13.即席麺を作り驚かれる
私達を乗せた船は、順調にドワーフ国カイ・パゴスへと進んでいった。
出発からしばらくたったある日のこと。
「へくちゅんっ」
夜。
船の食堂にて。
「うぅ~……ちゃむーい……」
私の腕の中で、愛しい息子がぷるぷると震えていた。
「アンチ、寒いか?」
「うん……ちゃむいです……どうしてかなぁ?」
「それは、ドワーフ国カイ・パゴスが近づいているからだな」
「うー? どわーふこくって、ちゃむいの?」
「ああ、寒いとこなんだ」
私は息子をきゅーっと抱きしめる。
アンチは「かぁたまあったかくって、良い匂い~♡ 好きぃ~♡」と可愛い声を張り上げる。そのままほっぺたにキスをして、説明する。
「ドワーフ国カイ・パゴス、別名、氷雪の国と呼ばれててな。一年中雪が降ってるんだよ」
「どうして~?」
「あの国には氷の大精霊が住んでいるんだ。その影響だな」
「ちぇーれーさんの……なるほど……さむいさむい国がちかいから、さむいさむいなんですねっ!」
「お~……アンチぃ~……おまえは……本当に頭が良いなぁ! 末は博士か大臣だな!」
「うー! でも、しょーらいは、かぁたまと結婚したいです!」
アンチ……うれしいこと言ってくれる……。
可愛い……好き……愛……。
「セイコ! 結婚するですか、俺以外のやつとぉお!」
バカ皇帝が声を張り上げる。
ったく、バカな夫だ。
子供の可愛い冗談を真に受けやがって……ったく……。
おまえのことを捨てるわけ無いだろうが。
そんな私達のやりとりを、クルーたちは温かい目で見てくる。
キンサイが窓の外を見て言う。
「うわ、雪降ってきたやん。寒くて当たり前やな」
食堂の窓から外を見やる。
ちらほらと雪が降っていた。カイ・パゴスの近くまで来てるんだろうな。
「へくちっ。うぅ~……さむいぃ……」
アスベルがキンサイを見て言う。
「何か暖かい食べ物って作れないのか?」
「あほかいな。無理にきまってんやろ。船の上は火気厳禁、や」
「それはまたどうして?」
キンサイが深々とため息をつく。
「船の上で火事になんてなってみ? 四方海に囲まれて、逃げようにも逃げられへんやん」
「なるほど……だから、船旅に火を使った料理が出てこなかったんだな」
「せやで。もうちょっとでカイ・パゴスにつくから、我慢してな、坊」
我慢だって……?
アンチに我慢なんてさせるものか。この子はずっと、今まで我慢してきたんだ。
「アンチよ。母様が美味しくて暖かい物を、食べさせてやろう」
「あったかいものぉ~!」
数があまりないから、もうちょっととっておこうと思ったんだが。
アンチが寒がってるからな。暖かい食べ物を用意してしんぜよう。
「皇后はん、まさか火ぃ使わんよな……?」
「当たり前だろうが」
そこの夫と違って、私はきちんと、船の上は火気厳禁だってわかってる。
私はアイテムボックスからビーカーを取り出す。
両方に水が入っている。
片方の水に、私が創薬スキルを使用する。
「セイコ、この真っ白な粉はなんですか?」
私が魔力を込めて作り上げた白い粉を見て、アスベルが言う。
「魔法の粉だよ。これと水を合わせると……」
じゅぉお!
ブクブクブク……!
「うぉおお! ふ、沸騰しだした!?」
「なんやてええええええええええええええ!?」
アスベルとキンサイが驚きの声を張り上げる。
息子もビーカーの中で泡立っている、ビーカーを見て目を丸くしてる。
「かぁたま! おゆです! 火を使ってないのに! どうやってるのですかぁ!」
我が息子は知的好奇心も旺盛なのか……。
これは将来が楽しみだ。絶対に偉い学者とかになりそうだ。いや、なるね。
「化学反応を使ってるのだよ」
「かがく、はんのー?」
「ああ。水と消石灰。この二つを混ぜることで、熱を発生させるんだ」
私はあらゆる化学物質を生み出すことが出来る。
それを使い、発火剤を作り、こうしてお湯を作った次第。
「しゅごいです! かぁたま!」
「がははは! そうかぁ! 母様はすごいか!」
「うー!」
ああ、アンチに褒められるとうれしいぜ……。
「だが、これだけで驚かれてちゃ困るんだな」
「! まだなにか、あるのですかっ!?」
「ああ。ふふ、暖かくて美味しい物……食べさせてやるぞ」
私はまず、アイテムボックスからコップを取り出す。
「こ、皇后はん! なんやこれ!? コップの中に……なんか入ってますな! 金になるやつか?!」
こいつすぐ金に結びつけようとするな……。
「これは、美味しいものの元だ。そして、今作ったばかりのお湯を、注ぐ」
ちなみに本来、発火剤から作ったお湯は飲めない。
が、私の消石灰は、人体に無害な特別なものだ。だから、ただ水にこの薬を入れるだけで、飲めるお湯となるのである。
「! わ、いーにおーい!」
「!? なんや……なんやこれ!? なんやこれぇえええええええええ!?」
カップの中にあるのは、縮れた麺と、そして……美味そうな醤油ベーススープ。
「ラーメンだ」
「ら、ラーメン!? なんですかいそれ!? 金になるやつかい!?」
ほんとこいつ金に結びつけるよな、すべてを……。
「アンチ。美味しいやつできたぞ。ふーふーしてやるからな」
「あい!」
私は今できたばかりの即席麺を、ふうふうしてやる。
そして、アンチに食わせる。
「~~~~~~~~!?」
「どうだ?」
「うみゃぁ~~~~~~~~~~~~~~~い!」
っしゃぁ! 美味い来ました!
頑張って作ったかいがあったってもんだ!
「これ、しゅごくおいしいです! ちゅるって、おいしい! こんなのはじめてぇ!」
「うぉおお! わ、ワイにも一口ぃいいいいいい!」
これはアンチに作ってやった即席麺なのだ。
キンサイに譲りたくなかった。全部アンチのだってな。
でも……。
「あい! きんさい、どーじょ!」
やばい……息子が慈愛の神すぎる。
人に食べ物を分けてやるなんて。末は愛の神かな……。
ちゅる、とキンサイが食べる。そして……涙を流しながら叫ぶ。
「うますぎるうぅううううううううううううううううううううううう!」
まあ、そうだよな。
こっちの世界に、ラーメンなんてないものな。
「なんやこれ!? あったかいし、うまいし、こんな食感の食いもん、初めてたべたで!? なんやこれ!?」
「だからいったろ、ラーメンだ。こっちにもヌードルってあるだろ?」
小麦粉を水でぬらして、丸めて伸ばして作ったやつだ。
「あったけど、そもそもぱさぱさで食えたもんやなかったで! でもこれは違う! もっちもちで! 小麦とちゃうのか!?」
「小麦だよ。ただ、品種改良したやつ特別なやつだ」
こっちの世界にきてまず思ったのが、飯がまずいこと。
現代令和日本から来た私基準では、どの飯も、すっげえまずいのだ。
そこで私はこっちに来てすぐに、食物の品種改良をはじめた。
私の力があれば肥料なんて作り放題だしな。
ラーメンに合う小麦を作るのに、結構苦労した。
が、なんとか完成した。
そしてその小麦からラーメンをつくり、さらに乾麺を開発。
こうして、今初お披露目してるってわけだ。
「火ぃ使わずお湯作ってる時点で度肝ぬかれたのに、まさか即席で作る麺類まで……。ほんま、皇后はんはすごいわ! あんたの手は黄金を生み出す手ぇやでぇ!」
大げさなやつだ。
が、まあこれらを売れば瞬く間に大金がゲットできるだろうから、あながち、誇張表現でも無い。
「ワイは……しあわせものや! 黄金の手を持つ御方と、懇意になれたんやからなぁ!」
「まだ販売権をやるとは言ってないが?」
「おねがいしますぅうう! うちに流通販売させてくださいぃいいいいいいいいいいい!」
「ま、考えておいてやるよ」
「うぉっしゃぁああああああああああああああああああ!」
まあ、金儲けなんて二の次だ。
アンチが美味そうに、ラーメンを食ってる。それが一番。
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