スローモーション
次の日の昼。
ユージとこれからどうするかを話すため、
屋上へ向かう階段の踊り場に行こうとしていた。
その時、後ろからタカシの声がした。
「おいおい、俺は仲間外れかよ?」
さすがに巻き込むわけにはいかないと思って、
昨日あったことを全部話した。
するとタカシは、
少し黙ってから真剣な目で俺たちを見た。
「なあ……俺たち、親友だよな?」
「当たり前だろ。今さら何言ってんだよ」
「ならいい。
ただ──俺をハブるのはやめてくれ」
そこまで言われると、もう何も言えなかった。
「……分かった。でも無理はすんなよ」
「大丈夫だって。とりあえず俺も調べてみるわ」
そう言って、タカシはどこかへ行った。
放課後。
俺は下駄箱で高木さんを待っていた。
そして二人並んで話を聞いていた、高木さんは小さな声で話してくれた。
最近、後ろからスカートをめくられ怖い思いをしていると。
何より怖い思いをしていること。
それを聞いた瞬間、胸の奥がじわっと熱くなった。
守らなきゃいけない。
そう思った。
その時だった。
後ろに気配を感じて振り向くと、昨日の三人が立っていた。
軽く蹴られて、ふざけた笑い声が耳に残る。
俺は思わず叫んだ。
「やめろ!
用があるなら俺に来い!」
でも次の瞬間、
別の一人が高木さんの後ろに回り込んで、平然とスカートをめくった。
時間が止まった気がした………
高木さんはその場にしゃがみ込み、顔を真っ赤にして動けなくなった。
三人は笑いながら去っていく。
残ったのは、何もできなかった俺だけだった。
───────────
次の日。
タカシの話で、相手が六年だと分かった。
もう逃げるつもりはなかった。
昼休み、三人で決めた。学校の外で、終わらせる。
───────
放課後になり人通りの少ない畦道で、俺たちは三人と向かい合った。
俺はユージの背中を軽く押した。
「行け。言いたいこと言え」
ユージは震えながら前に出て、それでもちゃんと口にした。
「妹に近づくな、もうやめろ」
声は強くなかった。
でも、逃げてはいなかった。
その姿は、少しだけかっこよく見えた。
次の瞬間、俺は一人に向け走っていた。
一人に飛び蹴りを入れて、倒れたところを何度も殴った。
骨に当たる感触。
血の匂い。
荒い息。
それでも手は止まらなかった。
───────
タカシも必死だった。
だがタカシの喧嘩はまだ幼稚に思えた。
俺は後ろから相手を押さえつけて叫んだ。
「タカシ、やれ!」
渾身の一発が決まり相手は膝から崩れ落ちた。
───────
残るはユージだけ。
押し合いみたいな時間が続いていた。
だが次の瞬間──スローモーションに見えた。
相手のタックルと、ユージの全力の右拳がタイミング良く重なった。
乾いた音がして、
六年の体がゆっくり崩れた。
きれいな一撃だった。
───────────
それで終わった。
完全に、俺たちの勝ちだった。
三人でハイタッチして、少し笑った。
でも心の奥では、何かが静かに変わっていた気がする。
きっとこの日を境に、前と同じではいられなくなったんだと思う。




