表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/93

03.超発明品を披露して驚かれる



 ポーション工場を最短で作るために、ドワーフをスカウトすることになった。


 帝都カーター、帝城の会議室にて。

 私、アスベル、ユーノ、キンサイ、そして……マギが集まっている。


「う~? かぁたま……? 何始めるのぉ?」


 アスベルの膝の上には、我が愛しの息子、アンチが座っている。


「これから楽しい家族旅行の、日取りを決めるんだよ」

「!? か、かぁたま……かぞくりょこー! 旅行……つまり、りょこーってことでしょうかっ?」


「アンチ……」


 おまえってやつは……。


「天才か?」

「うー!」

「賢さが半端ないな」

「かぁたま~♡」


 全く末恐ろしい息子である。可愛い上に紳士、さらに頭までいいだなんて……。


「ずるいですよ、アンチ! 俺だって……セイコに褒められたいのにっ!」

「! かぁたま……とぉたまも褒めてあげてくらさいっ!」


 まだ褒めるとこ何にもないが……まあ息子がそうしてほしいって言うんだ。


「アスベル。偉い」

「とっても雑……! だが……それがいい!」


 はぁ……とキンサイがため息をつく。


「ちょ、早くはじめよーや、会議」

「そうだな」


 ユーノがホワイトボードを持ってくる。


「なんや、これ?」

「ホワイトボード」

「????」


 まあ、こっちの世界にはないものだ。

 私は立ち上がり、水性ペンを持って、ホワイトボードの前に立つ。

 きゅきゅっ、と簡単に周辺国の地図を書く。


「これが我らのいる、六大陸と呼ばれる、一つの大きな大陸だ」


【コ】の字をした、大陸の画を描く。

【コ】の一画目、その中央部分。


「ここがマデューカス帝国。で、私たちが行こうと思ってるのが、ここ……」


【コ】の二画目の終わりの部分を、丸する。


「ここに、ドワーフ国カイ・パゴスがある。行くためには陸路か海路の二択だが、今回は船を使って海を渡る」


 すっ、とアスベルが手を上げる。


「どうした?」

「正直、陸より海のほうが、怖い気がします。沈むリスクもありますし、それに海上の魔物もいます」

「ほぅ……」

 

「陸路は確かに遠回りになってしまいますが、そちらのほうが安全では……?」


 ……珍しく夫が頭を使っていた。

 今回はアンチも連れていく。親としての防衛本能が、安全なルートを選ばせてるのかもしれないな。



「アスベルの意見はもっともだ。が、陸路を使うと……【赤龍山脈カルマ・マウンテン】を通らないといけない」

「【かるま・まうんてん】……とは! なんでしょ~!」


 息子が元気よく手を上げる。


「偉い!」

「う?」

「わからないことがあったら、手を上げて質問する。偉い!」

「! これが……えらいことなのですかっ!」


「ああ。なかなか出来ないやつも多いのだ。アンチ……おまえは、すごい!」

「やったぁ~! えらーい!」


 えへへっ、とアンチが笑う……くぅ~……疲れが吹っ飛ぶ。


「セイコ! 俺も赤龍山脈カルマ・マウンテンを知りません!」

「何で知らないんだい。地図見たことないのかい?」


「アンチと対応が違いすぎません!?」


 大人と子供じゃ対応が違うだろうが……。ったく。


赤龍山脈カルマ・マウンテンっていうのは、獣人国ネログーマと、ドワーフ国カイ・パゴスの国境にある、でかい山脈のことだ」


 ちょうど、【コ】の二画目の始点あたりがネログーマ、終点であるドワーフ国との間に、赤龍山脈カルマ・マウンテンがある。


「陸路を行くとどうしても、ここを経由する。で、赤龍山脈カルマ・マウンテンにはやっかいなことに、赤龍っつー、やばいドラゴンの縄張りなんだ。そこを通るとおるとなると……甚大な被害が出ちまう」


 瘴気が浄化された後も、居残る魔物ってやつは結構いるのだ。

 赤龍はその一角。


「セイコでも赤龍は討伐できないのですか?」

「やったことないからわからないが……でも確実に、大きな戦になる。となるとアンチを連れてくなんてことはできない」


 ぴょこっ、とアンチが手を上げる。


「ぼく、おるすばん、できますっ!」

「おお~…………アンチぃ~…………偉すぎるぞぉ~……」


 私はアンチに近づいて、ほっぺにキスをする。「きゃー♡ かぁたまのキス~♡ うれし~!」と喜ぶ息子。

 

「でもなアンチ。カイ・パゴスにいくと、長い間こっちに戻って来れなくなる」

「うぅ~……がまん……」


「いいんだよ、我慢しなくて。言ったろ、今はうんと甘えてもいいって」

「かぁたまっ!」


 気遣いの出来る優秀な息子だが、それでもまだまだ幼子だ。

 長くお留守番させてはおけない。


「ゆえに、陸路はなし。海路で行く。異論ないな?」


 こくん、と男たちがうなずく。

 よし。


「じゃあ次の図に移る……」


 きゅきゅ、と書いた部分を消す。


「なんやてぇええええええええええええ!?」


 キンサイが声を張り上げた。

 んだよ……。


「次の説明に移るとこだぞ……邪魔するな」

「いやいやいや! 皇后はん……! なんや今の!? 書いた線が、魔法みたいに消えよったでぇ!?」


 ああ、そうか。

 キンサイは……というか、異世界人はホワイトボードと水性ペンなんて、見たことないのか。


「これは特殊なインクで出来たペンだ。こうして、書いたモノを自在に消せる」

「なんやてぇええええええええ!?」


 うるせえ男だ。

 その口にペン突っ込んで黙らせてやろうか……?


 と思ったが、よい子(※アンチ)が見てるので我慢する。


「こ、皇后はん!? そ、それほしい! くれ! ホワイトボードとペン! ほしい!」


 立ち上がって、キンサイが叫ぶ。

 一方アスベルはよくわかってない様子。


「なぜそんなにほしがってるのだ、キンサイ?」

「バカ皇帝! これがどれっだけ革新的発明品か、わかってへんのか!?」


「ああ」

「ったく! ええか、これさえあれば、リアルタイムで画を描きながら説明できる! しかも……紙を全く使わなくてや! 紙は高いからな!」

「ほぉ……?」


 わかってない様子のアスベル。


「皇后はん、なんやこの発明品! どうやって作ったん!?」

「そこの天才魔道具師に作らせた」


 会議なんて何も聞いてない様子の、ピンク髪の男を指さす。


「マギア・クィフの元宮廷魔導師殿だよ」

「ま、魔法国の宮廷魔導師やてぇえええええええええええ!?」


 また叫ぶ、キンサイ。


「驚きすぎだろう? なにを驚く?」


 とアスベル。おまえのその素直な無知っぷりは、嫌いじゃないぜ。


「こない天才的発明品を開発できるのは……そうか。マギア・クィフの天才を連れてきたからか! わ、う、うちでほしいぃい~」

「やらん」


 魔道具師マギが、ちらっとキンサイを見て言う。


「ぼくここ離れるつもりないから。皇后さま、いろんなアイディアくれるし。好きなだけ物作りさせてくれるし。後普通に好きだし」

「なんだとっ!? おいマギ、最後のそれはほんとなのかっ?」


 アスベルが声を張り上げる。


「え、好きに決まってんじゃん。仕事できるし、こっちの仕事に過度に干渉しないし、有能だし。あと美人だし」

「わかる! マギ、おまえはわかってるな……!」


 うれしそうにうなずくアスベル。

 ったく……今のですっかり、マギが私のこと好きって台詞が、抜けてしまってるようだ。


「悪いな、マギ。私はそこのバカ夫と可愛い息子一筋なんだ」

「ん。別にいいよ。ぼくが勝手に好きなだけだし」


 ドライな性格でよかった。


「まじか……なあ、皇后はん。ドワーフいる? というか、ポーション工場いるん? そこの天才と、あんたのアイディアがあれば、金はいくらでも生み出せるんとちゃう?」


 まあ言いたいことはわかる。

 私が持つ、地球の品物を、マギが魔道具で再現して、それを流通販売すれば……。


 キンサイが言うとおり、結構もうけが出るだろう。

 実際にそうだろうしな。


「マギのような凄腕魔道具師が、今後も出てくるとは限らない。こいつがいなくなったら、うちが終わり……みたいなことにはしたくないんだよ」

「な、なるほど……長期的に物事を見てるんやな。慧眼やで……」


 ポーション工場は、最終的に私がいなくても、安定してポーションを製造販売できれば、帝国はとりあえず安泰になる。

 ま、それですべての問題が解決するわけじゃないけどな。


 少なくとも……アンチが皇帝になったとき、今のように、弱小と馬鹿にされるようなことはなくなる。


「話を戻すぞ。カイ・パゴスは船で1週間かかる」


 陸路だともっとかかるから、早いほうだ。


「セイコ、船はどうするのですか?」

「そこのキンサイに船を用意してもらった。それを使ってカイ・パゴスへ向かう」


 ゲータ・ニィガのウォズという、港町から船が出る予定だ。


「となると、往復で二週間。カイ・パゴスですぐにドワーフが見つかるかはわからないですし……一ヶ月くらいは、皇族不在となるってことですか?」


「そうだ。ま、アスベルよ、おまえの不安はわかる」


 中が回るかってことだろう。

 私らがいない間も、内政をやらないといけないからな。


「が、まあユーノがいれば大抵なんとかなる。こいつは出来るやつだからな」

「光栄です」


 むむむ、とアスベルが不満そうだ。


「なんだ?」

「まるで、皇帝がいなくても、国が回るみたいな……」

「現にそうだろうが。内政仕事は、全部私とユーノがやってるんだし」

「ぐぬぅう……バカで申し訳ない……」


 いや、アスベルはこれでいいんだ。

 こいつは後ろでデスクワークするより、前に出て前線指揮者として働かせるのがベストなのである。


 そういう適性を持ってるのだから。


「しかし、そこの有能執事はんと、皇后はんで回してる国から、皇后はんがいなくなったら、やばいんとちゃう? 指示出し役がいなくなるやんな?」


 キンサイの指摘はもっともだ。

 が。


「そこも問題解決済みだ。マギ?」

「ん。もちろん出来てるよ」


 マギが現在進行形で作っていたモノを、こちらに持ってくる。


「出たな! 通信機! 金のなる木!」

「なんだおまえ、知ってるのか……?」


「当たり前やん! 商人からすれば、喉から手ぇ出るほどほしいもんやで!」


 通信機。

 ようは、日本にあるトランシーバーと同じだ。


 マギはスマホから、音声を遠くに飛ばす技術を独自開発し、通信機を作ったのである。

 たいしたやつだ。


「そか。通信機があれば、カイ・パゴスにいても、通信機でやりとりできるんやな?」

「いや、普通に出来ないよ?」

「なんやて!?」


 マギがため息をつく。


「通信機で会話できる範囲は、せいぜいこの帝国内くらいだよ。海の向こうのひとと会話なんて無理」

「そ、そうよな……うん。そないもんがあれば、世紀の大発明どころの話ちゃうしな……」

「ま、作っちゃったんだけどね~。海の向こうの人と、会話できる通信機!」


 ぽかーん……とするキンサイ。

 

「ま、マギ……? それってひょっとして、すごい発明じゃないのか?」


 とアスベル。

 お、珍しい。アスベルよ、さえてるな。


「あったりまえじゃん。海向こうと通信できる魔道具なんて、歴史上存在しない。それを作ったら、そりゃもう世界に革新を起こすレベルの、超発明さ。でしょ、皇后さま?」

「そういうこったな」


 え、え? とアスベルが首をかしげる。


「キンサイに、知られちゃまずいんじゃ……? 絶対にほしいって言ってくるだろうし……」

「ほしいいい!」


 キンサイが私の前にやってきて、土下座してきた。


「皇后様! どぉおおおおおおおおおおおおおおか! その海の向こうのやつと、会話できる通信機! ゆずってぇええええええええええ! お願いしますぅうううううううううううううう!」


 よしよし。

 狙ったとおりになった。


「キンサイよ。この【龍脈りゅうみゃく式通信機】、試してもないのに、ほしいのか?」

「りゅーみゃくしき、つーしんきぃ~?」


 アンチが復唱する。か、かわいい……。


「ほしい! 絶対すごいやつなの確定してますやん! 天才マギ・クラフトの作ったものですし! それに……皇后はんは交渉の場で嘘つくバカじゃないし!」


 ふむ、こいつちゃんとここが、交渉の場だってことを理解してるようだな。

 

「え、交渉の場だったんですか?」


 ……アスベルよぉ。


「まぎぃ~。りゅーみゃくしき、つーしんきってぇ?」

「電気信号と龍脈を利用して、世界中どこにいる人間とも通話を可能にした、通信機のことだよ」

「う~? う~~~?」


「龍脈って言うのは地中を流れるエネルギーで、音波を電気エネルギーにして地中に流せば……」

「う~……わからなぁい~……」


 潤んだ目のアンチ。

 だが私は言う。


「えらいぞ、アンチ。わからないこと、ちゃんとわからないって言ったな」

「かぁたまにほめられたぁ~! えへ~♡」


 ああ……アンチ……癒やし……好き……。


「ま、ようは衛星電話みたいなもんでな。世界中のやつと話せる通信機で……」

「ほしい!」


「よし、じゃあわかってるな?」

「はい!」


 キンサイが興奮気味にいう。


「船のレンタル代から、滞在費! 今回の旅行でかかる費用、全額! 出資させてください!」

「おう、わかってんじゃないか。それでいいよ」

「ははぁー! ありがたき幸せぇえええええええ!」


 よし、足代と宿代ゲット。


「とまあ、国内のことはユーノ、おまえに任せる。指示は龍脈式通信機で出す」

「御意に」


 その後細かい打ち合わせをして……。

 数日後、私たちは船の上の人となったのだった。

【★大切なお知らせ】


好評につき、連載版をスタートしました!


『【連載版】異世界帰りの元剣聖、二度目は王子に転生し、魔法を極める〜恵まれた家柄と才能で世界最強〜』


広告下↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!


リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://ncode.syosetu.com/n3643iz/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ