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04.皇子の治療

 さて、やってきたのは、ゲータ・ニィガ王国の隣、マデューカス帝国。

 この国は比較的新しい国だ。


 貴族制度をとっていない国なんだと。

 私は帝都カーターにある、帝城へとやってきた。


 で、だ。

 私は皇帝の息子の部屋へと訪れた。


「この子が、アンチ様……かい?」


 ベッドの上には小さな子が寝かされていた。

 父親似の銀髪。体は、ぽっきり折れてしまいそうなほど、細い。


 額には脂汗が浮かび、はぁはぁ……と荒い呼吸を繰り返してる。


「ちゃんと食べてるのかい? この子」

「……面目ないです、聖女様。この子は、母に捨てられて以降、心を閉ざしてしまい……私も含めて、誰にも心を開いてくれないのです」


 ……なんだいそりゃ。

 浮気で出て行ったクソ女に、捨てられたって思ってるのかい、この子。


 可哀想に……。

 あんたが気にすることじゃ、全くないのに……。


 うん。

 ほっとけないね。


「アンチ様。大丈夫、私が助けてやっから」


 私はステータスを開き、アイテムボックスを展開。


「それは……召喚者に与えられし、三種の神器が一つ、アイテムボックス!」


 この国に召喚された者は、天より特別な才能を与えられる。

 その一つが、アイテムボックスだ。


 そう……転生者特典ってやつ。

 で……。


 これは、あのブリコにはないものだ。

 つまり、まあ、そういうことなのだ。


 が、今はどうでも良い。


「私の作ったポーションを取り出して……っと」


 翡翠色の液体が入ってる、ポーション瓶。

 私が持つと、ぱぁ……! と輝き出す。


「ポーションが光り出した! 聖女様……これはいったい……?」

「私の能力さ」


「能力?」

「ああ。私は【薬の聖女】。能力は、私が作った薬の効果を、超向上させる」


 つまり私が作り、飲ませると、通常のポーション以上の薬効を示すことができる。


 それは、アンチ様の口に、瓶を持っていく。


「ほれ、飲むんだ」

「………………やぁ」


 ……アンチ様は嫌がっている。

 薬が嫌なのか、生きるのが嫌だからか。


 それはわからない。

 でも……!


「飲みなさい!」


 びくっ、とアンチ様がびっくりして目を丸くする。


「元気になって、父ちゃんを安心させるんだよ!」


 この子がどうして薬を拒んだのか、それは私にはわからない。

 でも、この子の父親の気持ちはわかる。

 わざわざ隣国まで出向いて、お尋ね者である私にすがってきた。

 それくらい、この子を大事に思ってるってことだ。


 そんなに強く、生きてほしいと望まれてるんだ。


「あんたは生きなきゃだめなんだ! 飲め!」

「…………」


 アンチ様は小さくうなずいて、瓶に口をつける。

 ぱぁ……! と彼の体が光り出す。


「アンチ!」

「大丈夫、薬が効いた証拠だよ」


 光が収まると……。


「…………からら、いたく……ない」

「アンチ!」


 アスベル様はアンチ様を抱き上げて、ぎゅっと抱きしめる。


「治ったのだな! 良かった……」

「おとー……さま……ごめん、なしゃい……」


 その謝罪の意味については、わからない。

 でも……その子の目からは、さっきまであった、生きることへの諦めはなかった。


「いいんだ。アンチ。おまえが元気になったのなら……」

「うん……とーたま、ごめんねぇ……」


 ぎゅっ、とアスベル様が息子を強く抱きしめる。

 うん、一件落着だね。


「ありが、とぉ~……かーたま」


 うんうん……うん?

 今、なんつった?


 かーたま?

 かあ……。


 母?


「申し訳ない、聖女殿。この子の母は、あなた様と同様、黒い髪をしていたのです」


 へー……じゃあそいつも、日本人だったかもしれないわけか。


「かあたまぁ……」


 いや、私母親じゃないんだが……。

 するとアスベル皇帝陛下が、私の前で跪く。


「薬の聖女様。お願いがございます。どうか……この子の母親になってほしいのです」

「…………………………は? 母親……って、ええ!? 皇帝の奥さんってことかい!?」


「はい。できれば……」

「いやいやいや。こんなオバさん、いやでしょ!?」


「そんなことはありません。あなたは美しい」

「う、美しいぃ!?」


 そんなこと誰からも言われたことなかったよ!


「聖女様。どうか……」

「かーたまぁ……」


 ……結局、私はこの子の継母となり、皇帝陛下の妻となって、この国をよりよい方向へ導いていくことになるのだが……。


 それはまた、少し先の話。

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― 新着の感想 ―
[一言] 皇帝の子供が飢え死に寸前って既に意味が解りません。 拒食症とかにした方が分かりやすかったのでは? あと皆が言うように口調がどう見ても30代どころか60歳以上のいじらばーさんですよ。 は…
[一言] 短編ならそんなものと思って読むけど、長編にするには名前も適当だしちょっと… あと他の方も言ってる通り主人公の口調が気になり過ぎて続き読むよりも気になります。 作者さんは主人公30代って言って…
[一言] 口調が30代女性じゃない。70代とか80代を感じる。
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