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生きるとは何か  作者: ルーツ


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バイト!

その日の深夜。


帰ってきた母さんに、

「おかえり」と声をかけた。


少し迷ってから、続ける。


「疲れてるとこ悪いんだけど……

 落ち着いたら、ちょっと話聞いてくれない?」


「うん、大丈夫。

 着替えてくるから、少し待ってて」


──自分の部屋兼リビングで待つ。


「おまたせ。どうした?」


「あのさ……再来週、

 友だちと遊園地に行かないかって誘われてて。

 ……ダメかな」


できるだけ金は使わないつもり。

でも、汽車代、バス代、入園料、乗り物代。

どう考えても出費は大きい。


「いくらくらい必要なの?」


「分からない……

 でも二、三千円じゃ足りないと思う」


「そっか。行きたいんだよね」


「……うん」


母さんは少し考えて、

「あ、ちょっと待って」と言って

深夜一時を過ぎているのに電話をかけ始めた。


───────


「もしもし?

 手伝ってくれる人、探してたよね?」


「うちの息子、遊ぶお金欲しいって言っててさ。

 どう?」


──話が、勝手に進んでいく。


そして、受話器を渡された。


「こ、こんばんは……」


『おう!

 明日、学校終わったら来てくれ!

 手伝いの範囲でいいからな!』


ガチャ。ツーツー。


……なんだったんだ、今の。


「直樹、明日から折り込みの手伝いしてきな。

 そのお金は全部あんたのだから。頑張りな」


「あ……うん。分かった」


なぜか──勢いのまま、“仕事”をやることになった。


────────────


次の日、学校でユージに話した。


「じゃあ再来週、行けるってことでいいの?」


「あ……どうだろ。

 金がいつもらえるか分かんない。

 明日まで待ってもらっていいか?」


「うん、もちろん!全然いいよ」


給食の時間、

しばらく遊べないことも二人に伝えた。


二人はあっさり送り出してくれた。


─────────


放課後、下駄箱へ向かう途中。


香織が待っていた。


「あ、直樹。一緒に帰ろ?」


──その眩しすぎる笑顔が、辛すぎる。


「ごめん。

 家の手伝いで、すぐ行かなきゃいけなくて……

 でも遊園地は絶対行く。

 今日は本当にごめん」


香織の顔を見られなかった………


新聞屋での仕事は、

ひたすら折り込みチラシを挟む作業。


一日二時間。

黙々と続けるだけ。


初日が終わり、おやじさんに聞いてみた。


「あのーお金って、いつもらえるんですか?」


おじさんは笑って言った。


「あはは!ちゃんと払うから安心しろ。

 ……でも再来週までにとは約束できねえな」


──詰んだ、と思った。


でも、すぐに考え直す。


一か月後、夏休みだよな…明日、相談して見るか……


我ながらナイス判断だ、と思った。


──────


翌日。


ユージに予定変更を頼むと、あっさり受け入れてくれた。


問題は女子組。


香織には、俺から言う。


給食も終わり、俺はすぐに席を立ち香織の元に行く。

この時の俺は周りが全く見えていかなかった。

香織の手を取って屋上の階段へ。


「ごめん!

 遊園地、一か月後にできないかな!?」


家の事情。

働いてること。

金が必要なこと。


全部、正直に話した。


香織は笑いながら「うん。大丈夫だよ」と言ってくれた。


「もう、必死な顔してるから、何事かと思った」


「あはは……なんかごめんな」


「ううん、全然平気だよ」


そんな香織の笑顔が天使に見えた。


─────────


教室に戻ると、全員が俺の方を向いていた。


タカシが叫ぶ。


「結果どうなりましたか!!」


「は?な、何……?」


周りは俺が香織に告白をしに行ったと思ったらしく、誤解だと説明してなんとか誤魔化して切り抜けた。


心臓、止まるかと思った。


───────────


それから毎日、

放課後は折り込みのバイト。


七月が近づき、

夏休みの匂いがしてきた頃、いきなりタカシが声をかけてきた。


「相談ある」


「なんだよ、改まって」

「ここで聞いていい話しなん?」


「できれば違う場所の方がいいかな…」


思いつくのは……屋上の階段だった。


────


「それで、何?」


「俺、好きな子ができた」


……お前もかよ。


でも、ちょっと嬉しかった。


三人とも、同じ場所に立ってる気がしたから。


タカシの相談に乗り、結果的に当たって砕けろ作戦で行く事になった。


──────────


数日後の朝。


前を歩くタカシが視界に入った。

そしてその隣に──女の子。


日高愛。

タカシの彼女だった。


そんなタカシを俺は声をかけず少し後ろをゆっくりと歩き学校に向かった。


─────────


そして終業式。


夏休みが始まる。


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