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06.大海賊との一騎打ち



 私はジョリーロジャー海賊団を仲間に加えるため、船長のジョニィと、酒飲み対決することになった。

 より多くの酒を飲んだ方が勝ち、というアホほどわかりやすいルール。


「おいおいあの女、船長に勝負を挑むつもりか?」

「正気かよ! 船長はビールを樽で飲んでも平然としてるくらいの、酒豪なんだぜぇ?」


「あんなおばさんに、負けるわけないっつーの!」


 ギャラリー、というか海賊団のクルーたちは、ジョニィの勝利を信じて疑っていない様子だ。

 樽でビールを飲んでも大丈夫……か。


「悪いな女」


 ジョニィはビールを手に取って、ごきゅっ! と飲み干す。

 ……早い。


 ほぼ一瞬でビールを飲み終えやがった。


「オレの【一族】の肝臓は、特別頑丈なんだよ」

「…………」


 ふむ……。

 オレの一族は……か。


 なるほどね。

 私はビールのジョッキを手に取る。


「だとしても……」


 ごきゅっ! ごきゅっ! ごきゅっ! 

 だん!


「負けるのはおまえだ、ジョニィ・ロジャー」


 酒を一気飲みしても、私の意識ははっきりとしている。

 体に不調はどこにもない。


 ジョニィは私の姿を見て、一瞬たじろぐも……。


「はっ! おもしれぇ……! おい次もってこい!」


 ドンッ……!

 ごきゅっ! ごきゅっ! ごきゅっ! 


 ドンッ……!

 ごきゅっ! ごきゅっ! ごきゅっ! 


 ドンッ……!


「あ、あの女すごくないか……?」


 ギャラリーの一人がそう言うと、周りの連中たちも「ああ……」と戦慄の表情を浮かべながらうなずく。


「ものすごいハイペースで飲んでるのに、顔色一つ変わらない……」

「船長は手ぇ抜いてないぞ……」


「ああ船長は、いつものハイペースだ。おれらクルーの誰も、船長のペースについてけないっていうのに……」


 ギャラリーが見ている中で、私は酒を飲み続ける。

 ちら……ちら……とジョニィが私を横に見てくる。


「どうした? やけにこっちを気にするじゃないか」

「ふんっ、勝負の最中に倒れてないか気になっただけだ!」


「それは無用な心配だね」


 にぃ……と私は不適に笑ってみせる。


「ビールなんて小便みたいなもんだ。こんなのいくら飲んでも酔いやしない」

「!? ……ふかすじゃねえか、ババア!」


 ジョニィがマスターに言う。


「おい! 一番アルコール度数の高い酒もってこい!」

「いいね」


 私にはこいつが、焦っているのがわかった。

 多分この勝負で、一度も負けたことがなかったのだろう。


 今回も勝つ気でいたのだが、思った以上に私が善戦するモノだから、焦ったのだ。


 どんっ! と今度はテーブルにグラスが置かれる。

 アルコール臭がツン……と鼻をつく。


「うひぃ~……匂いだけでも~らめれすぅうぅう~……」


 揮発したアルコールを吸い込んだだけで、メメが顔を真っ赤にして、その場にしゃがみ込んでしまう。

 それくらい強い酒ってことだ。


「やめとくなら今のうちだぜ、ババア!」

「はっ。上等」


 私はグラスを手に取って、一気に飲み干す。


「なっ!? 飲み干した……だと……!?」


 ジョニィが驚愕の表情を浮かべる。

 一方で私は、勝負を決めるため、挑発する。


「まさか天下の大海賊、ジョリーロジャー海賊団の船長が、自分から言い出した勝負から、逃げ出すことなんてしないよなぁ??」


「!? あ、あったりまえだろぉがぁ! ババア!」


 ジョニィがグラスを手に取って、酒を飲む。


「げほっ! げほげほっ!」

「おやおや、坊やにはこの酒が、まだ早かったかな?」

「う、うるせええ! ババア! ほら飲んだぞ! どうだ……!」


「そうかい」


 ごきゅっ!

 どんっ!


「!?」

「ほら、飲んだよ。次はあんたの番だ」

「…………」


 ジョニィが目をむいて、震えている。

 まあ気持ちはわかる。


 これは、普通に飲んだら一発で気絶するくらい、強い酒だ。

 それを、目の前の女が、躊躇なく一瞬で飲み干した。


 本来ならあり得ない光景。

 脳裏には敗北の二文字がちらついたのだろう。だから、一瞬止まってしまったんだ。


「せ、船長……?」「どうしちまったんだ……?」「まさかもう限界……?」


 するとジョニィが「あぁ!?」とすごんでみせる。


「海の男たるこのオレが! 勝負の途中でギブアップするかよぉ!」

 

 グラスを持って、ジョニィが酒をかっこむ。

 うむ……ナイスガッツだ。さすが大海賊。


 だがね、体がふらついてるよ。

 目が若干うつろだし、限界なのは目に見えて明らかだ。


 それでも……。


「さぁ! 飲んだぞババア!」

「おう」


 ごきゅっ!

 ドンッ……!


「さ、飲んだぞ」

「………………」


 絶句する、ジョニィ。

 はやし立てていた周りの連中も、黙りこくってしまった。


「い、イカサマしてねえだろうな、ババア!」


 ジョニィの部下、サブが私に食ってかかってくる。

 鋭いじゃないか。


「この酒によぉ!」


 ふぅう~~~~~~~~~~~………………。

 だめか。


「バカかい、あんた。酒をついでるのはあんたらのお仲間だろう?」


 カウンターには背の高い、美男子マスターが立っている。


「用意してるのはそっち側の人間なんだから、【酒に】イカサマなんてできるわけないだろ? バカだね、そんなのもわからないのかい?」

「んだとぉお……!?」


 サブが暴力を振るおうとする。

 だが……途中で辞めた。


「ほう……殴らないのかい?」

「……ああ。船長との約束だからよお」


 さっきこの坊やは、私に手を出すなと言った。

 船長の言葉をしっかりと守っている。


 バカだが、良い部下をもってるじゃないかい。

 ますます欲しくなったよ。


「さ、勝負続行といこうかい」

「…………ぜえ、はあ……あ、ああ……! 負けねえ!」


 ごきゅっ。

 ごきゅっ。

 ごきゅっ。


「どっちも一歩も引かない……!」

「なんてババアだ! あいつ……!」

「鉄の肝臓でも持ってるのかぁ!?」


 ギャラリーたちの見る目が変わってるのがわかった。 

 連中は私を女だからと侮っていた。


 でも……今はそんなふうに、私を下に見るやつはいない。


「船長と互角……いやそれ以上……」

「もしかして船長負けちゃうんじゃ……」

「ばか! おれたちの船長が負けるわけないだろ!」


 しかし……。

 ふら……。


「「「船長ぉおおおおおおおおおおお!」」」


 限界を迎えたのか、ジョニィが横に倒れそうになる。

 私はジョニィの肩を抱き寄せて、転倒を防いだ。


「ナイスガッツ」

「………………ちく、しょぉ……」


「もうギブアップしときな。体壊すよ?」

「……………………」


 こくんっ、とジョニィがうなずく。

 それを見て、すかさずアスベルが宣言する。


「この勝負、セイコの勝利です!」

「「「「おぉおおおおお!」」」」


 男どもがバカみたいに歓声を上げる。


「すげえ!」「船長を酔い潰しちまうなんて!」「やるじゃねえかババア!」


 沸き立つバカどもをよそに、私はジョニィをお姫様抱っこする。


「ああ! お姫様抱っこ! ずるいですセイコ! 俺もしてほしいのにっ!」

 

 バカ皇帝はほっといて、私は酒場のマスターに尋ねる。


「どこか、こいつを寝かしてやれる場所はあるかい?」

「それでしたら、二階が宿屋になっております。そちらをお使いください」

「ありがとね。メメ! ここの代金を支払っておきな!」


 メメにそう言い残すと、ジョニィを抱っこしたまま、二階へと向かう。


「セイコ!? どちらへ!」

「この坊やの看病だよ」

「それでしたら俺が……!」

「いいから。待て」

「きゃいぃん!」


 アスベルが犬みたいにその場にしゃがみ込む。

 ほんと犬のような男だ……。


 私はジョニィを抱いたまま、階段を上る。

 彼を開いてる部屋のベッドに寝かす。


「結構根性あるじゃないかい」


 眠る坊やの頭を、私はなでてやった。

 ジョニィは小さく「……母さん」とつぶやき……一筋の涙をこぼすのだった。

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[気になる点] >「ビールなんて小便みたいなもんだ。こんなのいくら飲んでも酔いやしない」 流石に小便って例えは、この流れだとおかしいというか不適当ではないかと。 無難に水とか茶でいいと思いますが。
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