女性への変化
終業式が終わり、
もう何も隠すことのない俺たちは正門を出た。
途中で合流し、いつもの土手に六人で腰を下ろす。
来週の遊園地の話をしているだけなのに、胸の奥が妙に明るかった。
二日前。
新聞屋のおじさんから給料を受け取ったばかりだったからだ。
──
「おーい、待ってただろ。給料だ」
差し出された給料袋を受け取ろうと手を伸ばす。
けれど、おじさんはすぐには離さなかった。
「いいか、直樹」
真っ直ぐな目だった。
「これはお前が頑張った分だ。
努力して稼いだ金だ。使い方、ちゃんと考えろ」
ゆっくりと手が離れる。
袋の中身を見たとき、
嬉しさより先に戸惑いがきた。
諭吉が十枚。
こんな大金、どう扱えばいいのか分からなかった。
深夜、帰ってきた母さんに給料袋を差し出した。
「……何これ?」
「新聞屋で働いた給料」
母さんは半信半疑のまま中を見て、次の瞬間、慌てて電話をかけていた。
事情を聞き終えたあと、母さんはしばらく黙り込み、
それから静かに俺の頭を撫でた。
「……頑張ったんだね」
その一言で、胸の奥がいっぱいになった。
気づけば俺は、
五万円を母さんに渡していた。
理由なんてうまく説明できない。
ただ、そうしたかった。
そんな俺の行動に母さんの目は涙で潤んでいた。
─────────
そして迎えた、遊園地の日。
朝の空気まで、どこか特別に感じる。
六人で歩くだけで、世界が少し広がった気がした。
隣には香織がいる。
それだけで十分だった。
──────────
朝から遊び、昼を迎えランチも終わり午後からどうするかなんて考えていた時だった。
香織の様子が急におかしくなった。
さっきまで笑っていたのに、顔色が悪い。
「……大丈夫?」
「ちょっと、休めば平気……」
無理をしているのは、すぐに分かった。
理由は分からない。
それでも、このまま遊ぶのは違うと思った。
「香織、帰ろう」
そう言うと、香織は小さく頷いた。
友達に事情を話し俺たち二人は先に帰る事にした。
────────
電車の中。
香織は俺の肩にそっと頭を預け、目を閉じていた。
その重みが、やけに現実だった。
──守らなきゃいけない。
そんな感情を、初めて知った気がした。
そして二人乗りして何とか香織の自宅前に着いた。
「着いたよ。無理しないようにな」
「うん…なんかごめんね…」
「気にすんなって、それより……」
顔色が悪い香織はそのまま自宅へと入って行った。
家まで送り届け、一人で帰る道は静かだった。
楽しかった一日のはずなのに、
胸の奥には言葉にならない何かが残っている。
⸻
帰宅後、母さんに話すと、
静かに教えてくれた。
女の子には、
どうしても体調が悪くなる日があること。
それは人に知られたくないものだということ。
そして──
気づいたなら、そっと助けてやればいいということ。
俺はただ、黙って頷いた。
──────
布団に入ると、
今日の出来事がゆっくり頭の中を流れていく。
楽しかった。
本当に、楽しかった。
これからの俺は香織と楽しい日々をずっと過ごしていくのものだとこの時は感じていた。




