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10.VS海魔蛇



 海賊のジョニィ曰く、この近くに海魔蛇リヴァイアサンがいるという。

 その話を信じないキンサイとともに、先に行って様子を見に行くことにした。


 夫アスベルの操るグリフォンにのって、私達は南へと向かう。

 しばらく進んで行くも……。


「ほら! 海魔蛇リヴァイアサンなんておらんやん! あの海賊がほら吹いてただけやんな!」


 翼人キンサイが、憤慨しながら言う。


「まあ待て。キンサイ。ほら吹きかどうか決めるのはまだ早いだろう」

「せやけどなあ、皇后はん。何もおらんやん。おだやかーな海が広がってるで」


 そのときだった。


「ぐああ! がぁー!」


 突如として、グリフォンのグリポンが声を上げる。

 ぐんっ! と勝手にグリポンがその場で高速旋回。


「どうしたアスベル?」

「グリポンが勝手に動いて……って、あれは!?」


 ドッパァアアアアアアアアアアアアアン!


 海の中から、巨大な尻尾が現れた。

 尻尾はさっきまで私達の居た場所へと伸びるも、空を切る。


 明らかに海上にいる敵を捕まえる動きだった。


「ナイスだ、グリポン。大手柄だ」

「ぐわぐわ! が~!」


 私が褒めても、グリポンは警戒を解こうとしない。

 それもそのはず、海中から、【それ】が姿を現したからだ。


 外見はウナギのように、胴体の長い巨大魚だ。

 ただし顔はどことなく、は虫類っぽい感じがする。


 巨大な海の竜……海魔蛇リヴァイアサンが、姿を現したのだ。


「ま、まじか!? ほんまに海魔蛇リヴァイアサンがおった……信じられへん、こないとこに絶対現れないはずなのに……」


 呆然とするキンサイ。

 一方、海魔蛇リヴァイアサンは尻尾を触手のように素早く伸ばし、きんさいを捕まえようとする。


「アスベル! 私が手綱を握る!」

「わかりました! 任せます!」


 アスベルは私の言いたいことを即座に理解したのか、グリポンの上で立ち、剣を引き抜く。

 後ろを振り返ると、彼が剣を上段に構えて、すさまじい勢いで振るった。


「ゼヤァアアアアアアアアアアアア!」

 

 魔力のこもった強烈な一撃。

 それは飛翔しながら海魔蛇リヴァイアサンの尾を切断する。


 ずばんっ!


海魔蛇リヴァイアサンのぶっとい尻尾をぶった切った!? すごすぎるで!」

「さっさと距離をとれ! キンサイ!」

「は、はひぃいいい!」


 キンサイが情けない声を上げながらこちらにやってくる。


「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 海魔蛇リヴァイアサンはアスベルから攻撃を受けて激高し、こちらに怒りの視線を向けてくる。

 こうなっては逃げ切るのは難しそうだ。


「俺があいつをぶつ切りにしてやります!」

「待て、アスベル。無駄なことをするな。見ろ!」


 しゅうぅう……。

 海魔蛇リヴァイアサンの切断面から湯気が出ている。


 そこから、もこ、もこ……と筋肉が、うろこが再生していく。


海魔蛇リヴァイアサンは再生スキル持ちだ」


 私の目は敵の能力を見抜く特別製だ。

 海魔蛇リヴァイアサンのやろうが、再生を持ってることはわかっている。


「あかんで皇帝はん! あいつあないダメージ屁とも思ってへんわ! 一撃で葬り去らないと!」

「わかってる。しかし……足場が不安定で、踏ん張れない状況では……全力が出せない!」



 アスベルは聖女の加護を受けて超パワーを手にしてる。

 だが、力があっても、この不安定な状況では、パワーを十全に発揮できないってことだ。


「じゃあどないすんねん!」

「アスベル! キンサイ! ブレスが来るぞ!」


 前動作を鑑定したから、海魔蛇リヴァイアサンがブレスを放とうとしていることが事前にわかった。

 アスベルはグリポンにまたがると、手綱を持ち、回避行動を取る。


「ギシャア……!」


 バシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!


 圧縮した水がレーザーのごとくこちらに向かって飛んでくる。

 その勢いは、海面を割るほどだった。


「あ、危なかった……皇后はんの目ぇなかったら……死んでたわ……」


 まるで助かったみたいな口調のキンサイ。 

 アホが。まだ助かってない。敵は生きてる。



「あかん! ワイらいずれあのブレスを受けて、死んでまうぅ!」

「わめくな。勝つ方法はある」


「まじか!? どうやる!?」

「そのためには、少しで良い、足場を安定させてくれ」


「グリフォンを空中で停止させろっちゅーんか? って、うわぁまた来たぁ!」


 海魔蛇リヴァイアサンが尻尾を伸ばして、執拗に追いかけてくる。

 くっ、この状況じゃ落ち着いて作業できない。


「ひぃい! おわりやぁ!」


 と、そのときだった。

 ドガァアアアアアアアアアン!


海魔蛇リヴァイアサンの顔が吹っ飛んだ!?」


 と驚くアスベル。


「い、今のは……砲撃! ワイの船に積んでる、大砲や!」


 来たか。

 振り返ると、そこにはキンサイの船があった。

 

 船の先端部からは大砲が伸びており、砲塔からは湯気が出ている。

 たった今大砲を撃ったのは明らかだ。


「船や! でも一体どうして……?」

「呼んでおいたのさ」


 私はアイテムボックスから、通信機を取り出す。

 

『かぁたま! みんなでたすけに、きましたっ!』


 通信機からは可愛い可愛いわが息子アンチの声がする。


「そうか! 皇后はんは敵が来た際に、通信機を使って、援軍を呼んでいたんやな!?」

「俺たちがパニックになってる中で、冷静に次の手を打っておくなんて! さすがですセイコ!」


 通信機からは、ジョニィの声がする。


『母さん、助けに来たぜ! 砲撃で海魔蛇リヴァイアサンの気を引いておく! 何かするなら早くやってくれ!』


 私はアスベルに命令し、その場からいったん離脱。

 グリポンにその場で滞空するように指示。


 揺れるがこれくらいなら許容範囲だ。


「何をするのですか、セイコ?」

「薬の聖女さまの特技っていや、一つしかないだろ?」


 私はアイテムボックスから次々と薬を取り出し、調合していく。

 その間……。


「砲撃放て!」


 ジョニィの指示で、船からは砲弾が雨あられのように、海魔蛇リヴァイアサンへと降り注いでいく。

 どれも外れることはなかった。たいした射撃の腕……いや、実際に打ってるのは別のやつか。

 

 けれど、彼は都度、ここの砲撃手にどこを狙えと指定してる。

 やつの真価は、海上戦でこそ発揮されるのだ。


「よし、いいぞ! 砲撃止め! アスベル! こちらに敵の注意を引け!」

「了解ですセイコ!」


 アスベルはグリフォンを繰り、海魔蛇リヴァイアサンに接近。

 やつの目に剣でダメージを与える。


「ギシャシャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 海魔蛇リヴァイアサンは私達を追いかけ……なかった。

 口から素早くブレスを放とうとする。


「しま……あぶないセイコ!」

「いや……大丈夫」


 ばさっ!

 キンサイが……海魔蛇リヴァイアサンの上顎に張り付き、その大きな黒い翼を広げた。

「ここ、こここれでブレスはあたらんやろぉ!」


 翼が目隠しになって、ブレスはあさっての方向へとすっ飛んでいった。


「ナイスガッツ! よけろよキンサイ!」


 私は海魔蛇リヴァイアサン……ではなく、やつの近くの海面めがけて、今できたばかりの薬剤入り瓶をぶん投げる。

 

 ちゃぽんっ。


「うわぁあああああああ! 外れてるやないけぇええええええ!」


 ハズレじゃない。

 これでいいのだ。


 ぴきっ!


「!? セイコ……海に氷が張ってませんか……?」

「ああ。そうだな」


 ぴき、ぱき!

 徐々に海魔蛇リヴァイアサンのいる周辺が、凍り付いていく。

 そして次第に、敵の本体も凍っていく。


 パキィイイイイイイン……!


「う、うそぉお!? あのでかい海魔蛇リヴァイアサンが、一瞬で凍り付きよったでぇ!?」

 

 ふぅ……これでよし。

 完全に海魔蛇リヴァイアサンが凍り付いてる。


 頭の先から尻尾の先まで、完全にだ。


「せ、セイコ何をしたのですか……?」

「冷却剤を作って、海に放り投げたのさ」

「冷却剤……?」


「ああ、水と、硝酸アンモニウムが……あー……まあ、とにかく、私の造った薬で、あのあたりの温度を急激に下げたんだよ」

「なるほど! つまり……セイコの奇跡の技で、敵を凍らせたのですね! すごいです!」


 別に奇跡でもなんでもないが。

 私の魔力は、好きな化学物質を作り出せる。


 硝酸アンモニウムと水が反応することで、周りの熱を奪う……。

 日本でも売ってる、冷却剤だ。それをいろんな薬を混ぜたことで作り上げた。


 作った薬を、私が使用することで、威力が向上する。

 結果、あんなくそでかいバケモノを、一瞬で凍りづけにできたってことだ。


「仕上げだな。ジョニィ!」


 ドガァアアアアアアアアアアン!


 氷像となった海魔蛇リヴァイアサンに、砲撃が打ち込まれる。

 凍ったモンスターは今ので、完全に粉々に砕け散った。


「ふぅ……ふぅ……死ぬかとおもったわぁ~……」


 キンサイは戦線を離れていた。

 私の放った薬を見て、やばいと思って逃げたのだ。


「これでわかっただろ? ジョニィは敵じゃないって。私達の命を救ったんだからな」


 敵なら助太刀なんてしてこないだろう。

 組織のトップが死ねば、悪い海賊にとっては都合が良いことだろうから。


 さて。

 キンサイのやつは、この事件を通して、どう思うか。

 これでもまだ、海賊は敵だと言い張ったら、私はキンサイとの関係を切っていただろう。


 ま、わかってるさ。

 キンサイがどういうやつかってことくらいはな。


「…………」


 私達は船の甲板へと降り立つ。

 キンサイは……。


「ごめぇええええええええええええええええええええええええええん!」


 ジョニィの前で、高速土下座したのだ。


「ワイが間違ってたわ! ジョニィはんが正しかった! ほんまに……ごめん!」


 ジョニィがじっと土下座するキンサイを見つめる。

 思うところがあったのだろう。


 私はジョニィに言う。


「許してやってくれ。こいつも悪いやつじゃないんだ」

「……ふん。まあ、母さんが言うなら」


「ありがとな、ジョニィ」


 私はジョニィの頭をなでる。

 彼はうれしそうに笑うと「結婚してくれ!」とませたこといってきたので、額を指ではじいた。


「ま、これでジョニィの力わかっただろ? キンサイ」

「ああ。これからは、ジョニィはんの言うことをきくで」


 するとジョニィは鼻を鳴らす。


「別にオレの命令に従う必要はねーよ。オレとあんた、協力して、母さんをドワーフ国カイ・パゴスに送り届けようぜ」

「じょ、ジョニィはん! 許してくれるんかい?」


「ああ」

「わーん! おおきにぃい!」


 やれやれだ。

 いろいろあったが、こうして二人は仲良くなったのだった。 

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