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第二十八話 浮岳明彦その二

 時間は少しさかのぼり、仮想空間内。

 コウを出口に送り届けた早苗が戻ってきたころ。


「みんな! コウくんが出口を見つけて外に向かったよ! でも外までの道が入り組んでるらしくて、コウくんしか行けないだろうって、ひとりで……」


「そうか……いや、そうなの……。今はコウ君に頼るしかないわね」


 鬼頭蓮がユーカのそばに来て、不安そうに尋ねる。


「一体どういうことなんだ? VRのバグかな?」


「わからないわ……。こんなこと初めてだもの……」


「彼が外を見てきてくれるのなら、とにかくここで待つしかないようだね」


 相澤はそう言って、駐車場の車だった物体を撫でる。


「しかし風間のやつ……。無事だといいんだけど……」


 鬼頭凛は風間が消えたときを思い出したのか、泣き出す。


「う……風間くん……ひっく……」


「凛、きっと大丈夫だよ」


 蓮は双子の妹を慰めたあと、再びユーカに話しかける。


「……君、霞優花さんだっけ? さっきは話し方が違ったみたいだけど……」


「え? ええ、興奮するとつい……はしたなくてごめんなさい」


「そうなんだ……」


 蓮は言いながら真横に手を向け、氷魔法を放った。


「え!?」


 氷柱が早苗に襲いかかる。


 バキィンッ!!


「…………」


 早苗に命中する直前で、カオルの拳が氷柱をバラバラに砕いた。


「カオル!」


「テメーなにしやがっ……なんのつもり!?」


 蓮はユーカを見つめながら言う。


「もう演技する必要はないよ。わかっているんだから。……久しぶりだね。お前のそんな格好を見られるなんて、長生きはしてみるものだな」


 ユーカは蓮を睨みつけて、絞り出すように言う。


「……浮岳……!?」


「ふふ、探知の少年がいなくなってくれたのは好都合だったよ」


 相澤と凛が、蓮に駆け寄る。


「何をするんだ蓮! 今は試合をやっている場合じゃないだろう!」


「蓮、様子がおかしいよ! どうしちゃったの!?」


「……邪魔だ」


 蓮がそういうと、彼を除く全員の足元から魔力の鎖が伸びる。ユーカ、カオル、早苗は即座に反応しそれをかわすが、相澤と凛は捉えられてしまう。


「な、なに!? この鎖!?」


「蓮……! お前何を……!」


 蓮が指をパチンッ! と弾くと、鎖が消えると同時に二人が気を失い、その場に倒れる。


「相澤くん! 鬼頭さん!」


 早苗とカオルが駆け寄り、様子を見る。


「気を失っているのに、転送されない……?」


「やはり普通の状況じゃないってことだ」


 カオルは蓮に向き直り、ユーカに尋ねる。


「こいつが浮岳明彦だと?」


「ず、ずいぶん若いんだね……」


「操られているってことか。前の襲撃者と同じく」


「いや……」


 ユーカがカオルの言葉を否定する。


「さっきの鎖は間違いなく浮岳の魔法だ。どこかから操っているだけでは、本人の魔法は使えない」


「え……?」


 三人は蓮を取り囲むように位置し、動きを警戒する。


「まさかきさま……転魂をしたのか!?」


「やっとわかったようだね」


「てんこん……?」


 早苗の質問にユーカが答える。


「自分の魂を他の肉体に移すことだ。だが不可能だと……いや、可能だとしてもまさか実行するとは思わなかったぜ」


 ユーカは険しい表情で続ける。


「魂を移した先の肉体は数年で崩壊するはずだ。歪な魂に器である肉体が耐えられないからだ」


「そのとおり。当たりだよ」


 蓮はなんでもないことのように、平然とそう言う。


「数年……? じゃあ、二百年以上もどうやって?」


 ギリッ、とユーカは歯軋りをする。


「……肉体を次々に取り替えてきたんだよ。本来の持ち主の魂を喰らい、取り込むことでな」


「……魂が抜けた肉体はどうなるの?」


「死ぬ。吉岡のようにな」


「……なんて奴! 許せない!」


「こいつはここで倒す。お前らいいな!」


 ユーカが言い終わるのと同時に、早苗とカオルが駆け出し、ユーカは蓮に向け、氷魔法を地に這わせる。


「『薄氷ウスラヒ』……!」


「ふっ……」


 足元から伸ばした鎖を掴み、空中へと逃れる蓮。


「『ソニック・ブレイカー』!」


 そこへ早苗の投石が迫る。蓮は地面から伸ばしたもう一本の鎖へすばやく移動し、それを回避。


「『マニューバッ』!」


 一度通り過ぎた石がカクンッと曲がり、浮岳に襲いかかった。


「む……!」


 蓮が鎖を蹴って宙に飛ぶ。そこへ


 バリバリバリッ!!


 ユーカが電撃魔法を浴びせる。

 蓮はシールドでガードしたが弾き飛ばされ、煙に包まれながら地面に落ちていく。


「『閃雷センライ』だ。懐かしいだろ? ……カオル!」


 すでにカオルは落下予測地点に向けて走り出していた。

 タイミングを合わせ、蓮の顔面に向け右フックを振り抜く。


 ガンッ!!


 それもシールドでガードした蓮だったが、カラダごと吹っ飛ばされ……


 ドガッ!!


 かつて車だった直方体の側面に叩きつけられた。

 赤い直方体が大きく変形し、細かく白い立方体が粉々に砕け散る。


「ぐっ……!」


 ユーカたちが近づくと、尻を地面についた蓮は三人を見上げる。


「浮岳、オレとこいつらの力を見誤ったようだな。お前はここで終わりだ」


「……そうでもないさ」


 蓮がそう言うと同時に、ユーカたちの斜め後ろから無数の光の剣が飛んできて、三人を襲う。


「ぐぁッ!」

「な、何!?」


 ユーカは即座にシールドを展開し三人を包むが、全員、はじめの何発かを喰らってしまった。

 光の剣が飛んできた方を睨みつけ、ユーカが言う。


「鬼頭凛……いや、浮岳……!」

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