01.Sランク冒険者を治療する聖母
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
私の名前は犀川 聖子。
3■歳。
ひょんなことから異世界に召喚された私は、王宮で数年過ごした後、理不尽に追放される。
国外追放された私は、隣国の皇帝、アスベル=フォン=マデューカスに、息子の病気を治してほしいと頼まれる。
息子アンチを治療した私は、この子の継母になってほしいと頼まれる。
皇子の継母、すなわち皇后となった私は、衰えてしまったこのマデューカス帝国を、再生することを決意。
召喚聖女としての能力を駆使し、少しずつ国を立て直していくのだった。
★
話は、私を追放したバカ王子を土下座&奴隷落ちさせてから、1ヶ月ほどが経過したある日の夜……。
帝城に、緊急の患者が運ばれてきた。
帝城内の治療室にて。
「聖母様。夜分遅く、ご足労いただき、誠にありがとうございます」
有能執事、ユーノ・バトラーが、私に頭を下げる。
時刻は0時を回っている。
本来なら寝てる時間だが、こいつに起こされた。
ユーノは私の忠実なる部下だ。そんな彼が、私の睡眠を阻害するような真似をしたのだ。
なにか、重要な案件なのだろう。
「相手は?」
「この方々です」
治療室のベッドには、武装した男たちが寝かされている。
かなり重傷だ。
全員大けがを負っている。
四肢が欠損してるやつもいるし、ぴくりとも動かないやつもいる。
「通常のポーションでは直せないような大けがでしたので」
「状況は理解した」
私は召喚聖女のスキル……アイテムボックスを使用する。
異空間にモノをしまっておくスキルだ。
ボックスから取り出したのは、赤い色の液体。
きゅぽっ、と蓋を取り、近くにいたけが人の元へ行く。
足がちぎれていた。
これで、この中では軽傷の部類なのだから、結構強い敵にでも出くわしたんだろう。
「ちょっと痛むが我慢すんだよ」
ばしゃっ!
私は怪我した箇所に、ポーションをぶっかける。
しゅうぅうううううう……!
「いでぇ……! って、ええ!? あ、足が生えたぁ!?」
驚愕する男の足は、みるみるうちに再生した。
まるで、ビデオテープを逆再生させてるかのようだった。
「すんげえ! 足が治っちまった! むぐぐ!」
私は男の口に、別の瓶をつっこむ。
「造血剤だ。それ飲んでおとなしくしてな」
足を失うほどの大けがだ。
血液も大分失われてるだろう。だから、私の造った造血剤を飲ませたのだ。
「次」
私はその場にいる全員を、次から次へと治療していく。
そして……ラスト。
「こいつは……特にやばいな……」
倒れているのは、高身長の男だ。
赤い髪、そして眼帯をつけている。
男の体は、まず右腕と左足がちぎれていた。
これはまあ、私のポーションぶっかけて治療可能だろう。
問題は……だ。
「体を、瘴気にむしばまれてやがる……」
瘴気。
死に至る毒ガスのことだ。
この世界は、定期的にこの瘴気ってやつが、世界に蔓延する。
瘴気は少し吸うだけで体調を崩し、大量に摂取すると死んでしまう。
この赤髪男は、そんな瘴気をかなり体内に取り込んでしまってるようだ。
「聖母様。どういたしましょうか」
「どうもこうも、こうするほかないだろうが」
私は自分の作ったポーションの蓋を……開ける。
それを口に含む。
私にはいくつかの特殊能力があった。
たとえば、魔力を好きな化学物質に変える、【創薬】スキル。
そして、私が作ったポーションの、効果を向上させる、【性能向上】。
性能向上は手自らで飲ませることで発動する。が……。
「ああもう、口を開けな! ったく!」
意識のない人間に、薬を飲ませるのは至難の業だ。
……悪いな、アスベル。
心の中で、私の大事な男に謝ってから……。
私は、瓶を開けて、ポーションを口に含む。
そして赤髪男の口に、口づけをした。
「「「ええええええ!?」」」
この男の仲間らしきやつらが驚愕してる。
まあしかたない、こんな緊急時にキスしてるんだからな。
でもしょうがないのだ。
時は一刻を争うのだから。
私は口に含んだポーション……SSポーションを男に飲ませる。
かっ……! と男の体が強く発光。
やがて……光が収まる。
「うう……私は……一体……」
「「「リーダー!」」」
赤髪眼帯男が目を覚まし、体を起こす。
ふぅ……これで一安心だね。
「…………貴女は?」
「あ?」
男は……私を見て、頬を赤く染めていた。
「……なんと、美しい。聖女神キリエ様……でしょうか?」
聖女神様か。なんか慈悲深いすごい神様って聞いたことあるな。
「違えよ。私は、セイコ。マデューカスの皇后だ」
「皇后陛下でしたか! これは、大変失礼いたしました……」
男が立ち上がろうとして、ふらつく。
私は男を支えてやった。
「ほら、これ飲んでおけ。血ぃ失ってるんだから」
「はい……お心遣い、感謝いたします。皇后陛下」
男がごくごくと造血剤を飲む。
まったく……ふらふらなのに、女に色目使ってんじゃあないよったく。
「じゃ、私はこれで。謝礼とかそういうのは、そこのめがね執事に話し通しておけ」
「あ、あの! お待ちください! 皇后陛下!」
「んだよ?」
男は立ち上がり、私の前で跪く。
「私はS級冒険者パーティ【黄昏の竜】リーダー、【ノアル・カーター】と申します!」
「…………」
「このたびは仲間の命を助けてくださり、誠に感謝いたします。そして私の怪我も……」
そのとき、ぱさ……と彼のはめていた眼帯がとれた。
そして……ノアルが驚愕の表情となる。
「目が……目が見える! 呪われていた……左目が!」
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~」
まあ、うん。
どうでもいいんだ。
「要件はまた今度。じゃ」
「あ、お、お待ちください! この目についても説明を……」
「じゃかーしー!」
私は思わず声を荒らげる。
「今何時だと思ってんだい! 子供が寝る時間だろうが!」
「あ、え……す、すみません……」
「S級だかノアルだか呪いだかしらねーが! こっちは子供寝かしつけてたとこなんだよ。私がいなくなったら、子供がさみしがってしまうじゃないかい!」
「! そんなにも若くお美しいのに、お子様がいらっしゃるのですね……」
「そうだよ。じゃあな。ユーノ、後頼む」
私は急ぎ、退出する。
背後でノアルが、つぶやく。
「信じられない……私の呪われし目は、一生治らないと、高名な呪術師ですらさじを投げたというのに……あのお方は……一体……?」
「マデューカスの聖母様でございます」
「聖母……なるほど……」
ノアルをユーノに任せ、私は寝所へと戻る。
息子……アンチの部屋だ。
起きてるかな?
起きてないでおくれよ……。
がちゃ……。
そろり、と部屋に入る。
私はベッドへと向かう。
アンチは……目を閉じていた。私は…………
「アンチ。寝たふり、しなくていいぞ」
ぱちっ、とアンチが目を開ける。
ああ、アンチ……。
「ごめんなしゃい、かぁたま……」
銀髪に、ふっくらとしたほっぺ、そして……魔銀のごとく美しい瞳。
この子が私の大事な息子、アンチ=フォン=マデューカス。
3歳。
「うそちゅいて、ごめんなしゃい……」
「おお! アンチ! 謝らなくていいんだよ! こっちこそ起こしちまってごめんなぁ……!」
私はアンチを抱っこして、よしよしとあやす。
……そう、この子は私が帰ってきたとき、目をつむっていた。だが、寝息を立てていなかった。
私が出て行ったときに、すぐ起きちゃったんだろう。
でもこの子はさといから、すぐに私に何か緊急の仕事が入った、とわかったのだろう。
で、私のせいで起こしたとなれば、私に申し訳ないってことで、寝たふりをしていたのだ。
「ううん、いいのぉ。かぁたまおちごとだもんっ」
悲しんでも、さみしがってもないように、元気に言うアンチ。
でもなぁ……さみしかったのは目に見えて明らかだ。
さっきから、私に強く抱きついてる。
まだ3歳なんだ。母に甘えたくて仕方ない時期なんだよ。
「ほんと……ごめんな。どうしたら、母様を許してくれる?」
すると……。
「どうしたらもなにも、ぼくは、ゆるしてます! かぁたまは……おちごとがんばりました! えらいです!」
「おお……」
アンチ、ああ、アンチ……。
なんていい子なんだい!
私はきゅーっとアンチを抱きしめる。
「かぁたま……ふしぎです。かぁたまはいつも良い匂いします。いつも暖かいです」
「そりゃこっちの台詞だよ。アンチはいつも暖かいなぁ」
どれだけ疲れてても、アンチをぎゅっと抱きしめると、疲れが一気に吹っ飛ぶ。
私の作る薬なんかより、よっぽど、アンチはすごい。
「アンチ、さぁもう寝ようか。今日は朝まで母様が抱っこしながら寝てやるぞぉ」
「わーい!」
私はアンチとともに、ベッドで横になる。で……。
「ぐー……セイコぉ~……♡ しゅきぃい~……♡」
……今のやりとり中も、ずぅうううううっと、寝てやがったアホが一名。
アスベル=フォン=マデューカス。
私をこの国に招いた、現皇帝だ。
顔は結構整っており、剣を使えば帝国1の、まあまあすごいやつだ。
が、その実態はアホ。
アホ犬。まったく、この騒ぎで一回も起きないんだから、たいしたやつだよ……。
「さみしかったら、父様を起こしてもよかったんだぞ?」
「とぉたま、おつかれぐーぐー、だったので」
「なるほど……ああ、アンチ。おまえはほんとうに、気遣いの出来る、最高の息子だよ」
「きゃー♡」
隣にアホだが愛する夫、その逆側に可愛い息子。
二人に挟まれた状態で、私は目をつむる。
……現実世界にいた頃、寝付くまでに結構時間がかかった。
でもこっちに来て、皇后となって、この二人と寝るようになってから……。
私は、寝付きがすごくよくなった。
どんなにすごい催眠薬よりも、こいつらと一緒に寝る方が、ずっとよく寝れる。
だからまあ、私はこの親子のこと、自分が思ってるよりも、愛してるのかなぁ……って思ったのだった。
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