24.豚汁ポーション
ドワーフ国、港町にて。
モンスターと戦ってるんだが……
「うぉー! 全然痛くねえ!」
海賊団員が驚きの声を上げる。
「見てくれ姐さん! ほら噛まれてもぜんっぜん痛くねーんだわまじで!」
敵の牙が腕に突き刺さることはない。
団員の、というか、私の豚汁を食った連中の体は薄い光の膜で覆われていた。
その光の膜が敵の攻撃を防いでいるのは明白。
……まさか。
「【鑑定】!」
わからない事態におびえたり、思考停止するのは愚か者のすることだ。
私には召喚聖女の特典たる、鑑定スキルがある。
豚汁食った連中の光の膜を調べまくり、そして理解する。
「あの光の膜、結界だ。聖女の結界が付与されてる……」
信じられん。
結界とは、聖女が神にいのるか、私の場合、複数の薬を混ぜ合わせることで、その場を守護するドーム状のものだと思っていた。
「まさか、結界をあんなふうに、膜状にして他者に付与できるなんてね」
『いや、通常は不可能だぞ』
アトーフェが説明する。
『結界とは聖母の言う通り、その場を守護するドーム型のものが基本だ。が、大昔の結界師は、その形を自在に変えたという』
この世界で長く生きてるからか、アトーフェは私の知らないものを知ってるようだ。
「結界師ってのは?」
『聖女以外の、結界の使い手たちのことだ。浄化の力は持ってない、結界術に特化した連中だな』
「そんな奴らいたのかい……資料に残ってなかったよ?」
『仕方ない。彼らは聖女がいれば不要な存在だからな』
ああ、なるほど。
結界師は結界しか使えない。一方、聖女はそこに加えて浄化と治癒も行える。
結界師よりも聖女の方が性能が上。
加えて、結界師たちが何か功績を残したとしても、聖女の手柄になってしまうんだろう。
「不憫な連中だね」
『まぁな。だが結界の腕は一流だった。彼らの技の中に、結界を流体状にして、体に纏わせる技があった。お前が使ったのはそれだ』
まあ、何が起きてるのかについては大まかに理解した。
「どうして、こんなことが起きたのだい。私はただ豚汁を作っただけだよ? それに……」
再び戦闘員たちに目を向ける。
「うぉー! すげえ! なんかパワーみなぎるー!」
ボカーン!
彼らが軽くモンスターをはたくと、敵は木の葉のように吹っ飛んでいくのだ。
「なんであんな怪力を発揮してる?」
『まあ簡単に言えば、あの豚汁、結界効果とバフ効果が付与されたポーション扱いになってるんだよ』
「はぁあ!? ぽ、ポーションぅ!? 豚汁が!?」
『うむ。薬草(野菜)、聖水(味噌汁)を組み合わせてできた飲み物。ほら、ポーションではないか』
なんだそりゃ!
『味噌を作るのにおまえは結界を使ったのだろう? その際に、味噌に聖女の魔力が込められたのだ。結果、味噌を経由して聖女の魔力が彼らに送り込まれた。また、豚汁がポーションであると解釈すると、発動するだろう?』
!
そ、そうか。薬の聖女のスキル、性能向上。
私の作った薬の性能が、超向上する。
『結果、飲むと味方に結界とバフを付与する、豚汁が完成したと言うことだ』
はぁ〜……なるほど?
まあ、なんとなく、原理はわかった。
「まさか豚汁がポーションになるなんてね……」
『しかも、結界効果を付与したポーションなんて前代未聞だ。おまえは、ポーションの歴史を変えてしまったのだぞ』
……変えてしまったと言われてもね。
変えようと思ってやったわけじゃないし。
それに偶然の幸運ってあんま好きじゃないんだよね。神に頼ってる感じがしてね。
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