

そして、病気は治らなくても、新たに生まれ変わって、今までとは違う生き方をしていきたいと思います。










序章 天神流


 


 忍術━日本の古武術の一つで、その歴史は古く、その術は修験道の山伏によって、より高度なものに高められていった。彼らの呼び名は一般的には忍者、忍び、忍術使いとよばれているが、昔は乱破らっぱ透破すっぱ、密偵、間諜かんちょう間者、諜者、三つ物、隠密などと呼ばれていた。

 また、聖徳太子は情報活動する者達を志能便と名づけた。

 

 忍びが主に活躍したのは、戦国〜江戸時代だ。

また、あの魔王と呼ばれた天下人、織田 信長が、一五八一年(天正9年)大軍を率いて伊賀に攻め込んだ。

「天正伊賀の乱」である。

多くの伊賀者は惨殺された・・・

その生き残りで、後に天神斎と名乗る忍びが編み出したのが天神流である。

 

そして、この平成の世にもこの技を使う男がいた。彼は強くなるために修羅と名乗り喧嘩に明け暮れていた。そして月日が流れた・・・

 

















第一章 喧嘩屋修羅参上

 



「また遅刻だ〜」

そう叫びながら学校に向かう少年がいた。

彼の名は神威 龍一である。

女の子のような顔・・・体つきも華奢で、まさに、かわいらしい女の子といった感じだ。

彼の父は伝説の格闘王と呼ばれるほどの格闘家であったが、彼が生まれたと同時に謎の引退をしている。


龍一は私立桜木高校に通う一年生である。

彼がぎりぎり学校に着くと、後ろから絞め技をしてこようとしてきた少年がいた。

彼の名前は嘉納 四郎・・・髪を茶色に染め、柔道の経験がある少しヤンチャな少年だ。

「また龍ちゃんいじめてる。もうすぐ先生が来るよ」

そう言ってきたのは、新戦会空手の館長後藤 勇の娘、後藤 舞である。

その隣には、彼女の幼なじみでもあり、同門でもある沖田 一という少年がいた。

二人共空手初段の腕前だ。


「やっと授業が終わった!さて帰るか・・・」

と、四郎が言った。


四人で帰宅途中同じ高校に通う男子生徒が二人、三人のヤンキーに絡まれていた。

「あんた達なにしてんのよ」

舞がヤンキー達にそう怒鳴った!

「んだ〜てめえら〜は!?」

ヤンキーの一人が言った。

「おまえら桜高のもんだろう!?」

そう言うと男子生徒の顔を殴った!

ついに舞は切れ、彼女のハイキックが炸裂した!

「俺達に喧嘩を売るってのか?俺達のバックには修羅さんがいるんだぜ!」

四郎はやばいと思った・・・一と龍一も舞を止めに入った。

「明日から桜校狩りだ!」

そう言って三人は去っていった・・・    

四郎がおびえながら、

「ど、どうする相手は修羅だぜ!あいつらマジだぜ!?」     

男子生徒二人も怯えていた。

「なにビビッてるのよ。あんた達男でしょう。修羅だかなんだか知らないけど、あんなの口だけよ。だから不良って嫌いなのよ」

舞は強気でいた。

「お前は、修羅の強さと恐ろしさを知らないんだ。あの男と互角にやれるのは大河 虎次郎くらい」

四郎はまだ怯えていた。


 そして次の日の下校時間、帰宅途中四人の前に昨日のヤンキー達が現れた!     「こいつらですよ。修羅さん」

その男はガタイもよく、いかにも強そうな男だ。他にも強そうなヤンキーが五人、合計九人だ!

 「他の生徒は関係ないわ。相手は私一人よ」

さすがの舞も少し怯えた表情であった。           

「舞ちゃん僕も相手をするよ」

一も震えながら構えた。

四郎も覚悟を決め戦う気だ。

その時、龍一が笑顔で、 

「すいません。お願いですから僕の友達に手を出さないで下さい」

と頭まで下げた。 

「駄目だ!昨日言ったよな。今日から桜校狩りが始まるって・・・」

「まあ、待て」

「修羅さん!?」

「そこの女が俺の女になるなら考えてもいいぜ!?」

舞は迷ったが

「・・・そ、それで、皆がたすかるなら・・・いいわ・・」                    

「駄目だよ。舞ちゃん、舞ちゃんには一君がいるじゃない」

実は舞と一は付き合っていたのだ。

「んじゃ〜やるか!?修羅の強さを見せてやる」

すると龍一が、

「あんたが修羅の名を使おうがかまわない。だが友達に手を出す事は許さん!」

龍一の表情が変わった・・・

修羅は龍一に向かって、

「上等だ!てめえからやってやる!」

すると

「・・・てめえら〜、本物の修羅の強さと恐ろしさ、忘れた分けじゃあるまいな!?」

「龍ちゃん!?」

「お、おいあの目あの口調・・・あいつ本物の修羅じゃねえか!?直樹さん、だから修羅の名を、使うのはやめたほうがいいと言ったじゃないですか!?」

そう・・龍一こそが本物の修羅であった。

「どうする?やるか?」

「と、とんでもありません」

その時、後ろから一人の男の声が・・・

「やっと見付けたぜ!龍一」

その男こそ大河 虎次郎であった。

黒髪を逆立て、鋭い目、手には木刀を・・・ 

 「虎次郎、久しぶりだな。」

 「あ、あ、あいつが・・・た、た、大河・・・こ、こ、虎次郎・・・」

四郎はかなり震えていた。

だが、彼が震えるのも無理はない・・・目の前には、修羅と虎次郎・・二人の化け物がいるのだから・・・

「今日こそケリを着けてやるぜ!龍一!」

「上等だ!」

「あれが龍ちゃん!?あのやさしくておとなしい・・・まるで別人」

最初に攻撃をしかけたのは、虎次郎だ!龍一の顔面にパンチが・・・だが龍一は虎次郎の頭上より高く跳び、一回転してかかと落とし・・・天誅と呼ばれる技だ。だが虎次郎もかわした!

「さすがだなぁ。虎次郎・・天誅をかわすとわな」

龍一はすかさず、後方宙返りと同時に顎に蹴りを放つが、これも虎次郎はかわす。だが龍一は体をひねらせ、こめかみに再び蹴りを放つさすがに虎次郎もかわせなかった。

「天神流忍術双龍!」

今度は虎次郎が木刀で攻撃・・・龍一の頭に虎次郎の一撃が決まった!

舞達は、二人のタイマンを止めたいがどうする事もできなかった。

「龍一君、さすが格闘王の息子だ。でも戦い方が、格闘王とはまるで違う!?舞ちゃんもビデオ見たから分かるでしょう!?」

「そうねぇ。一ちゃん、格闘王が編み出した神威流とは全然違う」

神威流とは格闘王が編み出した総合武術である。

少しずつ虎次郎が押し始めた。

「龍ちゃん、もうやめて〜」

だが舞の声は龍一にはすでに聞こえない・・・

「どうした龍一、高校に入ってふ抜けたか!?お前の強さはこんなもんじゃないはずだ!」

「勝負はこれからだ!」

龍一は虎次郎のパンチを受け、関節を決め、投げた後、虎次郎の喉に肘鉄、だが虎次郎は紙一重でかわした。

「虎次郎、化け物だな!?天神流忍術雷鳴をもかわすとはよ。」

「どうすれば、龍ちゃん達を止められるのよ!?」

龍一が何かを投げた。それは手裏剣の一種、飛苦無である。


一般的に手裏剣は忍者の武器と思われがちだが、手裏剣術も古武術の一つである。

 また、この苦無は、元々職人の道具で、所持していても怪しまれないため、江戸時代の頃は、この飛苦無がよく使われていた。投げ方も、直打法と反転打法がある。直打法は、手裏剣を手中に持つ時、剣先を指先の方に向けておき、剣先を的に向けて進行させる打法である。反転打法は、手裏剣を手中に持った時、剣先を手首の方向に向けて、手と的の空間で、剣を半回転させて、剣が的に達した時、剣先が的に命中するように打つ打法である。


虎次郎は飛苦無を、木刀で受けとめた!

「あいつらマジで殺し合う気か!?」

すると舞達の後ろから女性の声が・・・

「まったく、高校に入って少しは真面目になったと思っていたのに・・・」

後ろを振り返ると、ものすごい美人がいた。

長い髪を茶色に染めている謎の女性・・・

舞が女性に話かけた。

「あの龍一君の事知っているんですか!?」

「知っているわよ。何しろ私があいつに天神流を教えたんだから・・・」

彼女の名は月形 瑠奈(26)天神流十七代目!普段は喫茶店を経営しているが、裏の世界ではアルテミスと呼ばれるプロのスイーパーだ!             

「お願いです。二人を止めて下さい!」

舞は泣きながら瑠奈にお願いした。

「最近あいつは明るくなった・・・出会った頃はいじめられっ子で中学の時は喧嘩ばかりしてたあいつが・・・こんな素敵な友達がいたからなんだねぇ」

そう言うと瑠奈は龍一の所に歩き始めた・・・   

「そろそろ終わりにしようぜぇ!虎次郎・・・臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前、天神流奥義龍神!」

「リュウ!実戦でまだ奥義は使うなと言ったはずだ!それに大切な友達を泣かすな!」

「ルナさん・・・!す、すいません」

「チッ、またあの女か・・・龍一、必ずいつかケリは着けるからな。女その後はお前だ!」虎次郎はそう言って去っていった。

「私に、ちょっかい出して、タダですむと思っているのかしら・・・帰るよ。リュウ」

「はい、ルナさん」

そして、二人は帰っていった・・・

                                          

「昨日はすごかったな龍一、まさかお前が修羅だったなんてよ。今までの事、怒っている?」 

四郎は必死でいじめた事を謝っていた。

「気にしてないよ。それに僕の方こそ、みんなに、黙っててごめん。皆が良くしてくれるから言い出せなくって僕小四のときまで本当にいじめられていたんだ。伝説の格闘王の子供のくせに弱いからって、中学生までまじって毎日殴られたり蹴られたり、その時に助けてもらったのがルナさんなんだ。そして泣きながらお願いして弟子にしてもらったんだ。修行は厳しかったがルナさんがいたから・・・」

龍一の顔が赤くなっていた・・・

「龍ちゃん瑠奈さんの事好きなんでしょ!?」

舞が龍一に問いかけた。

「やっぱ分かった?」

龍一は照れながら答えた。

「でもあんな美人なんだから彼氏いるだろう?」

四郎がそう言った。

「今はいないらしい・・・でもルナさんの心の中にはある人が・・・あっ、そうそう話は もどるけど喧嘩屋やっていたのは強くなるためには実戦が必要だと思ったから、でも町の悪餓鬼の中では強くても格闘家としは全然・・・武道家じゃないけど、これじゃルナさんにいつまでたっても、追いつけない。父さんにもね・・・父さん表じゃ不敗だけど引退前にある人と戦って負けてるんだ・・・」 

「うそ!あの伝説の格闘王が!?」

三人同時に同じ事を言った。

「会った事ないけど父さんを倒したその人の名は天神流十六代目月形 良昭大先生。瑠奈さんのお父さんだよ!おそらく父さんは負けたから引退したんだと思う」                                 

「会った事ないって、瑠奈さんのお父さん今、何してるの?」

と舞が聞いてきた。

「・・・今はもういない・・殺されたんだ・・・天神流の十七代目後継者になるはずだった人で瑠奈さんの恋人だった武田 武さんも戦死した!相手は瑠奈さんや武さんとは兄弟弟子の水谷 凍矢・・・瑠奈さんの話では凍矢は重症を負ったが生きてるらしい・・・」

しばらくの間沈黙が続いた・・・

そして、

「そろそろ帰ろうぜ」

四郎は席を立って帰る準備をした・・・

                  

その頃違う場所で一人の少年が五人のヤンキー達に囲まれていた。

「てめえ〜この前はよくもやってくれたな」

少年は顔色を一つも変える事無く

「悪いけどこの中に僕を本気にさせてくれる人はいなかった・・・僕はいそがしいんだ。それじゃ」

そう言って、去ろうとした・・

「待て、コラー」

「しょうがないな〜」

わずか数分でヤンキー達は血まみれになっていた。

彼の名は小林 秀一名門聖蘭学園二年生。頭も良くルックスも良く、また少林寺拳法の達人で、文武両道の少年だ!


少林寺拳法・・・少林寺で達磨大師が授けたという心身鍛錬の法を起源とする拳法。

日本では宗道臣の創始した少林寺拳法が行われている。

また少林寺は、唐手やムエタイ、それにテコンドーなどの全身となっている。

  

龍一達が帰宅途中、向こうから美少女が歩いて来た。

「舞じゃない?それに一君も・・・久しぶりねぇ。」

「恵!?・・・ホント久しぶりねぇ。」

彼女は舞と一の幼馴染で、聖蘭学園に通う相川 恵であった。

「相変わらず舞と一君仲がいいね。」

「恵は彼氏いないの?」

 「・・・好きな先輩はいる。でも頭もいいし、かっこいいから私なんか相手にされないと思うの」 

 「何言ってるの、恵も頭はいいし、すごくかわいいから、うらやましよ。」

舞は彼女を励ました。

 

しばらくすると、向かうから秀一がやって来た。 

恵の顔が赤くなった・・・どうやら彼女の好きな人は秀一みたいだ。

 「恵もしかして彼が・・・」

「・・・うん」

「話しかけたら」

恵は秀一に話かけようと彼に近づいた。

「僕になんか用かい?悪いけどいそがしいんだ。」 

 「ちょっと、あんた!」

舞が怒鳴った!

 「おや、君かわいいね。名はなんて言うの?」

どうやら秀一は恵より舞の方を気に入ったみたいだ。

 「ふざけないで!」

舞がまた怒鳴った!

やばいと思い、龍一が止めに入った。

その時、秀一が龍一に回し蹴りを・・・龍一は紙一重でかわした・・・

 「なにをするんですか?」

と龍一が言った。

 「見付けたぜ!あの恐怖はわすれてないから・・・」

秀一が龍一にそう言った。

 「僕はあなたと会うのは初めてですよ!?」 

 「二年くらい前かな・・・金髪の少年が五人いやもっといたかな!?一瞬で五人以上の不良達を倒したのは・・あの時初めて恐怖と言うものを感じた・・今でもその恐怖が頭から放れない・・その恐怖を忘れるためにはその男を倒すしかないと思った・・・髪を黒くしても僕には分かる君があの時の金髪の少年喧嘩屋修羅だろ!?私怨はないが僕は君を倒す!」  

「先輩やめて下さい!」

恵は必死で止めようとした!

舞達も止めようと説得した。

もし龍一がこの前みたいになったら止める事が出来るのは瑠奈だけ・・しかし瑠奈の経営している喫茶店の場所が分からない・・・

 「でも君には感謝している。君を倒したい思いで修行に励んだ。君に会うまで僕は天狗になっていた・・・僕の名は小林 秀一!君の本当の名を聞いておこう・・・」

 「僕の名前は神威 龍一」

「神威?もしかしたらあの格闘王の?」

「格闘王は僕の父です。」

「どおりで強いはずだ。」

「父さんは父さん!僕は僕だよ!」

秀一は構えた。

「その構え少林寺拳法か!?でもあなたと喧嘩する気はないんです。」

と龍一は言ったが・・・

「君も武道に心得があるんだろう!?ならこれは武道家としての異種格闘技戦だよ」

そう言うと秀一はジャンプして、また回し蹴りを・・龍一もまたかわすが、止まらない龍一の頬をかすめた・・・

「旋風脚かい。」

龍一の表情が変わった・・・

龍一は高く跳び、一回転・・この技は、天神流天誅!

秀一の頭に龍一のかかと落としが・・・

「これだよ・・戦いとはこうでなくては・・・」

秀一はニヤリと笑った。

「柔術!?いや違うか・・」

「天神流忍術だ!」

そう言うと飛苦無を投げた。

秀一は避けたが、その方向に龍一の回し蹴りが炸裂!

だが今度は、秀一の正拳突きが、龍一の顔面に炸裂!

だが後方中返りをして、顎に蹴りをさらに体をひねらせこめかみに蹴りを・・

「天神流双龍!」

さすがの秀一もかなり効いたようだ。

 「あんたも化け物だな!?双龍をまともに喰らって立ち上がるか。」

もうこうなったら、瑠奈以外止められない。

秀一がまた正券突きを・・・だが龍一はかわして、なんと秀一の頭の上で、片手で逆立ちした!

「あいつら雑技団か!?」

と、四郎が言った。

そして龍一は秀一の髪をつかみそのまま膝で秀一の顔面に攻撃・・・だが秀一は両腕でガードをした!二人は後方宙返りをして、距離を置いた。


その頃、さっき秀一にやられたヤンキー達が、龍一達の近くまで来ていた。

 「あ、あの野郎じゃねえかぁ!?しかも相手は修羅だ!いや、待てよ。ここでしばらく様子を見て、やつらがくたばりかかったところを、俺達がとどめをさす。そうすれば俺達は修羅まで倒して有名人だ!」


ものすごい攻防戦が繰り広げられていた。

秀一も、さすが少林寺拳法の使い手だけある。二人の実力は互角・・・

これで、同年代で龍一をここまで追い詰められるのは、虎次郎と秀一となった。

二人はすでに血だらけとなっている。

その時!

「今だー!二人をやれ〜」

隠れていたヤンキー達が襲いかかってきた!

「センパ〜イ」

秀一はすでに動けない・・秀一の頭に木刀が・・・

バキッ!

鈍い音が響き、血が・・・

なんと恵が秀一の身代わりになったのだ。

「なんで僕をかばったんだ!?」

「先輩の事が・・ハアハア・・好きだからです・・・」   

龍一が完全に切れた!

「てめえら〜、そんなに死にたいのか!?」

龍一は五人のヤンキー達を血祭りにした。


恵は、救急車で病院に運ばれた・・恵の怪我は、運良くそれほどたいした事がなかった。

「惚れたのは僕の方かも・・」

と、秀一がつぶやいた・・・

舞や龍一達は喜んだ。

寝たふりをしていた恵は涙が止まらなかった・・・























第二章 摩利支天 




龍一と秀一のタイマンから一週間が経った。いつもの四人は瑠奈の喫茶店 「LUNA」にやって来た。

龍一以外の三人は初めてだった。

「すごくオシャレな店ですね〜」

 舞はすごくはしゃいでいた。 

「ありがとう・・いつでも来てね。」

「しかし秀一さんと、恵ちゃんこれで決まりだね!?」

と一が言うと、四郎が龍一に

「いつコクるんだ?」

と、からかってきた。

「なんだ、リュウ好きな人がいるのか?」

瑠奈に言われると、龍一は心の中で、ルナさんが好きです!いや愛しています!とっ 言いたいと思った・・・

 「リュウ、お前は、顔は悪くないし運動神経もいい・・だがその秀一って子と違って頭の方が・・・舞ちゃんこいつにいい子紹介してあげてよ。」

「は、はあ〜でも皆彼氏がいるみたいなんです・・・」

舞は龍一と瑠奈がうまくいけばいいのにと思った。 

 「ごちそうさまでした。」

舞達は店を出た・・・


  次の日、龍一は遅刻をしたため、トイレ掃除をさせられていた・・・              

四郎は舞と一に

「先に帰ろうぜ。」

と言った。

三人は龍一を置いて先に帰ることにした。


帰宅途中、秀一と恵に会った。

 「恵、怪我の方はだいぶ良くなったみたいね。」

 「うん、もう大丈夫よ。」

その時、五人のゾッキー達が現れた!

彼らは摩利支天と言う暴走族のメンバーだ!

 「昨日はこいつらが世話になったみたいだな!?」

ゾッキーの中の一人が言った。

彼は摩利支天の七代目高橋 雅史(18)だ!

 「秀一さん、また喧嘩したんですか?」

と、一が聞いた。

 「昨日恵に、ちょっかいをだしてたんでね・・・でもあそこまでボコボコにしてないけどね!?」

 「小僧おれは、パンピーでも容赦しねえぜぇ!?」

秀一は構えた・・・そして二人のタイマンが始まった・・・ものすごい激戦だ!

秀一は後方宙返りをし、距離を置いた。だが秀一が膝を付いた・・マサシの攻撃は止まらない・・・

 「やばいぞ!」

四郎は、震えながら言った。

舞が止めようとした。だが、マサシが舞を突き飛ばした。

 「族をなめんなよ!コラー!」  

そして、マサシが秀一にとどめをさしに・・・ 

するととっさに舞は

「私達には龍一君がいる・・・」

と叫んだ!

ゾッキーの一人が

「龍一・・誰それ?」

と言った。

 「てめえらはだまっとれ!おい龍一がいるだと!?・・・上等だよ・・てめえら・・・」

 「龍一君は強いはよ・・・」

 「ああ〜強い・・ちょっと前まで俺もヤツが怖かった・・・」

するとマサシは、ナイフを出し何の躊躇もなく秀一の太ももを刺した!

 「ぐわ〜・・・」

秀一が叫んだ!

 「やつに伝えろ!明日の土曜集会で待つと・・・」

そしてマサシ達は去っていった・・・


 秀一は病院に運ばれた。龍一も舞から連絡を受け駆けつけた!

 「舞ちゃん、秀一さんをやったのは本当にマサシなんだね!?」

すると舞は、

「ごめんなさい。龍ちゃん私を殴って・・・私、龍ちゃんの名前を勝手に・・・だから殴って!」

 「何言ってんだよ。そんな事出来る分けないじゃん・・・それにそんなこと関係ない」

 「そうだ瑠奈さんにたのめば・・・」

と、四郎が言った。  

 「ルナさんは関係ない・・これは修羅と摩利支天の戦いだ・・・」


 龍一は家に帰っていった・・・

 「おかえり、龍一」

 「ただいま、母さん・・・」

 「兄ちゃんお帰り!ねえゲームして遊ぼうよ」

龍一には七つ下の弟がいた。

 「ごめんな、龍之介・・・今日はそんな気分じゃないんだ・・・」           

龍一は部屋にもどると、しまってあった特攻服を取り出した。

 「まさか、またこいつを着るとは思わなかった・・・」


 次の日の夜、龍一は再び金髪に染め「修羅 参上」の文字が入った特攻服を着て、木刀

を持って、家を出た・・途中、龍一の前に一人の男が現れた!

彼の名は西村 和也(20) 摩利支天の六代目の頭をはっていた男だ。

 「龍一、本当に行くつもりか?」

龍一はタバコをくわえ火をつけた。

 「カズヤさん止めても無駄ですよ!?」

 「止めはしない・・もうチームも俺には関係ないし・・・ただ、マサシは強くなった・・・あいつに、七代目を譲ったのはあいつに俺は負けたんだよ・・・それに今、特隊をしてるのはトオルだ!」

特攻隊長をしている岡村 徹(18)は龍一の二つ上で、龍一が、中学時代の時の親友だった男でボクシングの経験もある強者だ!

 「関係ないっスよ・・今の俺は、カズヤさんが頭をはっていたチームを潰そうとしている男です・・・トオルだろうと誰であろうと邪魔するヤツはぶっ殺す!」

そして戦場へと向かっていった・・・


その頃、舞達は瑠奈の所に向かっていた・・・

「瑠奈さん大変です!龍ちゃんが・・・」   

舞達は必死で瑠奈に事情をはなした・・・

 「そう・・秀一君の仇を討ちに・・・あいつを修羅にしてしまったのは私のせい・・・私はあいつの両親に悪い事をしたと思っている。格闘王が引退したのは、私の父に負けたからじゃない・・・本当は自分の妻、つまりリュウの母の事を思って、引退したのよ。自分が試合で傷ついた姿を、これ以上見せたくない・・・だから引退し、技を封印し、リュウに武術を教えなかった・・・だが私は、あいつに技を教えた。あいつの父、格闘王を倒した天神流を・・・最初は、あいつがいじめられていたから、護身術のつもりで教えた・・どうせ、すぐに逃げ出すと思ったし、だがあれからもう6年がたった・・・よく耐えたよ、あいつは・・・あいつの気持ちは分かっている、けど私は裏の世界で生きる女・・・あいつには、もっといい女性が現れるさ・・・さて行ってくるね・・」

 「私達も付いていきます!龍ちゃんは大切な友達なんです・・・」

 「(リュウ、いい友達をもったね・・)」

と、瑠奈は心の中で喜んだ・・・


すでに、修羅対摩利支天の戦いは始まっていた!

 「今宵の月は、我を狂わせる・・・」

龍一はそうつぶやいた・・・すでに十人以上倒したが、相手は五十人以上いる。

 「下がれ〜おまえらでは無理だ!」

 「ト、トオルさん・・」

ついに龍一とトオルのタイマンが始まった・・・

 「トオル何でこんな腐ったチームにまだ入やがる!?」

 「お前とまさかやる事になるとはなぁ・・・お前にとって腐ったチームでも、俺にとっては大切なチームなんだ・・だから特隊としておまえを倒す!」

トオルのストレートパンチが炸裂!

龍一はふっ飛んだ・・・更に、トオルの攻撃が続く・・・一瞬のスキを見て龍一がローキックからハイキック・・・今度はトオルがふっ飛んだ!更にトオルの頭に龍一の木刀が・・・だがトオルはかわした・・・龍一は木刀を投げ捨てた。

 「お前とは、素手で戦いたいからな〜」

すざましい戦いが続いた・・・再びトオルのストレートパンチが・・・龍一はかわし、関節を決め投げた・・そして、トオルの喉に肘鉄・・・これは天神流雷鳴・・だが、龍一はわざと外した・・・

「龍一・・・俺の負けだ・・・」

ついに龍一が勝った。  

「マサシ!俺とタイマンだ〜」

「てめえら〜修羅を殺せ!」

龍一は、再び木刀を持った!

 「邪魔だー!」

次々と摩利支天のメンバーが倒れていく・・・

 「(な、何だ!?早すぎて何が起きているのか分からん・・・)」

龍一の動きは、まさに電光石火・・・

「マ、マサシさん!」

「情けね〜ヤツらだ・・・龍一あんまりいきがるなよ!?」

「マサシ、てめえ〜いつから俺にタメ口利けるようになった!?」

「てめえの方こそ年下のくせに調子にのるなよ!?」

龍一が、木刀でマサシの頭を・・・だがマサシのナイフが龍一の腹に・・・龍一は素早く避けた!マサシのナイフ攻撃が続く・・・だが龍一は全て避け、木刀でマサシの手に攻撃・・・マサシはナイフを落とした。龍一も木刀を投げた・・・   

その時ようやく瑠奈達が現れた。そして・・・

 「臨、兵、闘、者、階、陣、列、在、前、天神流奥義龍神!」

ついに龍一は実戦で奥義を使った。


龍神は水神・・・降りしきる大雨を、避けるのは不可能・・まさに奥義龍神は、降りしきる大雨・・・常識を超えるスピードで相手の急所を確実に攻撃する。あまりの速さで数秒の間、相手を宙に浮かし動きを封じる・・・これが龍神である。

 

「ぐは〜」

マサシは吹っ飛び、そのまま立ち上がる事が出来なくなった・・・     

「秀一さんの太ももを刺したよな〜!?」

そう言うとマサシのナイフを拾って、そして、マサシの胸めがけて・・・だが、その時、瑠奈の投げた石がナイフに直撃・・・

「運が良かったな、今の俺を止めれる人がいて・・・」

瑠奈は、龍一の方に向かっていた・・・そして・・・

 「お前は、ついに私との約束を破って奥義を使った・・・お前は今日から破門だ」

そう言うと、瑠奈は去っていった・・・

誰もがあまりの事で言葉を失った・・・もちろん瑠奈は、龍一の事を思いしたことである。これで自分の事を忘れ、すばらしい女性に出会い、幸せになってくれると思ったからだ・・・


 摩利支天との戦いから二週間が経った。龍一は天神流を破門されたことで、ただ今を生きる事しか頭になかった・・・最強の格闘家になる夢を忘れて・・・龍一が、公園を散歩していたら、真面目そうな高校生カップルを見付けた。

自分には、ああいう青春が今までなかったな〜と思いながら、歩き始めた。

すると、カップルの前に二人組みのヤンキーが現れた。

 「ねえねえ、お姉ちゃんそんなヤツより俺達と遊ぼうぜ〜」

彼氏は震えながら彼女を守ろうとしていた。

 「俺達、君には用はないんだよ。」

その時、龍一が現れた。

 「嫌がってるじゃないですか。」

 「何だ、お前・・・殴られたいのか?」

 「僕を殴って、気が済むのでしたら、いくらでも殴って下さい。」

ヤンキー達は龍一をボコリ始めた・・・するとその時、四郎と一が現れた。四郎が、ヤンキーの一人に背負い投げ・・と同時に一が、もう一人にハイキック・・・

 「二人共ありがとう・・・そういえば舞ちゃんは?」

龍一が聞いた。

 「舞ちゃんは、今日は用事があるみたいで・・・僕達これから秀一さんのお見舞いに行くんだけど、龍一君も行かない?」

と一が聞いてきた。龍一も行くことにした。


 その頃舞は、瑠奈の店にいた。彼女は何とか瑠奈と龍一のよりをもどそうと、考えていた。

 「瑠奈さん、お願いです。龍ちゃんを許してあげて下さい」

舞は瑠奈にお願いした。

 「別に私は、あいつが奥義を使ったから破門したわけじゃないのよ。前にも言ったように私があいつを修羅にしてしまった・・・私があいつの前から消えれば、私の事を忘れ、そして幸せになってくれる・・・そう思ったからよ。」

 「確かに龍ちゃんは最近変わった・・今まで、遅刻はするは、授業中はほとんど居眠りしてました・・・だけど最近は誰よりも早く来て授業も真面目に受けている・・・でも、なんか、今をただ、生きているって感じがするんです。」

 「そう・・でもそれでいいのよ・・・あいつには、私みたいな汚れた人間になってほしくないの・・・天神流は、しょせん人殺しの技・・・あいつがまだ、強くなりたいと言うならば、新戦会に入門させてあげてよ・・」


 その頃、龍一達は秀一の見舞いに来ていた。一以外の三人はタバコを吸うので四人は喫煙室にいた。といっても、彼らは未成年・・・当たり前の事だが、未成年の喫煙は、法律で認められていない。 

 「龍一君タバコ吸わないのかい?一君達からいろいろ聞いたよ・・・本当に格闘技を辞めるのかい?・・・そうだ龍一君、ジャッキー・リーの映画が好きなんだよね!?燃えよ酔拳のDVDがあるんだけど、観る? 」

と、秀一が聞いた。

 「・・・もう僕は、強くなりたいと思わないんだ・・・」 

 「龍一君、君がお父さんや瑠奈さんを超えたいと同じように僕や舞ちゃん、四郎君や秀一さん・・そして虎次郎も皆、龍一君を目標にしているんだよ。」

と、一が答えた。

 「僕は昔から変わらない・・・弱虫君なんだよ・・・」

するとその時、一人の男が声をかけてきた。

 「君達も格闘技をやっているのかい?」

その男の名は野村 昇児(27)でクローン病という難病を抱えている不良患者だ。


クローン病は消化器の病気で、主に小腸や大腸に潰瘍ができたりし、狭窄つまり、腸が細くなったり、ろう孔と言って腸に穴が開いたりする。


彼は十八の時にクローン病と診断され、数え切れぬほどの入退院を繰り返し、オペも三回している。今の医学では完治はしないが、主な治療は点滴による絶食や薬物治療、そして外科的治療である。

 「俺もガキの頃、少し少林寺拳法を学んでいた事があるし、病気してからも実戦空手を学んだ・・・けど病人は病人、強くなるどころか弱くなっちまった・・・だから、現実で、格闘をするのはやめて、今は格闘モノの小説を書いて、物語の中で格闘を続ける事にしたのだ・・・俺は君がうらやましいよ・・若いし、なによりも健康だ・・・実にもったいないよ。」

 「僕は、やはり強くなりたい・・・そしてルナさんを超えたい・・・」


その日の夜、瑠奈の店が終わる頃に、龍一が現れた。

 「何しにきた?」

 「破門されて、ここに来れる身分じゃありませんが、僕は一つ、言い忘れた事があります。それは、ルナさんの事が・・・ずっと前から、あの・・その・・す、好きです!」

 「・・・くだらない事言ってないで帰りな。」

 「ハジメ君達から聞きました。破門された本当の理由・・そして、ルナさんが真剣に僕の事を考えていたという事・・俺は必ず、ルナさんに認められる男になってみせます!」

瑠奈の心が一瞬ときめいた・・・そして、龍一は帰っていった。












第三章 プレシャス




 次の日、龍一達が帰宅しようとした時、龍一達の学校に一人の女性が現れた。

 「み、南・・・」

 「ハアハア、ひ、久しぶりだな、龍一・・・」

 「龍一の知り合いか?それにしても、この女ラリってんじゃ・・ジャンキーか?」

と、四郎が聞いてきた。

彼女の名は杉原 南(18)で杉原グループの会長の娘でもあり、そして、トオルの彼女でもある。

 「なぜ、そんなモノに手を出した!」 

 「ア、アンタには、関係ないだろう・・・」

と言い去っていった。

 「(もしかしたら、まだ北斗さん達は音楽をやっているかも・・・)」

 

 その夜、龍一達4人はビートと言うライブハウスにやって来た。

そのステージには、プレシャスというバンドが演奏をしていた。

プレシャス・・それは、高価な物、貴重な物を意味する・・・


演奏が終わると、龍一達は外に出た。すると・・・

 「久しぶりだな、龍一。」

その男は、プレシャスのヴォーカルとギターを担当している、杉原 北斗(26)である。彼は、南の兄であり、なんと瑠奈や凍矢、武とは幼馴染であり、摩利支天の三代目でもある。

他に一見美女と思わせるような美青年、ギターのラン(26)彼も瑠奈達とは幼馴染で元摩利支天の特隊だ。

またベースのジュンジ(26)と右腕に龍の刺青をしているドラムのユウヤ(26)は百鬼という族のメンバーだった。

百鬼はあの凍矢が作ったチームである。その時、瑠奈は、苦乃一というチームを結成。摩利支天と百鬼は仲が悪く、また摩利支天と苦乃一対百鬼の戦争が起きた時その戦いを止めたのが、武である。


その後、北斗がジュンジとユウヤを誘ってプレシャスが結成されたのである。

 

「あいつが、薬に手をだしたのは、去年お袋が亡くなってからだ。今のあいつには、何を言っても無駄だ・・自分の意思で止めようとしない限り・・・」

 「そうですか・・でも久しぶりにプレシャスの音楽が聴けて良かったです。それじゃ〜僕達はこれで・・・」

 「俺達も、これから打ち上げがあるんで、またな・・」


 次の日の夜、龍一は舞と一に連れられて、新戦会を見学する事にした。  

 「押忍!館長、彼が神威 龍一君です。」

と、舞が父でもあり、そして、新戦会の館長である後藤 勇(46)に紹介した。

 「君があの格闘王の・・・舞や一からいろいろと聞いているよ。」

 「よろしくお願いします!」

龍一は心の中で、鬼がたくさんいるな〜と思った。

新戦会は後藤館長以外にも、幹部に四天王と呼ばれる4人がいた。

一人目は土方 歳夫師範(33)

二人目は永倉 新一指導員(29) 

 三人目は原田 光介指導員(26)彼も瑠奈の幼馴染で元摩利支天のメンバーだった男だ。 

そして、四人目は沖田 一(16)である。

また、女子でありながら、一般の部で稽古をしている、後藤 舞(16)など他にも強者ぞろいだ。

 静かに見学している龍一に、館長が声を掛けてきた。

 「あそこにあるサンドバックを、蹴ってみないないかい?」

そのサンドバックは他のよりも大きく150キロはある。

龍一は構えた、そして・・・バシッという音が道場になり響きサンドバックはものすごい勢いで動いた!

 「(恐ろしい小僧だな・・・)」

さすがの後藤館長も驚きを隠せない様子だった。

練習が終わっても門下生の気合いは収まらない感じだった・・・そして、原田が龍一に話しかけてきた。

 「君、月形 瑠奈の弟子なんだって!?」

 「はい、そうです。ルナさんの事知っているんですか?」

 「ああ、幼馴染だよ。」 

「原田先輩と瑠奈さんが幼馴染ですって・・・?」

と、舞と一は驚いた。

 「しかし、あの女の弟子で格闘王の息子じゃあ強いはずだ。しかも、あの恐ろしい女の事が好きらしいねえ〜・・・しかし瑠奈が相手だと難しいなあ・・あいつの強さは、生まれて物心がついた頃から、天神流を父親から学んでいた・・だが、瑠奈が小さい時に母親を事故で亡くし、十七の時に父親と恋人の武を殺され、それから、裏の世界を一人で生きてきたからだ。」

 「ルナさんは、武さん以外の人と付き合ってないんですか?」

と龍一が聞いた。

 「もう俺も8年くらい会ってないからな〜たぶん、いないと思うよ・・あいつに下手に、ちょっかいを出そうとして、病院送りになったヤツはたくさんいたけど・・・だが、君は瑠奈にマジらしいからね〜・・だから、あいつも君の事を思って破門したんだろ!?」

 「そ、そうですが・・・僕はルナさんをあきらめたくないんです。」

 「ああ、そうだ、確か北斗と瑠奈が一ヶ月くらいだけど付き合っていたっけ・・」

 「ルナさんと北斗さんが・・・?」

 「ああ・・・でも何ですぐに分かれたのか、北斗に聞いたら、あいつの心には今でも武が生きている・・と言ってたな〜」

龍一は会った事のない武田 武という人がうらやましく思えた・・・


次の日、南は公園を散歩していた。すると、子供がボールを取ろうと道路に飛び出した!だがその時、車が・・・南は子供を助けるため、自分も道路に飛び出した!そして・・・道路には、たくさんの血が・・・すぐに救急車に運ばれた。子供の方はたいした怪我はなかったが、南は・・・夕方、龍一達が帰ろうとしたところ龍一の携帯が鳴った。北斗からだ!


慌てて四人は、秀一が入院している病院に急いだ!

そして、四人が見たのは、二度と動く事も笑う事も出来ぬ彼女の姿であった・・・彼女は感じる事すらできぬ場所へ旅立って行ったのだ・・すでに、瑠奈やトオルは来ていた。そして、北斗と瑠奈、トオル、龍一以外のメンバーは秀一の所に移動した。すると、杉原グループの会長と秘書が現れた。

 「親父〜何しにきやがった!?てめえは、家族よりも会社の方が大事なんだろう!?」

すると杉原会長が、南に向かって泣きながら土下座をした。

 「ううっ・・すまん南、私はお前や北斗に父親らしいことをしてやれなかった・・南、だがお前は人のために自分の身を犠牲にしたんだ・・これからは、大好きな母さんと一緒に・・・お前は私にとって、いつまでも貴重な宝だ・・・」 

その姿に北斗は言葉を失った・・・


 その頃秀一達は喫煙所にいた。

そこには、あの昇児もいた・・

「ここで俺は、いろんな友と知り合い、そして病で何人もの友を失った・・・」

そう言うと、その友のために自ら作った曲「祈り」を歌い始めた・・・

そしてタバコの火を消し部屋にもどっていった・・・


曲と言えるかどうか分からないが、彼はこの曲を収録した、CDーRを患者に配ったりした。

だが健康な人からは、二百五十円で売っている。その辺のところは、昇児らしい・・・

音楽の経験は少ないが、彼が、昔バンド時代に使っていた名前は、修羅しゅら 生死しょうじである。荒んでもいいから、強く生きたい・・そう思い、つけた名前だ。

だが彼は、肉体だけでなく、精神的にも弱く、馬鹿な連中と馬鹿な事をして、嫌な事から逃げてばかりいた落ちこぼれのクズだ・・・

だが、そんな落ちこぼれでも、死の悲しみを知っているからか、自殺をしようとした人に、怒った・・・というよりも、キレたこともある。

もちろん、彼も何度も死にたいと思った事があるが、生きたくても生きられなかった友に申し訳がないし、自殺は人殺しと同じ・・・だからキレたのであろう・・・


また、少年時代の彼自身も、龍一ほどではないがいじめられていた。

中一の時、お金を持って来いといわれた事もあった。


彼が少林寺拳法を学んでいたのは、小学校のころで、昔から格闘映画や格闘漫画が好きだったのと、たまたま父と兄が学んでいたからである。

だが、弱いがためにいじめられていた!


しかし、中二になると、家庭の事情とかで、学校には遊びに行くだけになった。行きたい時に登校し、授業中は寝ているか漫画を読んだりしていた。さらに、授業中に一人ライブをやって、授業を潰したこともあった・・・

問題児であったかもしれないが、アニメのキャラに本気で恋をするなど、この頃はまだ、かわいらしい一面もあった。彼の心が本当に荒んでしまうのは、この後の専門学校に入学してからだ。


昇児は、中学を卒業すると、料理の専門高校に入学する。

この専門学校は彼のような落ちこぼれの集まりな上、教師は暴力教師で、教師が教師を止めに入った事もあった。

どうやら、教師が生徒に机を投げたらしい。さすがに、その教師は解雇された。

今の教育では考えられないが、殴る蹴るは当たり前の学校だった。

それに生徒のほとんどが親に見捨てられている。だから親も何も言わないのである。

そんな学校に通っていたため、彼の心は本当に荒んでしまう・・・

ついに彼自身も、本気で人を傷つける事が出来る人間になってしまった。

昔は彼自身、いじめられていたのに、今度は彼がいじめをしていたのだ。

だが、彼がいじめられた時その連中を憎んだように、彼にいじめられた人達も彼を憎んでいるはず・・・その罪は一生消えないのかもしれない・・・

だから、パン工場に就職してすぐに、クローン病になってしまったのであろう・・・

そして、その時に自分の弱さをとことん思い知らされ、退院してから弟が習っている空手道場に通う。  

だが病気をしてからも、相変わらず馬鹿な事ばかりしていた。

 

そんな彼だが、二十代前半に、人のために役に立ちたいと思い、自ら病気の勉強会の役員をすると言い出したのだ。

当時の彼にはお金のことしか頭に無かったのに、ボランティアでやっていたのだ。

その後、仕事が忙しかったり、体調が悪かったりで、会には最近出ていないらしい・・・

  

だが、最近になって、本当に貴重な物は、お金じゃなく、こんな自分と共に病気と闘ってくれる家族なんだと気づき始めたのである。 


   




















第四章 瑠奈の過去  

 



 その日の夜、瑠奈は幼き頃から、龍一に出会った頃までの過去を思い出していた・・・  

 

 二十年前・・・

 「どうした瑠奈、そんな事では強くなれんぞ!」

 「はい、お父様・・」

 「まあ、今日はこれくらいにして、帰ろう・・・母さんが、ご飯の支度をして、待っている。」

 

家に帰ると、瑠奈の母が食事の支度をして待っていた。

 「お母様、ただいま帰りました。」

瑠奈にとって、この頃にはまだ、家族がいて幸せだった・・・この後に悲劇が起きる事も知らずに・・・

 「瑠奈、明日が楽しみね。」

 「はい、武も凍矢も楽しみにしているみたいです。」

 「ワシは用事で行けんが、思いっきり楽しんで来い。」

「はい、お父様・・・」

明日は、武田一家と水谷一家と瑠奈と瑠奈の母とでキャンプに行くはずだった・・・

しかし次の日、悲劇は起きた・・・キャンプ場に向かう途中トラックと正面衝突を・・・そして、その事故で生き延びていたのは、瑠奈、武、凍矢の幼き三人だけだった・・・

瑠奈の父良昭は、自分があの時、一緒行っていれば・・・そう思い、武と凍矢を弟子にした・・・


三人は、本当の兄弟みたいに仲が良かった・・・後に瑠奈をめぐって二人が争うなどその時は、知る由もなかった・・・


それから四年後・・瑠奈達が十歳の時、ある男が現れた。

「月形 良昭殿ですな!?私の名は、神威 武蔵と申す!貴殿と試合たいがために、参りました!」

そう、この男こそ龍一の父、伝説の格闘王である・・・

「おぬしが今、話題の格闘家か・・・」

「お父様・・・」

「お前達は、下がっていなさい・・・おぬしは何故、私と試合たい?」

「私は今日で、格闘家を引退します。」

「引退?まだおぬしは、二十代後半・・まだまだ引退するには早いのでは?」

「妻に傷つく姿をこれ以上見せたくない・・あいつは武道家の妻として、私が勝利すれば、確かに微笑んでくれます。だが、それは心の底からではない・・・それに二週間前に子も生まれたし・・・だが、最後にあなたと本気で勝負したいのです!私の師堀辺 正宗先生が、亡くなる前に、もし天神流の後継者に勝てたらお前は、最強の格闘家だ・・・とおっしゃられて・・・」

「堀辺 正宗・・・その名は父から・・・先代の天神流の継承者から聞いた事がある・・よろしい、天神流十六代目として、相手をしよう。」


実は堀辺は、後継者にはなれなかったが、瑠奈の祖父と共に天神流を学んでいたのだ・・・

その後堀辺は、天神流を捨て、骨法や柔術などの他の古武術を学び、天神流を越える武術を編み出そうとした。

そして、その理想は、龍一の父武蔵に受け継がれていった・・・


そして試合が始まった!

いきなり仕掛けたのは、武蔵だ!

だが、彼の正拳突きをかわし、天誅が炸裂!

だが、まったく効いてない・・・

良昭は、足払いをし、武蔵が倒れそうになった瞬間、顔をつかみそのまま地面に頭を叩きつけた!

 「天神流忍術鉄槌!」

だが、武蔵は立ち上がった・・・更にものすごい攻防戦が続いた・・・ 

 「おぬしは、あの宮本 武蔵の生まれ変わりか?」

 「父が、宮本 武蔵のような(つわもの)になるようにと願って付けてくれた名前なんで・・・」

すると彼は、腰に差してあった二本の木刀を抜いた。


あの、宮本 武蔵が、初めて試合をしたのは十三の時。

相手は新当流の有馬喜兵衛で、そして、武蔵は喜兵衛を木刀で殺したという。

 

「リングの上では武器が使えないんでね〜・・・神威流は体術だけじゃあないんです。」

 「二刀流とは・・まさに宮本 武蔵の二天一流・・・だが天神流は忍術、体術はもちろん、剣術、槍術、棒術など様々な武器が使える・・瑠奈!」  

 「はい、お父様!」

瑠奈が父良昭に、木刀を渡した。

再びものすごい激戦が・・・そして、良昭の頭に武蔵の木刀が・・・だが良昭も木刀で防いだ!

「(胴ががら空きだ・・)」

武蔵のもう一本の木刀が良昭の胴に・・・だが良昭は、中国拳法の気功のような技で、気合いとともに、木刀を折ったのだ!

良昭は木刀を捨て、奥義龍神を使った!

武蔵は立つ事が出来なかった・・・これで武蔵の不敗伝説は終わった・・・

だが彼にとって今日の試合ほどすばらしい試合は今までに、無かったであろう・・・


さらに時が流れて、瑠奈達は中学生になっていた・・・

この頃になると、瑠奈と凍矢はヤンキーになっていた・・・

特に凍矢は補導されたり逮捕されたりして、何度も警察の厄介になっている。

武と凍矢と瑠奈は同じクラスで、また隣のクラスには、北斗とランが、さらに違うクラスに原田がいた。

この頃から、瑠奈と武は付き合っていたが、武が瑠奈に何も言はないのは、いつか自らの過ちに気づいてくれると信じていたからだ。


だが中学を卒業して半年経った頃、摩利支天の三代目に北斗が、特攻隊長にはラン、そして、原田がいた・・・

また、凍矢が作った百鬼にはジュンジとユウヤが・・・

さらに、瑠奈が結成させた苦乃一が・・・

  

ある晩ついに摩利支天と苦乃一対百鬼の戦争が始まった・・

 「瑠奈・・武みたいなクソ真面目なヤツよりも、俺の女になれ!」

 「凍矢、ふざけんじゃないよ!?」

 「お前が北斗か?」

ジュンジが北斗を睨みつけた・・

 「上等だよ!?お前・・・」

北斗がそう言った・・・

 「なんだ!?この女みたいなヤツは?」

ユウヤがランを挑発した・・・

 「誰が女みたいだって!?殺すぞ、コラ!」

ランが木刀を強く握った・・・

物凄い乱闘が・・・こうなったら、誰も止められない・・・と思ったら、一人の男が現れた!

 「瑠奈、凍矢こんなとこに居たのか・・先生が心配しておられるぞ。」

そう、その男は武であった!

 「何じゃてめえ〜は?死にてえのか〜?」

百鬼の一人が武に攻撃しようとしたが・・・

 「そいつに手を出すな!お前らじゃ無理だ!」

凍矢が自分の舎弟にそう言った・・・

 「へえ〜以外と仲間思いなんだな!?」

 「勘違いするな・・お前を殺すのは、この俺だ!・・てめえら〜行くぞ!」

 

この戦争をきっかけに、瑠奈は武にふさわしい女になろうとするが、凍矢はかなりのワルになっていた・・

そして、その傍若無人さゆえに、凍矢はついに天神流を破門された・・・


 それから一年が経った・・・

武と瑠奈は阿の山と呼ばれる所で修行していた・・・

天神流には道場がなく、この山は代々天神流の者が山ごもりの場として利用されてきた山である。


 その頃、月形家に一人の男が現れた・・・

 「お久しぶりです・・良昭先生。」

 「何しに来た?凍矢・・・」

 「瑠奈を俺の嫁にしようと思いまして・・」

 「たわけたことを・・いいか、瑠奈は武と結婚させるつもりじゃ。」

 「そうおっしゃると思いましたよ。」

そういいながらニヤリと笑った・・・

 「ならば、先生と武を殺さなくてはなりませんね!?」

そして死闘が始まった・・・が、さすがの凍矢も良昭には勝てそうもなかった。

 「(クソ、やはり今の俺では勝てんか・・・?)」

 「許せ、凍矢よ・・・今楽にしてやる。そして、ワシもお前の後を追う・・」

良昭が、凍矢にとどめを刺そうとした・・・だがその時!

 「う、うう〜、こんな時に発作が・・・」

なんと良昭は、胸を病んでいた!

 「これは、これは・・・なんとも・・・まさか病んでいたとは・・安心してください先生、今楽にして差し上げます。」

そして良昭は・・・

 「次は武だ・・・」


 その頃瑠奈と武は・・・

「瑠奈そろそろ山を降りよう・・・先生も待っておられるだろうし・・・」 

 「そうね・・」

 「・・・瑠奈・・・来年になったら、結婚しよう・・」

 「うれしい・・・すごくうれしい・・・」 

二人はそのまま熱い口づけをした・・

その時!

 「やはり、ここにいたか・・」

 「凍矢・・・何しに来た?」

武は冷や汗を掻いた。

 「瑠奈を俺の女にするためさ・・・」

 「私は、あんたの女になる気はない・・・」

 「いい事を教えてやろう・・瑠奈、お前の父良昭は俺が殺してやった・・」

 「嘘を言うな!」

 「嘘ではない・・お前らも気づいてたんだろう!?あの男が胸を病んでいたことを・・・感謝してもらいたいもんだ・・どうせ早かれ遅かれあの男の死期は近かったに違いない・・・だが俺のおかげで、病死ではなく戦死したんだからな。」

 「凍矢・・・なんて事を・・」

武が構えた・・・

 「次はお前だ!」

凍矢が攻撃をしかけた。

二人の実力は互角だった。

この戦いを当時の瑠奈には止める事ができなかった。

 「やるな・・・武」

 「(すまん瑠奈、お前だけでも生きて・・そして幸せになってくれ・・・)」 

武は死を覚悟し、凍矢と共にガケから転落した。

すぐさま瑠奈は、ガケを駆け下り、武の所に・・・

 「しっかりして、武!」

 「す、すまん・・瑠奈・・ハアハア・・だが・・お、お前だけは、幸せになって・・」

武はついに息耐えた・・・だが!

 「ハアハア・・・く、くそが・・・」

なんと、凍矢はまだ生きていた!

 「凍矢!」

瑠奈は父と武の仇を討とうとしたが、凍矢の凍りつく目に瑠奈は、金縛り状態におちいった。

 「ど、どうした・・い、今のうちに、俺を殺しておかないと、後悔・・するぜ!?」

ついに瑠奈は、動く事が出来ず凍矢を逃がしてしまった・・・


やがて、瑠奈は、天神流の後継者となり、ただひたすら強くなろうとしていた・・・

そして、裏の世界に足を踏み入れた・・・

すでに、瑠奈の強さは、格闘王はもちろん、父良昭をも超えていた。


瑠奈は裏の世界で、何人もの人間を殺めてきた・・・

ほとんどが人間のクズばかり・・・

だが中には、本物の戦士とも命をかけ戦った事も何度かある。


初めて、瑠奈が殺した相手は、ただの通り魔だった・・・


ある日、一人のOLが帰宅途中に殺された。

それから、三日後に今度は女子大生がバイトの帰りに殺された。

犯人は同一犯と思われるが、どうも金銭目当てではないらしい。それは殺された二人から財布などを盗んだ形跡がないからだ。


そして五日後の夜・・・

 「お、お願いです。お金ならあげます。」

「へへへっ、お前、新聞読んでないのか?おれは、金なんかいらねぇよ。」

 「も、もしかして、あなたが、あの通り魔!?」

 「そうだ。俺が最近OLと女子大生を殺した男だ!」

「あ、あなたの目的は何?」

  「俺の目的は、恐怖に怯える女の顔を見ながら、ゆっくりと殺すことだ。」

男は無職で、名は宮下 勉(37)で人間のクズのクズだ。

 「(お願い、誰か助けて!)」 

女は恐怖のあまり、逃げることも出来ず、やがて、声すら出せなくなった。

 「ついに声まで出ないくらいに怖いか?今からこの包丁でゆっくりと殺してやるよ。」

その時!

 「今日、死ぬのはお前だよ。」

 「なんだ!?誰だ、おまえは?」

 「私は、始末屋(スイーパー・・・お前を殺しに来た!」

瑠奈だ!瑠奈がついに現れた。

そして震えている女性の近くに行き、彼女を守るとした。

 「へへへっ、それにしても美しい女だ。まずはお前を、ゆっくりと殺してやるよ。」

 「もう大丈夫よ。今のうちに逃げなさい。」

女は、瑠奈のやさしい顔を見たら安心し、そして、ゆっくりと歩き始めた。

その時、男が瑠奈に襲いかかった!

だが瑠奈の天誅が炸裂!

さらに瑠奈は、男が気絶しない程度で攻撃を続けた。

女は瑠奈を信じ、無事逃げることができた。

男は再び包丁で襲いかかるが、瑠奈は男の手首を蹴り、その勢いで包丁は男の腹に突き刺さった。

 「血、血が・・・い、痛いよ・・お願いだ、助けてくれ。」

 「無理ね。あんたは、そのまま、苦しみながら死んでいくのよ。」

そう言って、瑠奈は去っていった・・・


「(スイーパーか・・所詮天神流は、人殺しの技・・今の私にはちょうどいいかも・・)」

こうして瑠奈は、スイーパーとなり、後に裏の世界でアルテミスと呼ばれ、多くの人達から恐れられるようになっていく・・・

「た、頼む、救急車を・・・」


その翌日、すでに男は死んでいた。

発見者がすぐに、警察に連絡した。警察はこの男が通り魔だと分かった。

そして、包丁には瑠奈の指紋が無いため、この男は自殺したことになっている。

  

それから半年後、ちょうど武が亡くなって、一年が経った頃・・・

北斗は自分の思いを瑠奈に告げた。


そして、一ヶ月後・・・

 「どうしたの?北斗・・」

 「・・・瑠奈、俺ではお前を幸せすることが出来んみたいだ・・・お前の心の中にはまだ、武が生きている・・・」

 「ごめん北斗・・でもあなたに告白されてうれしかった・・・だから・・・」

そして二人は、恋人からまた友達という関係にもどっていった・・・


 それから数日後、ジュンジとユウヤの前に北斗とランが現れた。

 「この前の解散ギグ観たぜ。短当直用に言う・・俺達と音楽(ロック)をやらないか?」

 「何で俺達が、てめえらなんかと・・・絶対にヤダ!」

ユウヤは嫌がっていたが、ジュンジは、考えていた。

 「北斗、俺もこいつらといっしょにやりたくねえよ〜」

するとジュンジが、

 「お前らにとって、音楽(ロック)とはなんだ?」

 「貴重な宝だ!」

と、北斗が言うと、ジュンジはニヤリと笑い、そしてプレシャスが結成された!


 さらに時は流れて、瑠奈は二十歳(ハタチ)になっていた・・・


その頃、龍一は、上級生や中学生までマジって、堤防でいじめられていた。その中には、あのマサシもいた。

 「お願い・・やめてよ・・」

 「龍一!俺達はお前のためにやってるんだぜ。」

 「お前は、格闘王の子供のくせに弱いから、俺達が鍛えてやってるんじゃないか。」

 「明日までに、授業料五万持って来い!」

そう言ってヤツらは去っていった・・・


 次の日、龍一はお金を持ってこなかった・・・そのため、また堤防に連れられ、ボコボコにされた後、真冬の中、川に投げられた。

 「ゲホッ・・ゲホッ・・」

龍一は自力で岸に上がった・・

 「お前が悪いんだろう・・金もってこねえから・・・」

さらにリンチが続いた・・・

だがその時!

 「確かに、悪い子にはお仕置きが必要ね。」

瑠奈が笑いながらそうつぶやいた・・

 「綺麗な姉ちゃんだな〜俺達の仲間になりたのか?」

と次の瞬間いじめっ子達はあっという間に瑠奈にお仕置きされて、そして一目散に逃げていった!

龍一の体は、ビショビショに濡れていた上に、泥だらけであった・・・

そして泣きながら、

「もう嫌だ・・もう死にたいよ・・・」

とつぶやいた・・

すると瑠奈は、

 「死ねば!早く死んで見せてよ。一人で出来ないなら手伝ってあげようか?」

そう冷たく言い更にナイフを取り出した・・・

すると龍一は、

 「・・・本当は死にたくない・・・本当は死ぬのが怖いんだ・・・」

すると瑠奈は、ナイフを置き、濡れて泥だらけの龍一をそっと抱きしめた・・・

「(温かい・・・そしてすごくいい匂いがする。)」

龍一は照れながらそう思った・・

 「そうよ・・死んだらそれで終わりなのよ・・・もう二度とそんな事を言ってはダメだからね・・・」

 「僕、強くなりたい・・・お父さんみたいに・・・」

 「・・・努力すれば、強くなれるわよ・・」

こうして、龍一は瑠奈の弟子となり、純粋に強さを求めていった・・・

 

 しばらくして、瑠奈はヴァイオリンを弾き始めた。


実は昔、瑠奈もプレシャスのメンバーでヴァイオリンを担当していたのだ。

やがて龍一に、天神流を教えるため脱退した。

プレシャスは、その後解散をしたが、三年後に、再び活動を開始した・・・


そして、二年後には、インディーズバンドとして、アルバム「ファンタジア」をリリースした。

アルバムの最後の曲に、瑠奈も参加して、ヴァイオリンを弾いている。


瑠奈は父から天神流を学び、母からヴァイオリンを学んでいたのだ。

瑠奈は、南や武そして、父と母のためにヴァイオリンを弾いていたのであった・・・


  















第五章 龍一と瑠奈 

 



 南が亡くなって、二週間が経った・・・

この間に秀一は退院をしていた・・・


ある日、瑠奈の店に一人の男が現れた!

 「へ〜、なかなかいい店じゃん。」

 「光介!」

店に来たのは、新戦会の四天王の一人、原田 光介だ。

 「南ちゃんの葬式の時、お前や北斗と久しぶりに会ったけど、あの時は話かけづらかったから何も言はなかったけど・・・今日来たのは、お前に頼みがあって来た。」

 「頼み・・・?」

 「とりあえず、コーヒーを・・・」

しばらくして、瑠奈がコーヒーを出した。

 「うまい・・」

 「それで、頼みって何?」

 「俺が、空手を学んでいたのは知っているよな!?」

 「ええ・・・でもまだ続けているの?」

 「ああ・・けど最近、面白いヤツがうちの道場に入門してきた。」

  「面白いヤツ・・・?」

  「あの伝説の格闘王の子供だよ。」

 「・・・・!」

 「しかし厄介なことに、とんでもなく強い!が、俺は指導員である以上指導しなきゃならん・・・だが、あんな化け物をどう指導していいか分からん・・そこで館長や他の幹部と相談して、お前の弟子に戻せばいいと思って、頼みに来た。」

 「まさかお前が、新戦会の人間だったとは・・・」

 「あいつは本気(マジ)で、おまえに惚れている・・・いやお前自身も、龍一に惚れてるんじゃないのか?」

 「この前、北斗が私にこう言った・・・お前の心は今、揺れて揺れて、揺れ動いている・・・だが、龍一を愛しているから、自分に近づけないようにしている・・・それは愛しすぎるから・・・そう言っていた。」

 「あいつらしいなぁ」 

 「あいつに会ったら、店に来るように伝えてよ。」

 「分かった、今日道場で会ったら伝えとくよ。」


 次の日の夜、店が終わる頃に、龍一は現れた。

 「・・・ルナさん、僕・・・」

 「リュウ、百万払ってくれたら、アンタの彼女になってもいいわ。」

 「・・・・」

 「私はこういう女なのよ。」

すると龍一は、そっと瑠奈を抱きしめた。

 「初めて、ルナさんに会った時、泥だらけの僕を、こうやって抱きしめてくれた・・・」

 「・・・私にこんな事をして、ただで済むと思っているの?」

 「僕は、ルナさんになら、殴られても、殺されてもかまわない・・・」 

だが龍一の体は震えていた。

それは龍一が、瑠奈のやさしさと同時に、恐ろしさもよく知っているからだ。

そして龍一は、覚悟を決め、震えながら目を閉じた・・・

「(リュウ、お前はホントに馬鹿な男だよ。)」

すると瑠奈は、龍一に優しくキスをした・・・

龍一にとっては、はじめてのキスだった・・・

 「(・・ルナさん・・・)ルナさん、僕と付き合って下さい!」

 「・・・リュウ、ゴメン、今の私は、誰とも付き合いたいと思えないの。でもすごくうれしいよ。」

「・・ならもう一度、僕を弟子にして下さい!」

「・・うん、それならいいわ」

  

こうして、龍一は再び瑠奈の弟子にもどる事ができたのである。

だが二人は、まるで恋人の様な感じだった。

それは、瑠奈と龍一の距離が縮まったからである。


 「マジだぜ!?マジ!俺見たもん。龍一と瑠奈さんが手をつないで歩いていたんだ。」

 「確かに、龍一君は最近、様子がおかしい・・・」

 「やはり二人は、付き合っているのかしら?」

学校の中で、舞と一と四郎がうわさ話をしていると、龍一が登校してきた。

 「みんな、おはよう。」

 「お前、瑠奈さんと付き合っているのか?」

 「まさか、まだ師弟という関係だよ。それより僕、学校を辞めるつもりなんだ。」

 「龍ちゃん本気!?」

 「うん。本気!けどチャランポランな理由で辞めるんじゃないんだ。自分の夢・・・最強の格闘家になると言う夢のためさ。」

 「だからって、辞めなくても・・・」

 「何となくと言う理由で、高校に入ったが、学校で学ぶ事は何もない・・だったら辞めて、その時間を利用して、天神流の修行をしたい。」

彼の目は本気であった。

 「来週から一年間、阿の山に一人でこもって、修行に励むつもりなんだ。このことは、ルナさんや親には話してある。後は、担任の先生に言うだけ・・・」

 「龍一君は、本気みたいだねぇ。」

 「うん。でも、高校に入って嬉しかったことは、3人に出会えたことかな。」


昼休み、龍一は図書室にいた。

彼は本を読むのが大好きだ。漫画や小説、さらには絵本など様々な本を読む。

龍一の姿を見かけ、舞たち3人も図書室に入っていた。

 「龍ちゃん、何の本を読んでいるの?」

 「今読んでいるのは、宮本 武蔵の本だよ。あの武王大山 倍達は、山ごもり時代宮本 武蔵を心の師としている。だから、どんな人か知りたいんだ。それに、お父さんと同じ名前だし・・・おじいちゃんは、お父さんに宮本 武蔵のような兵になってほしくて、付けたみたい」

 「俺は本なんて、漫画しか読まないからなぁ・・・」

四郎はそう言いながら、一冊の本を手に取った。

彼が選んだ本は、「姿三四郎」だ。


明治時代、柔道家三四郎が、様々な格闘家達と闘っていくというお話だ。

そして、彼の必殺技といえば、あの山嵐だ!

この姿三四郎のモデルとなった人物は、あの講道館の嘉納 治五郎の門下生、西郷 四郎である。

 「(もし、この山嵐が出来たら、龍一に勝てるかも・・・)」


昼休みが終わり、龍一達は教室に戻っていた・・・


 帰宅途中、龍一達四人は、新戦会の土方と原田に出会った。

そして、原田が龍一に話しかけた。

 「龍一、瑠奈とはその後うまくやっているかい?」

 「はい!」

 「俺達は今から、瑠奈の店に行くんだ。土方さんが瑠奈に会ってみたいと言うんで・・・お前らもこいよ。」

こうして、みんなで瑠奈の店に向かった・・・


 瑠奈の店に入ると、そこには北斗とランがいた。

そして、北斗が土方に向かって、

「ト、トシさん・・・?」

 「北斗・・・・?北斗か!」

 「北斗さん、土方さんを知っているんですか?」

 「ああ、俺の憧れの、ヴォーカリストだった人だ。」

 「そういえば、私が小さい時、土方さん、派手な格好で音楽をやっていましたねぇ」

 「そうか・・お前は、音楽で土方さんに憧れていたのか・・・」

 「光介・・お前、まだ空手をやっていたのか!?・・・俺は、格闘技ならボクシングが好きだな」

 「音楽か・・・もう十年くらい昔の事だなぁ・・それはそうと、あなたが龍一の師匠、月形 瑠奈さんですね?」

 「ええ、お久しぶりです。土方さん。」

 「・・・ああ、何処かで見たことがあると思ったら、貴女もプレシャスのメンバーでしたよね?」

 「はい、でも今は違いますけど・・・」

 「まあ、音楽の話は置いといて、実は今日来たのは貴女と試合をしたいと思いまして・・・」

 「土方さん!何を・・・」

 「舞ちゃん、土方さんは本気だ。」

 「原田さん・・・でも、お父さんの・・・館長の許可なく、正当な理由もない他流試合は禁止されています!」

 「館長から、許可はもらっています。」

 「土方さん、私は武道家ではありません。」

 「知っています。裏ではアルテミスと呼ばれている、プロのスイーパーらしいですね。」

 「・・・・・」

しばらく沈黙が続いた・・・そして・・

 「武士道とは死ぬことと見つけたり・・・俺は戦う時は、常に死ぬ覚悟で戦っています。貴女のようにね。」 

 「分かりました。明日の夜、そちらの道場にお伺いします。」

 「では、ルールは喧嘩ルールで、勝敗は負けを認めるか、相手が立てなくなるまで・・・もちろん武器を使ってもいいですよ。では明日お待ちしています。」


そして、次の日の夜・・・

道場には、新戦会の一般の部の門下生や四郎、秀一、恵、トオル、北斗、ラン達が集まった。

 「瑠奈さんと龍一は、まだ来てないみたいだなぁ」

 「時間の指定はしてないし、瑠奈さんは店があるからねぇ・・・」

 「それより原田さんが持っているの、真剣じゃ・・・本気で殺し合いでもする気なのか!?」

 

そして・・・

 「お待たせしました。」

瑠奈と龍一が、天神流の道着を着て現れた。

 「私が、館長の後藤 勇です。」

 「月形 瑠奈です。」

 「おい、すごい美人だな。」

 「ああ、でも本当に強いのかなぁ?」

 「原田先輩、あの人本当に強いのですか?」

 「あの女がどれほど強いか、もうすぐ分かる。だから黙って見ていろ。」

 「押忍!」

 「永倉!」

 「押忍!館長!・・・では、正面に礼!互いに礼!始め!」

ついに二人の試合が始まった。

土方がまず、回し蹴りを・・・だが瑠奈は紙一重でかわた。

更に、土方の攻撃が続くが、瑠奈はすべてかわす・・・

 「さすがに強いなぁ・・・」  

今度は瑠奈が攻撃を・・・だが土方もかわし、かかと落としを・・・瑠奈は避けて、そして、天誅が炸裂!

更にもう片方の足で土方を蹴り飛ばした!

土方は壁の方までふっ飛んだ。

更に手裏剣を投げたが、わざと外した。

 「降参したらどう!?次は、ほんとに当てるわよ。」

 「やはり空手家の土方では勝てぬか・・・ならば、鬼の土方ならどうだ!」

土方の顔つきが変わり、ついに鬼と化した。    

 「原田!」

 「押忍!」

原田が土方に、刀を投げ渡した。

 「あんたが武道家でない様に、今の俺も空手家じゃない・・」

土方がついに刀を抜いた。

 「行くぜ!」

鬼の土方の攻撃が始まった。

土方の剣術は我流だが、かなりの腕前であった・・・

今度は、本当にかわすのが精一杯で、瑠奈はなかなか攻撃が出来ない。

 「す、すごい・・強いよ・・土方さん。あのルナさんがかわすのが精一杯なんて・・」

そして、土方は得意の突きを出したが、これも瑠奈はかわす。 

 「なるほど、これが鬼の土方の強さね・・・なら私も、アルテミスとして戦うわ。」   

土方の攻撃は止まらない、瑠奈の頭に刀が・・・だが瑠奈は白刃取りをして、そして、刀を折った。

だがそれと同時に、土方は瑠奈の鳩尾に蹴りを放っていた。

さらに折れた刀で突きを、だが瑠奈は、かわし双龍が炸裂!

そして、龍神を使った。

 「(何だ、この技は・・・)」

土方は、立ち上がることが出来なくなった。 

「ま、まさか殺した!?」

すると瑠奈が笑顔で、

「また彼と戦いは・・」

と答えた。

土方は気を失っているが、生きていた。

「(恐ろしい女じゃ・・・あのトシを倒すとは、ワシもあと十年若ければ、あの女と戦ってみたいと思ったかも・・・)」

「(いつか、ルナさんを超えてみせる・・・)」

龍一は、心にそう誓った。


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