異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~
異世界美少女エリス<リライトの魔法>
佐藤正樹は、しがないサラリーマンだった。毎日同じ時間に家を出て、満員電車に揺られ、上司に叱責されるだけの日々。それでも、どこか諦めていた。人生なんてそんなものだと。
そんな彼が、その日突然の出会いに巻き込まれた。
夜の街角、人気のない路地裏で、美しい女性が正樹の前に現れた。長い銀髪と不思議な瞳を持つ彼女は、異世界からやってきたエリスと名乗った。
「あなたに“リライトの魔法”を授けるわ。些細なことで使うだけなら問題ないけれど、使いすぎには注意してね」
彼女は意味深な笑みを浮かべ、そう告げると霧のように消えた。
正樹は最初、酔った夢でも見たのかと思った。だが、帰宅して冷蔵庫を開けた時、ふとしたきっかけで魔法を試してみた。
空になった牛乳パックを握りしめ「リライト」とつぶやくと、パックは新品同様になり、冷たい牛乳が溢れるほど詰まっていた。
「これ、本物だ!」
リライトの魔法。それは「一度使ったものを元通りにする能力」だった。
食べかけのパンを元の形に戻し、割れたコップを復元する。最初はそんな風に、ささやかな日常を便利にする使い方で満足していた。
しかし、ある日正樹は会社での嫌な出来事をきっかけに魔法を少し悪用してみようと思いつく。
彼の上司はことあるごとに彼を罵倒し、無理な仕事を押し付けてくる人物だった。その上司の机に置かれた書類を、正樹はこっそりリライトした。
内容を元に戻したわけではなく、意図的に改ざんしてミスを演出したのだ。結果、その上司は厳しい叱責を受けた。
正樹はその快感に目覚めた。
「ざまぁみろ」と心の中でつぶやき、次第に復讐の範囲を広げていった。かつて彼を見下し、婚約破棄した元婚約者。彼女を奪った友人。魔法を巧妙に駆使し、正樹は彼らに次々としっぺ返しを与えていった。
だが、魔法を使えば使うほど、正樹は奇妙な疲労感に襲われるようになった。そして気づけば、日常そのものが何かおかしくなっていった。
例えば、リライトで復元した物が微妙に変質するのだ。元の状態に戻したはずのペンが突然書けなくなり、復元した書類が意味不明な文字列になる。
「どうなってるんだ……」
混乱する正樹の前に、再びエリスが現れた。
「言ったでしょ。使いすぎには注意して、と」
彼女の瞳は冷たかった。
「リライトの魔法は物事を元に戻す力。でも、それはあくまで表面だけ。あなたが執着し、歪ませた現実には、取り返しがつかない代償があるのよ」
正樹が魔法を乱用した結果、彼の周囲の人間関係は完全に崩壊していた。上司は左遷され、元婚約者は社会的に孤立し、彼を裏切った友人は警察沙汰になるほど追い詰められていた。しかし、正樹の胸に残ったのは何とも言えない虚しさだけだった。
さらに最悪なことに、彼自身の存在すら魔法の影響を受けていた。リライトを繰り返したせいで、彼の人生そのものが薄っぺらく、どこか現実感を失い始めていたのだ。
「助けてくれ……もう魔法なんて使わないから……」
正樹の懇願に、エリスは短くため息をついた。
「それはもう遅いわね。でも一つだけ、救いの手段があるわ」
エリスが告げたのは、自らの人生をリセットし、最初からやり直す方法だった。
「あなたがこれまで犯した過ちは全て消える。でも同時に、あなたが築いたものも全て無に帰す。それでもいいなら、試してみるといいわ」
そう言い残し、エリスは再び消えた。
正樹は迷いに迷った。しかし、彼に選択肢は残されていなかった。すべてをリライトし、人生をやり直すことを決意する。
気がつくと、正樹は駅のホームに立っていた。出会いの日と同じ風景、同じ時間帯だった。しかし、エリスの姿はどこにもない。
ふと胸ポケットに手を伸ばすと、そこには一枚のメモが入っていた。
「今度はもっと良い人生を」
そう書かれていた。
正樹はその場に立ち尽くし、しばらく空を見上げた。
「これで良かったんだよな……」
彼は深く息を吸い込み、電車に乗り込んだ。
その顔には、一抹の希望が浮かんでいた。