罪には罪を
次の日の朝。
──予想はしていた。
そして、その予想はほぼ当たっていた。
そんなことが起こる少し前、
教室では昨日の出来事の話で盛り上がっていた。
「ユージ、マジで最高だったわ。
あんなパンチ持ってるなんてな。
食らったやつ可哀想すぎるだろ」
「タカシ……お前のパンチは痛くなさそうだったけどな」
「もっと腰入れろよ。
顔ばっか見てるから周り見えてないんだよ」
そんなふうに、
いつもの調子で笑い合っていた。
するとユージが、少し照れた顔で言った。
「ありがとう、三浦っち」
その呼び方に、
前から思っていたことを口にした。
「なあユージ。
まだお前、俺の事、信頼してねーの?」
「……え?」
「なんだよ、その三浦っちって、名前で呼べよ」
「ほら、早く。言えって」
少し間があって、
ユージは小さく言った。
「……直樹、ありがとう」
「ウェーイ」
ユージとハイタッチした。
「なんだよ!俺も混ぜろよなー!」
そこにタカシも無理やり混ざってくる
「お前は“三浦様”な」
結局、三人ハイタッチした。
そんなくだらないやり取りをしながら、朝から三人で笑っていた。
だが──
楽しい時間は長くは続かなかった。
朝の会が終わった直後、タマキンが一言だけ告げた。
「そこの三人。この後すぐ職員室に来い」
当然と言えば当然だった。
職員室へ向かう廊下で、俺は二人にだけ小さく言った。
「全部、俺のせいってことにしていいから」
「とになく黙っておけばいいからさ」
それだけ伝えて、タマキンの前に立った。
結果から言えば──
広辞苑で、何度も頭を殴られた。
痛かった。
でも、この程度で済むなら安いと思った。
俺は顔を上げたまま、ずっと睨み返していた。
しかし、そこにタカシが割って入った。
「話も聞かずに殴るのはおかしいだろ!」
続いてユージが、職員室中に響く声で叫んだ。
妹がいじめられていたこと。
話し合おうとしたこと。
先に手を出されたこと。
全部、正直に。
その瞬間──タマキンの手が止まった。
けれど、話はそれで終わらなかった。
結局、俺たちは土下座させられ、
三人まとめて坊主になった。
──────────
教室に戻ると、ヒソヒソ声だけが聞こえた。
でも、どうでもよかった。
もう何も感じなかった。
帰りの会。
終わるはずだった、その瞬間。
手を挙げたのは──
高木さんだった。
「先生、少しお時間よろしいでしょうか?」
俺は心の中で思った。
(頼むから、もう何も言うな)
けれど高木さんは、震える声で言った。
「三浦くんは……私を助けてくれました」
教室が静まり返った。
「それなのに、私は何もできなくて……
だから、せめて本当のことを言いたくて……」
涙をこぼしながら、そう言った。
次の瞬間、
クラス全員の視線が俺に集まった。
タマキンが聞く。
「……本当か?」
「あ……まあ……はい……」
なぜか敬語だった。
するとタカシが、ニヤニヤしながら口を開いた。
「悪いことしたら罰が必要なんですよね?先生」
そして──
「ぼ・う・ず!
ぼ・う・ず!」
教室の空気が一気に変わった。
──次の日の朝。
タマキンの頭は、見事にタマキンになっていた。




