表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生きるとは何か  作者: ルーツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/161

兆候

小学生になって、初めての夏休み。


相変わらず俺は、毎日のように和樹と遊んでいた。


特別な目的なんてない。

ただ

いつも一緒にいた。


そんなある日、和樹の提案でプールへ行くことになった。


自転車をこいで向かったのは、学校に併設された二十五メートルプール。


その日は人が多く、水面は子どもたちの声で揺れていた。


しばらく遊んでいると、

休憩のベルが鳴り、全員がプールサイドへ上がらされた。


そのとき、

プールの底に、

タブレット状の消毒剤のようなものが沈んでいるのに気づいた。


「休憩終わったら、あれ拾って投げ合いしようよ」


俺は軽い気持ちで、

和樹にそう言った。


休憩終了のベル。

水へ戻り、俺たちは少し離れて立ち、そのタブレットを投げ合って遊び始めた。


──何度目かのやり取りのあと。


和樹の投げたそれは、思ったより遠くへ飛び、俺は取り損ねた。


タブレットは、

ゆっくりと沈んでいく。


何気なく潜り、

底を探した──その瞬間。


頭を、踏まれた。


咄嗟に暴れたことで、大事には至らなかった。


けれど、心臓が跳ね上がるほど驚いた。


水面へ顔を出し、息を乱す。


……次の瞬間。


腹に、強い膝蹴りを入れられた。


何が起きたのか分からないまま、俺は逃げるように、

和樹のもとへ向かった。


「どうした?」


事情を話すと、

向こうにいた上級生たちが、こちらを睨んでいるのが見えた。


その意味は分からない。

けれど──

良くないことだけは、なんとなく伝わってきた。


それ以上、何も起きなかった。


俺たちはそのままプールを出て、家へ帰った。


─────


夏休みは、あっという間に終わった。


二学期。

始業式で、全校生徒が体育館に集められる。


視線を感じた。


「……ん?」


振り返ると、少し離れた場所から、見知らぬ男子が俺を睨んでいた。


理由は分からないまま、人の流れに押され、そのまま式は終わった。


教室に戻り、夏休みの宿題を提出する時間。


……もちろん、俺は何もやっていない。


ふと視線を向けると、和樹も同じだった。


目が合い、二人でニヤリと笑う。


その日は、なぜか何も起きず、静かに帰宅できた。


だが──


次の日。


朝の会のあと、杉浦に呼ばれ、

和樹と二人で職員室へ向かった。


そしてそのまま、生徒指導室に連れて行かれた。


中には、学年もばらばらの、見慣れない生徒たちが立たされていた。


数分後──

体育館で俺を睨んでいた男子も、そこへ入ってきた。


ここに集められたのは、

要するに問題児だった。


やがて現れたのは、剣道部顧問で生徒指導担当の教師。

通称、タコおやじ。


「バカは力でねじ伏せないと分からん!」


意味の分からない怒号とともに、

俺たちは全員、容赦なく殴られた。


その後、長時間の正座をさせられた。


反省したと判断された者から、順に解放されていく。


一人。

また一人。


──だが。

和樹と、俺だけは残こされた。


全員がいなくなったのを確認すると、タコおやじは椅子を持ってきて、俺たちの目の前に座った。


「……何でお前らだけ残ったか、分かるか?」


分からない。

本当に、分からなかった。


やがて、

低い声で言った。


「塚本たちを

 お前ら、いじめてるだろ」


……意味が分からなかった。


俺は、正直に答えた。


「そんなこと、してません」


だが教師は、親から連絡を受けていると言う。


骨折の原因。

他の二人の怪我。

不登校になった子ども。


それでも俺は、否定し続けた。


──そこから先は、

終わりの見えない説教だった。


痺れる足。

腫れた頬。

何時間もの正座。


解放された頃には、外はもう夕方だった。

震える足で、家へ帰る。

玄関を開けると、母がいた。


「どうしたの!?

 何があったの!」


駆け寄る母。

少し離れて様子を見る兄。


俺は、今日あったことを、すべて話した。


母はどう動くべきか、迷っているように見えた。


やがて静かに言った。


「……このことは、私に任せなさい」


そう言って、どこかへ電話をかけに行った。


兄は何も言わず、ただテレビを見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ