16.上陸
防寒対策をして、いよいよカイ・パゴスに上陸することになった……んだけど。
「こりゃ……参ったね」
「セイコ! 海に氷が浮かんでます! なんですかあれはっ?」
甲板にて。
アスベルが海を指しながら言う。
「流氷だよ。見ての通り氷が海の上浮いてんだ」
「なんと……あれでは、船を港に着けられませんね」
砕氷船、っていうものが地球にはあった。
流氷を割って進む船のことだ。
しかしこっちの世界にはそんなもん存在しない。
私らも、氷を割るような装備は持ってきていない。
そもそも国の状況を知ったのは出港後だったからな。
ちっ……しくったね……
「母さん」
「ん? どうしたんだい、ジョニィ?」
海賊団船長のジョニィが、自分の胸をドンッ! とたたく。
……なるほど。
「いけるんだね?」
「ああ、オレにやらせてくれ」
この子の目を見れば……わかる。
ステータスを見ずともね。
「キンサイ。船の操作をジョニィにやらせろ」
「!」
キンサイは目をむく。
だが……私を見てうなずいた。
「任せたで、ジョニィ」
「……いいのか? オレにやらせて」
「ああ。あんたの船乗りとしての腕が確かなのは、ちゃんと見たからな。それに……皇后はんがいけるって言うるからな」
ぐっ、とキンサイが拳を前に突き出す。
「頼んだで」
ジョニィはニッ、とうれしそうに笑った後、拳を突き出した。
「母さん、皆を念のため船室に入れておいてくれ」
「わかったよ。聞いたね……! おまえたち! ジョニィに船を任せ、私らは中に入って待機だ!」
アスベルたちがうなずき、船室に入っていく。
「船長、おれらは手伝いますぜ!」
ジョニィの部下、サブたちジョリーロジャー海賊団団員たちがうなずく。
「よし! 手伝えおまえら! 送り届けるぞ……母さんを、あの国に!」
「「「応!」」」
ジョニィなら絶対に、船を無事に港に到着させるだろう。
私達は寝室に戻る。
皆が外の様子を気になるのか、窓にへばりついていた。
私は椅子に座って到着を待つ。
「かぁたま……だいじょうぶかな?」
膝の上で、アンチが不安げに言う。
「大丈夫さ。あいつはすごい船乗りなんだから」
「うー……わかりました! かぁたまを……ぼくもしんじますっ!」
素直な息子の頭をなでる。
しばらく、私達は船室で待つ。
途中、船が結構大きく揺れることがあった。
だが、それでも……私は椅子から立ち上がらない。
私の役割は、信じて待つこと。
そしてその姿を見せ、仲間たちを安心させること。
まあ私が別にこいつらのリーダーってわけじゃないが。
そもそもそれやるのはアスベルの役割だろうが。まあ……。
ほどなくして。
ばんっ! と船室の扉が開く。
「母さんっ!」
ジョニィの顔を見れば、どうなったかなんて聞かずとも結果がわかった。
アンチを下ろして、私は立ち上がる。
そしてジョニィを正面からハグした。
「でかしたよ」
「へへっ! ありがとう、母さんっ!」
後ろにいる船員たちにも、私は言う。
「よくやったね、あんたたち! 礼を言うよ!」
うれしそうに笑う船員たち。
キンサイが近づいてきて、ジョニィにぐっ、と親指を立てた。
「グッジョブや」
……さて。
私は皆を見渡す。
「船が着いたよ! さぁ……上陸準備だ!」
「「「応!」」」
こうして、私達はやっとドワーフ国カイ・パゴスに到着したのだった。
はてさて、何が待ち受けてることやら。
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