42.魔物食い
私らは魔物を倒しながら不死山を昇っていく。
で、だ。
私らは野営することになった。
麓まではソリでこれたが、今は徒歩、しかも斜面を登っているのだ。
どうしても進みは遅くなってしまう。
ビバークすることになるが、私の結界のおかげで、皆は凍死の心配はない。
凍死の心配は……な。
「うーん……どうすっかね」
「どうしたのじゃ、聖母よ」
テントの設営を終えたドワーフ職人、ガンメイジが尋ねてきた。
「いや、まあ。肉がさ……足りなくて」
「肉……。食材は十分に持ってきて……あー……」
ガンメイジも気づいたようだ。
ここへ来る途中、里のドワーフたちに食料を分けてきたのだ。
結果、十二分にもってきた食材達の在庫が底をつきかけている。
特に、肉だ。
ドワーフは(アトーフェもだが)肉が大好物。
消費量は他の食材よりも多い。
「肉抜きのトン汁でよいのではないかの……?」
「それじゃトン汁とはいわんだろうが。それに、あいつらは今日いっぱい頑張ったしよ。うめーもんくわせてやりたい」
野菜だけの汁物がだめってんじゃないけどさ。
するとガンメイジが微笑む。
「ありがとう、聖母よ。やはり、あなたは優しいひとだ。我らに慈悲をかけてくれる」
「慈悲だぁ? ばっかおまえ。友達や仲間にかけるのは、慈悲じゃねえよ」
私は単に頑張って身内に、うまいもん食わせたい。そんだけなのだ。
「肉……肉か……。大昔、魔食いをしていた種族がいたとは聞いたことがあるが……」
「ん? 魔食い……? なんだよ、魔食いって」
「魔物を食う行為のことじゃ」
「! なんだそりゃ、書物に書いてなかった……あー……そか。書くまでもなく、やばいってわかってたからか」
「そうじゃ」
魔物は瘴気から生まれる。瘴気は人体に有害な致死性毒ガスだ。
そんなのたんまり入ってる魔物を食べるなんて、正気じゃない。
「しかし魔食いなんて、できるもんかね」
「普通は無理じゃな。即死じゃ。が。ドワーフの戦士のなかには、魔食いをしていた部族がいるときく」
そんなやべえ、命知らずなことしてたのか……。
いや、でも口伝でのこってるってことは……魔食いを成功させていたやつらがいたってことか。
「ふむ……」
この世界では魔物は瘴気の塊だとおもっていた。
でも、ネット小説やファンタジー漫画では、魔物を食ってる描写があった。
もし、魔物=瘴気ではなく、本当にモンスターだとしたら?
たとえば、瘴気で凶暴化した、獣だとしたら……?
「毒素を取り除けば、もしかして食えるんじゃないか……?」
ドワーフ戦士たちが食えていたのは、魔物から毒を抜く調理方法を知っていたからとか……?
「……やってみる価値は、あるか。いやでも、さすがにそれを人に振る舞えないだろ」
「大丈夫じゃろ。回復薬は腐るほど余ってるのじゃし」
いやでも、ううん。
なにはともあれ、やってみるか。
まず、自分で試してみよう。
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