32.生き様
私らは不死山へ向かって出発した。
アトーフェの引くそりは、まあ、早いこと早いこと。
びゅんびゅんと周りの風景が後ろへとすっ飛んでいく。
ガンメイジに手綱をまかせ、私は地図とコンパスを手に道案内をする。
「姐さんよ」
ガンメイジのいとこ(らしい)、ジョッパリーが言う。
「どうした?」
「この近くに村があるんだが、そこに寄ってってはくれんですかいの?」
「そらまた……あー……なるほど」
考えてみりゃ、この国にはいくつもの、ドワーフの集落があってもおかしくはない。
そいつらだって、この寒さに震えているに違いない。
『聖母よ。我は不死山を一直線に目指すことを提案するぞ。原因を取り除けば、その分、早くドワーフどもも楽になるだろうからな』
アトーフェの意見はもっともだね。
よし。
「ジョッパリー。村に案内しな」
「ありがてえ!」
ジョッパリーがガンメイジに村の場所を言う。
ガンメイジはアトーフェをカーブさせる。
たっ……! とアトーフェが走る。
まっすぐに、ぶれることなく。あまりに不満をあらわにしないことから、かえって、こいつが不満なのが伝わってきた。
「不服か?」
『まあな。聖母はもっとリアリストだと思っていたが』
「私をあんたの勝手な尺度で決めつけるな。私のやりたいことを決めるのは、私さ」
アトーフェに言う。
「あんたの意見は正しかったよ。でも、私らが不死山向かっている間に、凍え死んだ奴らはどうすりゃいいんだい?」
不死山までは結構距離があるのだ。
それに、大精霊がすんなり私の言うことを聞いてくれるとも限らない。
「私は目の前に零れ落ちそうな命があったら、助ける。全部」
『全部?』
「ああ、全部。それが、私の生き様だよ」
アトーフェは少し黙りこくっていたが、やがて、ククク……と笑う。
『なんという強欲。だが、我はそんなおまえが嫌いじゃない。いや、むしろ愛してるといってもいい。やはりこのアトーフェこそ、おまえの男にふさわしいとは思わぬか?』
「走りながら口説いてんじゃないよ。いいからさっさと運ぶんだよ」
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