告白
朝の会が終わると、
タカシは一時的とはいえ時の人になっていた。
この日を境に、
クラスの女子とも普通に話すようになっていた。
そんなこんなで四時間目も終わり、給食の時間。
並んでいると、高木が俺の後ろに来て小さな声で言った。
「今日の朝、改めてタマキンに呼ばれて話してきたの。誤解が解けたみたいで……本当によかった」
そう言って向けてきた笑顔が、
やけに可愛く見えた。
……いや、前から可愛いんだけど。
「……ていうかさ」
俺は少しニヤけながら言う。
「普通に田中のこと“タマキン”って呼んでるけど、
それ大丈夫なの?」
高木は顔を少し赤くして、
「もう!」と言いながら俺の背中を軽く叩いた。
やっぱ可愛いなー。
席に戻ると、
その様子を見ていたユージがニヤニヤして聞いてきた。
「高木さんって、直樹のこと気にしてるよね?」
「はぁ!?
んなわけねーだろ!」
意味わかんねえ。
そう言い返すと、今度はタカシが調子に乗る。
「ワタシ、ミウラきゅんニ、タスケテモライマシタ」
「“ミウラきゅん”に!」
「なんでそこ強調すんだよ!てかカタコトやめろ!」
くだらないやり取りで誤魔化したけど──
正直、
気になってるのは向こうじゃなくて、こっちだった。
────────
それからしばらく、
平和な日が続いた。
そして迎えた。
4月13日。バレンタインデー。
嫌な予感はしていた。
というか、過去の記憶が蘇っていた。
(……絶対、何か起こる)
授業の合間、知らない女子からチョコを渡される。
気づけば机の上にもいくつか置かれていた。
ため息しか出ない。
その横で、一人だけテンションが爆発している奴がいた。
──タカシだ。
「うおおお!!きたーー!!」
うるせえなと思いながらも、「良かったじゃん」と言ってやる。
するとタカシが箱を見て固まった。
「おい……これ……まさかの手作りじゃね?」
燃え上がるタカシ。
そのまま勢いで箱を開けた。
中にはハート型のチョコ。
白い文字で──
LOVE リョウ
……俺はすぐ気づいた。
「タカシ……それ、うちの兄貴宛てだわ」
──入れる場所を間違えたらしい。
笑いたい。
でも笑えない。
タカシは無言で窓に向かい、チョコを投げようとした。
慌てて止めて奪い取る。
「くそぉぉ!!なんで直樹の兄貴なんだよ!!」
タカシは燃え尽きていた……
放課後。
ユージと帰ろうとしたとき、声がした。
「あ、三浦くん!」
振り向くと、高木さんと友達が立っていた。
少し距離を取られ、高木さんが小声で言う。
「……あの子、長谷くんのこと好きみたいなの。
今日、一緒に帰らせてあげられないかな?」
──正直、少し期待していた。
だから、ちょっとだけショックだった。
でも俺は笑って言った。
「分かりました。
ユージのために、この三浦直樹、一肌脱ぎます」
一悶着あったが俺はユージの背中を押す。
「女子に恥かかせんなよ。……ほら、行け」
二人が並んで帰っていく背中を、しばらく見ていた。
──さて、帰るか。
そう思った瞬間、横にぴょんと高木が来た。
「……一緒に帰ろ?」
帰り道は逆方向。
迷っていると──
「女子に恥かかせちゃダメでしょ?」
「……はは、そうっすね」
「はいはい、帰りますよ」
夕焼けの中、少し前を歩く高木が立ち止まる。
振り返った顔が、やけに綺麗に見えた。
「……はい、これ」
差し出されたのはチョコ。
「朝に渡そうと思ったんだけど……
三浦くん、女子に人気あるもんね」
「いやいや、ないから…」
そう返すと、少し安心したように笑った。
「……チョコ、ありがとう。嬉しいよ」
そのまま家まで送り、俺も帰った。
夜。
晩飯も終わり、風呂にも入り、冷蔵庫に閉まって置いたもらった箱を開けると──
手作りチョコと、小さな手紙。
手紙に取り開いた。
読んだ瞬間、
頭が真っ白になった。
─────
高木香織は
三浦直樹くんのことが好きです。
─────
言葉が出なかった。
「……マジか。
俺か。マジか……」
それしか考えられない。
その日は眠れるわけもなく、布団の中で天井を見ていた。
豆電球の光の向こう、仏壇の仏様が微かに笑っている気がした。




