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【第4章】伝えたい想い

今日はラースが帰国する日。

城門前には、ギルバートにミドル、お付きの騎士たちが見送りに集まっていた。


「カノン、元気でね……!」


「体には気をつけてね。

これから寒くなるからあったかくして過ごすのよ」


鳥人侍女の2人が、別れを惜しむようにカノンを抱きしめる。


ラースのお付きと言う立場を通して、すっかり打ち解けたこの2人とお別れするのはやはり寂しくて。

カノンも2人をぎゅっと抱きしめ返して別れを惜しんだ。


「……ああ。またな、ラース」


ギルバートとの挨拶を終えたラースと目が合う。


「じゃあね、カノン」


柔らかく微笑むラースに、頭を下げた。


そんなカノンの頭に、ポンッとラースの手が置かれたことで顔を上げる。


「カノンのおかげで楽しかったよ」


そう言って、ポンポンと優しくカノンの頭を撫でるラース。

カノンも同じ気持ちだったから、笑顔を返す。


「ギルバートに嫌気が差したら、いつでも俺のとこ来ていいからね」


「おいラース」


冗談めかしたラースの発言に、突っ込みを入れるギルバートの声が続く。


(こんなやり取りを見れるのも、今日で最後なんだな)


フォーゲルに帰るみんなが、いつまでも元気でありますように。


物寂しさと共に祈りを込めて、カノンはラースたちのことを見送った。



ラースたちを見送った後。


「少し話したい」

そう言われて、カノンはギルバートと共にいつもの裏庭にやって来た。


大樹の下で、ギルバートが立ち止まる。


「……カノン」


カノンも同じように立ち止まって、ギルバートを見上げた。


「ラースから、君をフォーゲルに連れて行くと言われた時は焦ったよ」


暖かな木漏れ日に包まれる中、ギルバートが静かに切り出す。

その胸元には、カノンの贈ったブローチが煌めいていた。


「その時俺は――君と離れたくないと強く思った」


風が吹き抜けて、木の葉がさざめく。


次の瞬間、カノンはギルバートに抱き寄せられていた。


「カノンがこの国に残ることを選んでくれてよかった。

……ありがとう」


逞しい腕の中にすっぽりと包まれて、耳元で低く優しい声がする。


(……私、いま……)


ギルバートに抱きしめられている。

それを理解した瞬間体は固まり、心臓が早鐘を打ち始めた。


「……カノン」


名前を呼ばれて、そろそろと顔を上げた。

きっと今、カノンの顔は真っ赤に染まっていることだろう。


ギルバートは、大切な宝物を見つめるような瞳でカノンを見ていた。


こんな風に見つめられたら、勘違いしてしまいそうになる。


「君とこうして過ごす時間があるだけでいいと思っていた。

けれどもう――それだけでは足りそうにない」


歌姫の存在がある限り、叶わない願いだと思っていた。


ギルバートの指先が、カノンの髪に触れる。

ギルバートに貰ったあの日から、いつもつけている髪飾り。

それを見て、ギルバートは嬉しそうに目を細めた。


「君に伝えたいことがある。

……だが、今のままでは準備が足りない。

全てを整えて、必ず君に伝えに来る」


(私と同じ気持ちだと、そう自惚れてもいいのだろうか)


「だからそれまで、もう少し待っていてくれないか」


真剣な目をしたギルバートに、カノンもコクリと頷いてみせた。


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