43.生き残る
アイテムボックスに入れることで、花を摘み取ることには成功した。
これで地上へと運びこむことは可能だろう。
それといろいろ考え、そして私は、地上でも自生させる方法を思いついた。
この青い花を量産すれば、きっともっと人々は安全に暮らせるようになる。
……さて。
「どうしよう……これから」
とりあえず結界を作り、私はそこで動かないで居る。
花はアイテムボックスにすでに回収済み。
安全を確保し……次の手を考える。
「ま、やることは一つっきゃないね」
私はアイテムボックスから通信機を取り出す。
こういう場面でこそ、この魔道具が光るのだ。
「アスベル。聞こえるかい?」
私が通信機を使ってアスベルに連絡をするのに、躊躇はなかった。
『セイコ!? 何かあったのですね?!』
察しが良すぎるよっ……ったく。
「アスベル。落ち着いて聞いておくれ。遭難しちまった」
『…………』
「アスベル?」
通信機の向こうで、彼が息を飲むのがわかった。
いつものアスベルなら、慌てふためいているだろう。けれど……
『わかりました。すぐに、捜索部隊を結成します』
思ったよりも彼は冷静だった。
「なんだい、ずいぶん冷静だね」
『ええ。貴女を見つけ出すためには、焦りは禁物ですから』
「…………」
はは、なんだ。成長してるじゃないかい。
私は、うれしいよ。
「ガンメイジたちにも連絡して、一端下山させる。彼らと合流し、ここに来てくれ。結界もあるから魔物に襲われることはないし」
『わかりました』
「それと……いや、無理か」
『? どうしました?』
「いや、アンチにはこのこと黙っててっていおうと思ったんだが。あの子は、さといからね。無理か」
『……そうですね』
きっとあの子は私に何かあったとすぐに気づいてるだろう。
アスベルでさえ、瞬時に悟ったんだから。
「アンチに代わっておくれ」
ならばせめて、大丈夫と励ましてあげようと思った。
でも……。
『セイコ。それは、不要です』
「不要?」
『ええ。そんな遺言を残すみたいなのは、辞めてください。きちんと生きて、帰って、ただいまって……それだけをあの子に言ってあげてください』
「!」
……そうだ。そうだよな。
私はどこか、もう帰れないって、心の中で諦めてたのかもしれない。
アスベルはそんな私の弱い部分を見抜いていたのだろう。
『大丈夫です。俺に任せてください! 必ず……あなたを見つけ出す!』
「…………」
……ああ、好きだ。
たまらなく、おまえが愛おしいよ。アスベル……。
「……悪い。ちょっと弱気になってたかも。でも、もう弱音は吐かない。絶対に生き残る。だから、おまえは私を絶対に見つけてくれ」
『もちろんです!』




