05.継母となる決意
ここから新展開です!
私の名前は犀川 聖子。
3■歳。
ある日異世界に聖女として召喚される。
色々あって召喚した国を追放される。
さらに色々あって隣国のマデューカス帝国にきた。
皇帝の息子、アンチ(3歳)の病気を、私の作ったポーションで治療。
そしたら、アンチに好かれてしまい、そして皇帝からはこの子の継母になってほしいと言われた。
皇子の継母……ってことは、皇帝の妻。
つまりは、皇后になってほしいってことだ。
私が……? 皇后!?
「いやいやいや……」
場所は、マデューカス帝国帝都、カーター。
帝城の、お客様用の寝所だ。
この城も、そしてこの部屋も質素な造りをしてる。
元いたゲータ・ニィガ王国とは、大違いだ。
それでも、私のベッドはフカフカしている。
横になりながら、私はこれからのことを考える。
「皇后………私が? 荷が重すぎる……」
アンチ皇子の、教育係とかなら、まあ、わからない話でもない。
けど継母て、皇后て。
私に務まる話とは、到底思えない。
私と一緒に召喚された、聖高原 ブリコなら、この話をよく考えずほいほいっと受けていただろう。
でも……私には、気軽にハイと返事できなかった。
「そもそも私は異世界人……。皇族でもない。そんなやつが、突然皇后になんてなったら、国が荒れてしまうだろうし。元いた国を追放された悪い噂だって今頃広まってるだろうし」
うん、どう考えても、私が皇后やっていい人ではない。
面倒だからって気持ちも、ないって言ったら嘘になるけども。
「やっぱり、明日アスベルに、ごめんなさいしよう」
アンチも、私みたいなよそ者より、ちゃんとした、まともな女に育ててもらったほうが、教育に良いだろう。
うん。
さて……寝る前にお花摘みにいこう。
私はベッドから起き上がり、部屋を出る。
真っ暗な廊下を歩いていると……。
「ひっぐ……ぐす……うぅ……」
「ん? 泣き声……?」
どこからか、泣き声が聞こえてきたじゃないか。
私は気になって、声のする方へと向かう。
「これは、聖女様」
部屋の前には、槍を持った兵士が立っていた。
なんだこいつ。
「おう、お疲れさん。あんたこんな夜中になにやってんの?」
「私はアンチ皇子の、部屋の護衛をしております」
「ほー……」
なるほど、ここはアンチの部屋なのか。
なるほどなるほど……。
「おい」
「え?」
「どけ」
「え? ちょ、ちょっと! 聖女様!? 何をなさるおつもりでっ?」
兵士が慌てて私を止めようとする。
「アンチの部屋に入るんだよ」
「い、いけません! 皇子の部屋ですぞ?」
「あ? だからなんだ。聞こえないのか、あんた……? 中で、子供が泣いてるンだぞ? どうしたのって心配にならないのか?」
「そ、それは……し、しかし……私はアンチ様の護衛でして、ここを離れるわけには……」
「じゃあ私が様子を見てくる。あんたはここに居ろ。いいな?」
私は兵士を押しのけて、部屋に入る。
中は客室と同じような……殺風景な部屋だ。
これが……子供部屋?
子供の部屋っていったら、もっとおもちゃとかさ、子供が楽しくなるような部屋であるべきなんじゃないのか……?
というか。
こんな子供からしたら、広い部屋で、この子は……一人で寝てたのか?
……なんだか、イライラしてきた。
「アンチ」
「! か、かぁたま……」
私はアンチの側へ行く。
ぐすぐす……と彼は泣いていた。
私はベッドのそばまでいき、しゃがみこんで、目を合わせる。
……父親に似て、きれいな銀髪をしてる。
けど、髪質はパサパサだし、頬もこけてる。
栄養が足りてない証拠だ。……可哀想に。
「何があったんだい?」
「………………」
もじもじして、何も言ってこない。
あん? どうした……って、あ。
私はベッドを見て、気づいた。
シーツの上には、大きな、世界地図が広がっていたからだ。
「おねしょしちゃったんだね?」
「!」
ぶるぶるぶる……とアンチが、異常なまでに怯えた表情で、頭を手で押さえる。
「お、おいどうした……?」
「やぁ……ぶたないでえ……」
っ!
ぶつ……だと?
まさか……。アスベルが?
いや、そんなやつには見えなかった。
ってことは……浮気して逃げた前妻か?
こんな可愛い子を、殴りやがったのか? おねしょしたから……?
あ゛~~~~~~~~~。
だめだ。イライラしてきた。
「アンチ」
「ひぅ! ぶたないでぇ……」
「ぶたないよ」
「ふぇ……?」
私はアンチを、ひょいっと抱き上げる。 そして、背中をポンポンと叩いてあげた。
まずは、悲しい気持ちを、和らげないとな。
「怒らないよ」
「あ……でも、かぁたま……ぼく……おねしょ……きたない……」
ズボンが、濡れてた。
まあでも……私は気にしない。
「大丈夫。汚くない。あんたは汚くない」
「でもぉ……かぁたまが……」
……おねしょの処理も、してやらなかったのか。
汚いから無理~~、みたいな?
あ~………………だめだ。
もーーーーーーーがまんならん。
「アンチ。母様は私だ」
「ふぇ……?」
「今日からあんたの母様は、私がやるって言ったんだ。で、その私があんたを、汚くないって言ったんだ。だから……汚くない。大丈夫」
三歳児に、どこまで伝わってるかわからない。
でも……私は、この子をほっとけなかった。
同情、って言われたらそれまでだ。
そうだよ、同情だよ。可哀想って思ったんだ。
この子はまだ三歳。
母親に甘えたい時期。だというのに、母親に捨てられ、しかも酷い扱いを受けてきた。
これで、可哀想って思わない方がどうかしてる。
私は……この子をほっとけなくなった。
「アンチ。母様は今日から、ここであんたと一緒に寝てやる」
「! いいのぉ~?」
「おう。けど、トイレ行きたくなったら、すーぐ母様を起こしな。一緒にトイレ行ってやるからね?」
「いいのぉ~?」
「おう。だから……もう泣くな。な?」
アンチがフニャぁ……と笑うと、こくんとうなずいた。
そして、言う。
「かぁたま……ありが、ろぉ~……♡」
ありがとう、か。
久しく、言われてなかったな……。
元いた国じゃ、私が何やっても、やってあたりまえ。
感謝なんてまともにしてくれたのは、ユーノ大臣くらいだ。
……ありがとう、か。
その言葉が、胸にしみる。
「どういたしましてだ、アンチ」
この先、どのくらい、この子の側にいられるかわからない。
いつ、民衆から反対がでて、私が皇后から下ろされるかわからない。
でも……できる限り、この子の側にいてあげようって、そう思った。
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