58.おかえり
……私はゆっくりと目を開ける。
「かぁたまっ!」
「アンチ……!」
目覚めてすぐ、そこに愛する息子が居た。
私は脊髄反射で彼を抱きしめてしまう。
「ああ……アンチ……アンチ……! ごめんよ……心配かけてっ!」
……私が生きてここに居るってことは、夫が助けてくれたのだろう。
それには感謝しても仕切れない。でも、同時に息子、そして旦那への申し訳なさを覚えていた。
心配かけないと誓ったのに……。
「ううん、しんぱいなんてしてないですっ! ぼく……かぁたまも、とぉたまも、信じてましたのでっ!」
アンチの笑顔には、裏も表もなかった。彼は本当に私のことを、心から信じてくれていたのだ。帰ってくるって。そして、父であるアスベルが、絶対に私を連れて帰ってきてくれるって。
「そうか……そうかぁ……ありがとうなぁ……信じてくれて」
「うぃ!」
アンチを抱っこしていると心が温かくなっていく。
そして……。
「アスベルはどこだい?」
「とぉたまなら、そこです!」
ベッドに寝かされてる私の、足下を、アンチが指さす。
ベッドから顔を覗かせると、そこには、寝袋にくるまっているアスベルの姿があった。
「とぉたま頑張りました。ぱっ、といって、さっと帰ってきました。ものすごい早かったの! 帰ってきてからも、ずぅっと、かぁたまを看病してましたっ」
「…………」
……ああ、好きだ。アスベル。おまえ、ほんといいやつだよ。最高の旦那だよ。
今すぐ抱きしめて、キスをしたいくらいだ。いや、駄目だ。もう抑えきれない。
アンチを下ろして、私はベッドから降りる。
そして眠るアスベルの唇に、私は自分の唇を……重ねた。
「せ、セイコ!?」
アスベルがすぐさま目を覚ます。
「よかった! 目覚めた……わぷっ!」
私はもう一度キスをする。
もうなんというか、駄目だ。こいつを見てるだけで胸がドキドキするし。愛おしさがあふれてきて、まともに考えられない。ただ愛おしく、そして……好き。そんな感情ばかりが私の頭を支配する。
「……ただいま。アスベル。アンチ」
しばらくして、冷静になった後に、私は彼らに言った。
二人は笑顔で「「おかえり」」といってくれたのだった。




