09.海の旅
【※読者の皆様へ】
今回のあとがきは、
「全ての読者様」にお読みいただきたいです!
1分も掛からないので、最後まで目を通してくだると幸いです。
私たちは、商人キンサイの用意した船に乗って、ドワーフ国カイ・パゴスへと出航した。
ポーション工場を最速で作るには、ドワーフたちの手が必要だからな。
それに、今後の発展を考えると、技術者を仲間に入れておきたい。
「わぁ~~~~~! かぁたま! 海です! ひろいなぁ~!」
甲板にいる私達。
アンチは私の腕の中で、抱っこされてる。
わぁわぁ! と歓声を上げる……。なんと、可愛いことか。
「アンチ。海ははじめてか?」
「あいっ! おっきぃ~! かぁたま! うみ、おっきですね~!」
「ああ、大きいな」
「うー!」
目をキラキラと輝かせる息子がかわいらしくて、私はついついぎゅーっと抱きしめる。
「う? かぁたま、おふねのまわりに、ちっちゃいおふねがあります。あれは、なんでしょー?」
キンサイの船の周りに、小型船が4隻ほどいて、ついてきている。
「オレたちの船だよ」
「じょにー!」
ぴょんっ、とアンチが私から飛び降りてしまう。
ああ……息子……。
ジョニィはしゃがみこんで、アンチを抱っこする。
そして手すりの近くまでやってき、顎で小型船を指す。
「あれはオレ達、ジョリーロジャー海賊団の船だ」
「う~? かいぞく……おふね……ちっちゃい……あ、ごめんねっ」
馬鹿にしたつもりは無かったのだろう、でも、アンチはしっかり謝罪した。
うちの子は……出来る……! 将来きっと大物になるな。これは。
で、天才息子の指摘したとおり、なるほど、大海賊の海賊船にしてはやけに小さく見えるだろう。
「いいんだ。あれは、オレたちの船。じーさんの船は……手放しちまってよ」
「おじいさんの……ふね? てばなす? な、なんでぇ? だいじじゃないの?」
「……そーな。でも……仕方なかったんだ。あんなでかい船は、オレには……維持できなかった」
「う~……かなし?」
「…………少し、な。でもいいんだ。倉庫で腐らせるより、どこかの誰かに、のってもらったほうが……船も幸せだろうしな」
とは言いつつも、ジョニィはさみしそうな顔をしていた。
あいつは祖父の船を手放したことを、今も、後悔しているのだろう。
まあでも、海賊団は、彼の祖父が船長してたときより、規模を縮小してる。
収入も減少してるのだ、でかい船を維持するのは経済的に無理なんだろう。
私はジョニィに近づいて、頭をぽん、となでる。
「賢い判断だったよ。おまえの判断は間違っちゃいない」
「ババア……」
船にこだわって、もっと大事な海賊団を失う可能性だってあったのだ。
そうしなかった、ジョニィの判断は正しかったと思う。
「ありがとな。やっぱオレ、ババアのこと好きだ! 付き合ってくれ……! あいたっ」
アンチが、ぺんっ、とジョニィの頬をたたく。
「じょにー、だめでしょっ! かぁたまは……女性です! ババアなんていっちゃ、めっ!」
アンチ……!
ああ、我が息子! 女性に対する気遣いができるなんて!
「アンチ、すごいぞ、かっこいぞー!」
「えへー♡」
ああでも母様は心配だ。おまえのその、女性への気遣いのせいで、きっとアンチに惚れる女がたくさん現れてしまう……!
母様は……おまえを誰にも渡したくない!
が、それはアンチの選択肢を、母親が狭めることになる……。
そんなことはしたくない。が! ううん……。
「ババアじゃないなら、なんて言えばいいんだよ?」
「うー……かぁたま!」
「あいつはオレの母さんじゃねえしなぁ」
「う~……。でもでも、ババアはいけませんっ。わかりましたかっ」
「はいはい」
「テキトー! うー! だめー!」
「はは、面白いやつだな、アンチ」
二人が楽しそうに会話してる。
ジョニィは良い兄貴をしてる。
……ふむ。兄が欲しかったのかもしれないな、アンチは。
「ところでバー……ごほん、セイコ・サイカワ」
ババアと言うと怒られるから、フルネームで呼ぶみたいだ。
本人も呼び方に納得いってないらしい。私も別にまあババアって呼ばれてもいいんだが、まあいい。
「どうした? ジョニィ」
「あのカラス男はどこにいる? 海路のことで、相談したい」
真面目な顔でジョニィが言う。
なにか問題が起きてるのかもしれない。
「わかった。通信機ですぐに呼び出す」
キンサイには通信機を持たせている。
呼び出しの際、探す手間が省けるので、通信機は便利だよな。
ほどなくして、キンサイが現れる。
「どないしたん、皇后はん?」
「ジョニィが海路のことで相談があるそうだ」
「うへ……まじか……」
露骨に嫌そうな顔をするキンサイ。
「う? きんちゃい、じょにー、きらいなの?」
聞きにくいことをズバッと聞く、リーダーの素質ありすぎるぞ、我が息子よ。
「ああ。嫌いや」
「なにか、ちたの?」
「そらな……こいつらに、どんだけ煮え湯を飲まされてきたか」
ふむ……。
発言から察するに、キンサイの抱える銀鳳商会の船を、ジョリーロジャー海賊団が襲ったことが過去にあったのだろう。
が。
「キンサイ。こいつらは義賊で、人を襲ったりしないぞ。今も、先代も」
おそらくは、ジョリーロジャー海賊団を騙った、野良の海賊の仕業だろう。
「そら自己申告やろ? ワイは海賊の言うことなんて、信じてへんからな」
どうやら相当な額、被害が出ていたのだろう。
このわだかまりは一朝一夕じゃ、解消できないか。
「う~……なかよくしよ? ね?」
「そら……無理や。すまんな、坊」
キンサイは嫌そうな顔をしながらも、ジョニィを見やる。
「なんや? 相談って。坊に免じて聞くだけ聞いてやるわ」
ジョニィは、言い訳をしない。
こいつは、自分たちがやってないって反論することもできたけど、そうしなかった。
生来言い訳しない性格なのだろう。
「ルートを変えた方が良い」
「却下……あいたっ」
私はキンサイの頭をはたく。
「話を聞くんじゃなかったのかよ? あ?」
「……ちっ。皇后はんがいなかったら、船からたたき落としてるとこや……で、なんでルート変えなあかんのや?」
ジョニィが海をちらっと見て言う。
「今この近海は、海魔蛇の群れが通過してる」
「はぁ!? 海魔蛇やて!?」
驚く二人をよそに、アンチが手を上げる。
「りばいあさん、って? なんですかっ」
「海に住む強力なモンスターだ。でかいウミヘビみたいな姿をしてるが、古竜を祖に持つ、ドラゴンの一種だ」
「おー! かぁたま、ものちりっ! すごいです!」
ああ……もっと褒めてくれ……アンチ……。
息子に褒められるとすごい幸せな気持ちになる……。
「アホか。海魔蛇やて? 見たこと無いわ、この海で。ワイかてこの海を何度も渡ってるんやで」
「アレを見ろ」
びっ、とジョニィが海面を指さす。
少し、海の色が違っていた。
「あれは海魔蛇のうろこだ。うろこがあるということは、海魔蛇も近くに居る。おそらくは、よそから流れてきたハグレものだろう」
なるほど……。
「このまま海流に乗っていくと、海魔蛇がいるであろうスポットにぶち当たる。迂回路をすすんだほうがいい」
「それを、ワイに信じろいうんか?」
依然、キンサイはジョニィに疑いのまなざしを向ける。
「進んでいった先に、お仲間の海賊が待ち受けてて、この船襲おうとしてるんちゃうの?」
「おい、キンサイ。いい加減にしろ」
強めににらんだが、キンサイははっきり言う。
「皇后はん、申し訳ない。あんたを否定したいわけじゃないし、あんたの目はすごいことも知ってる。けど……あんたを信じられても、ワイは……海賊の言葉を信じない」
よほど、キンサイは海賊に痛い目にあってきたんだろう。
ジョニィは小さくため息をつく。
「好きにしな。この船はあんたの船だ。最終的な判断はあんたに任せる」
とあっさり引き下がるジョニィ。
「うー……けんかだめ。なかよくしてぇ……」
アンチの言うとおりだ。
こいつらはお互いにすごい能力を持っている。手をきちんと組めば、今まで以上のパフォーマンスを発揮するだろうことは確定してる。
……どうにか仲良く出来ないものか。ふむ。
「アスベル」
「ここにいますよぉ~!」
ずさあああ! と私の前にやってくるアホ犬。いや、皇帝。
「グリポンの用意を」
「ああ、グリフォンつんどったな、皇后はん。なにすんねん?」
「先に行って、様子を見てきてやるよ、私がね」
「な、なんやて!?」
偵察用に、グリフォンを積んで置いてよかった。
「アスベル、私じゃグリフォンに乗れないから、運転は頼むぞ」
「もちろんです! セイコの頼みでしたら、たとえ海に裸で飛び込めと言われても飛び込みますよぉ!」
アホ犬皇帝はほっといて、私はジョニィに言う。
「私はジョニィを信じる。海魔蛇はいる。発見したらすぐ戻ってくる」
「…………」
ぽん、と私はジョニィの頭に手を乗せる。
「いったろ? おまえは私の仲間だ。たとえ周りがおまえを否定しても、私だけは……おまえの言葉は信じる」
「…………」
ジョニィは涙ぐむと、私の腰に抱きついてきた。
「ありがとう……ママン」
ママン、お母さん……か。まあいいか。
こいつも母親に甘えたいのだろう。まだ13のガキだしな。
「いや、皇后はんひとりで行かせるのは~…………うううん。わかった、ワイもついてく」
ばさっ、と翼人である彼が、翼を広げる。
「ワイは信じない。が、この目で見ないものを否定するのも、それは商人としてよーないきがしてな」
「そうか。じゃあ、私、アスベル、キンサイで偵察だな。アンチ」
アンチが元気よく手を上げる。
「ぼくは、おりゅしゅばん!」
「そうだ。できるな?」
「あい!」
「良い子だ。すぐ帰ってくるからな」
「あい~♡」
アスベルがグリフォンにまたがり、その前に私が座る。
「いくぞ」
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