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記憶の欠片
私の名は三浦直樹。
いま私は、最愛の妻とともに、息子の結婚式に参列している。
目の前には、新郎新婦となった息子夫婦が、涙を浮かべながらも穏やかに微笑んでいる。
「お父さん、お母さん。本当に、いままで育ててくれてありがとう」
「お義父さん、義母さん。本日はありがとうございます」
その言葉を聞きながら、私は息子の晴れ舞台をこんなにも近くで感じられることの尊さを思い、ありふれたはずの幸せを、静かに噛みしめていた。
私たちもまた、二人に向けてやさしく微笑み、言葉を返す。
「これからは、二人で仲良く家庭を築いていってほしい。心からそう願っているよ」
人生のなかで、これほどまでに嬉しい日を迎えられるとは、かつての自分は想像もしていなかった。
あのときの大きな決断を、何も言わず支えてくれた妻には、感謝の念しかない。
何気ない日々こそが、かけがえのない幸福なのだと、いまの私は知っている。
そう感じられるのは、幼いころに重ねたさまざまな経験があったからなのかもしれない。
その記憶の欠片を、これから少しずつ書き綴っていこうと思う。




