旅路29「聖女フリージア」
原作最終話です、よろしくお願いします。
準備と言ってもフリージアがやることはそれほど多くない、まずは最初にイワティスであった結婚式の詳細な聞き取りからだ。
この内容は多少美化して聖女としての実績を発表する際に使われるのだろう。
噂を基に適当な実績を発表して、後からそれはただの噂で、デマだったなどという事が判ってはまずい。
民衆に対して耳障りが良く、且つ「噓は言っていない」という内容の文章を作成するための裏取り調査だ。
しかし実際の話を聞くと、あまりフリージアは活躍しているとは言い難かった。その結婚が成立したのはあくまでポートマン、ロイエスタール両家の努力の結果であって、むしろフリージアよりも花嫁リスティールの方が目立つくらいだ。
「フゥ・・・ならばここは『結婚を認め祝福したのがフリージアである』という部分にクローズアップして、そこまでの過程は詳しく語らぬ方が良いだろう。シャーリアスの名のもとに二人の結婚を認め、祝福する役をお前がやったと言うのは本当なのだな?」
「はい、それは確かに」
「うむ、ならばシャーリアス様の威光を魔族にも認めさせた・・・とも言えるか・・・」
その他にも奇跡が起きたと言われる「刃返しの儀」での『剣切り』が事実である事など、主に人族に、そしてシャーリアスに都合のいい部分が抜き出されていく。
質問に答えるフリージアの脳裏に、リスティール様に愛情を寄せるイグナス様や、ピリオド・マクレーン、その娘エリスの顔がチラつく。
自分が質問に答える度に都合よく抜き出されるその「事実」は、お互いに努力し、歩み寄って来た二つの最前線の街の人達、特に魔族側の人々の努力については考慮されていない。
「急ごしらえだが儀式用の衣装の仮縫いも出来上がってきておる、一度袖を通してみるがよい」
そう言って案内された試着室で着せられたのは、上質な絹に、あらかじめ用意されていたであろう金糸、銀糸の刺繍やレースを縫い付けた豪奢なものだった。
自分の背丈よりも長いヴェールに、たっぷりと余裕を持たせた正絹の衣服、これに更に宝石類まで縫い付け、遠くから見る者にも光り輝く様な印象を与えるような衣装となるらしい。
一体これ一着で何百万レイア・・いや宝石まで含めれば何千万レイアになるのか・・・
これだけのお金があるならラミア退治の依頼をギルドに頼む事も出来たのでは? このような儀式の為には湯水のようにお金を使うのに、村人を救うために出すお金は無いと言うのであろうか??
そんな自らの憤慨を部屋に尋ねて来たレインにぶつけると、レインは「まあそうなんだろうね~、村人救ってもそのザッハールってオッサンには何の得も無いし」と、事も無げに答えた。
逆にこのような儀式には人が集まる、人が集まれば王都全体が活気づく。食料品も酒場も、宿屋も土産物屋も、多くの人が儲かる。すると教団の評判も良くなる、献金や寄付も集まって司教の懐も潤う・・・どっちが得かと言われればそれは比べるまでもない。
レインの言う事も解る。だがフリージアは思うのだ、そう言う損得勘定を抜きにして人に希望を与えるのが信仰なのではないかと。
「でも損得勘定を抜きにして人の為に働く人って、どんどん自分が擦り減っていくんだよねぇ・・・」
理想を語る自分とは逆に、現実を語るレインのその言葉にドキリとした。
確かに儲からない仕事ばかりを引き受け続けたらどうなるか、それで教団の運営が成り立つのか。それでも「人の為に」と教団の為に働く人はいるかもしれない。
だがそれは清貧と言えば聞こえはいいが、信仰や正義を理由に、個人の優しさややる気に付け込んで、割に合わない仕事を押し付けているだけとも言えるのではないか。
そしてその究極の形を押し付けられ、擦り減り切ってしまった人を、私は知っている。
全ての人族の為に、やりたくもない仕事を神から押し付けられた人を。
◇ ◇ ◇ ◇
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「フリージアさん、急な事で驚きましたが、おめでとう・・・でいいのかしら?」
儀式の二日前、王都に到着してすぐに、シャーリアス大聖堂に挨拶に訪れた聖女ナレイアからそう言葉をかけられ、フリージアは思わず席から立ち上がった。
威厳を保つ為であると、今も儀式用の服ほどではないが、高位司祭の着るような金ぴかな衣装を着せられている自分に対し、ナレイアはいつも通りの地味な地母神の僧服だ。だがその気品とオーラは唯人とは違う雰囲気を醸し出している。
(ああ・・・これが、本物なのだ・・)
フリージアはそう思わずにはいられない。
「私にとっても急な事でどう言っていいのか・・・とりあえずありがとうございます」
「これでも一応『聖女』としての経験だけは長いから、何かあったら相談してくださいね」
「ありがとうございます」
相談したい事など山ほどあるような気がするのに、どう言葉にしていいのか分からない。
そうしている内に、もう儀式は明後日に迫っている。
地母神ニースの聖女ナレイアの他にも、すでに王都入りしている、商売と契約の神であるウカノーの司祭、その他さまざまな小さな宗派の関係者・・・
フリージアがやる事と言えば、呼ばれた際に進み出て拝命の言葉を口にする事、聖杖と聖女印を受け取り民衆に手を振る事位だ。
それほど入念に打ち合わせる事も無く、憶えるべき台詞も無い。だがこれほど大きな儀式に参加するのは初めてだった。しかも主役でだ。
関係者のリハサールも進み、会場となる大聖堂は隅から隅まで磨き上げられる。
その流れの中に身を置き、夜になったらレインに話を聞いてもらう・・聖堂から出る事も許されず、そうしていよいよフリージアは聖女認定式当日を迎えるのである。
◇ ◇ ◇ ◇
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大聖堂前の広場は新たな聖女の誕生を一目見ようと、多くの人でごった返していた。
そしてその中にはペインとレインの姿も。
壇上にシャーリアス教団の司教ザッハール・ニルスが上がると、その群衆が水を打ったように静かになる。
最初に司教による聖句の朗読があり、此度シャーリアス様の神託により、聖女と認められし働きをした神官が現れた旨を発表。
フリージアが成しとげたという、いささか偏った功績が読み上げられ、特に長年分断されていた人と魔族を融和させたという部分では民衆から多くの歓声が上がった。
フリージアは司教の傍らで、ピカピカの衣装を着たまま目を瞑ってそれを聞いている。
魔族側の努力やリスティールという女性の見せた才媛たる輝きを全く無視したその演説に、フリージアは何を思うのだろうか。
その後、各光の神の教団の代表者が壇上に上がり、祝福と認定の言葉を表し儀式は大詰めを迎える、それをペインは感情の籠らない目で見つめていた。
「ねえ、ペイン、このままじゃ本当にフリージアは聖女になっちゃうよ、いいの?」
「・・・・・・・」
良いも悪いもない。
確かに教団側が強引なやり方をしたのもあるだろう、フリージアがそれに流されてしまったと言う事もあるだろう。だが最後は自分で決めるしかないのだ。
フリージアが自分でそう決めたなら、ペインには何も言えない。
たとえ後でどれほど後悔しても、それが自分で決めた事ならば納得できる。一番いけないのは自分の進む道を他人任せにする事だ。
今ペインがフリージアに何か働きかければ、その時は良くても、後でフリージアにとって大きな後悔に繋がるかもしれない。
やがて司教ザッハール・ニルスの手より聖杖と聖女印がフリージアに手渡され、フリージアがバルコニーから手を振ると、民衆のボルテージは最高潮に達した。
その衣装もさることながら、目を引くのはそのフリージアの美貌と美しい金髪である。
その「美しすぎる聖女」の誕生を見守った群衆は、興奮冷めやらぬまま家路についた。
そしてその晩の酒場の話題は新しい聖女の誕生と、その儀式の事で占められる事になる。
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ペインとレインは酒場の隅の席でそれを聞いていた。
聖堂前の広場で実際に儀式を見たらしい職人風の男が得意げにそれを語り、行けなかった者が羨ましそうにそれを聞き、最後は「聖女様に」乾杯。
何度繰り返されたか分からないその乾杯の声と、酒場の喧騒とは裏腹に、ペインとレインのテーブルはまるで通夜のようであった。
大聖堂への宿泊を許されたのは儀式当日まで、儀式が終わった途端ペインとレインは、すげなく大聖堂を追い出される。
「フリージア・・・綺麗だったね」
「ああ・・」
「ペインってばそんなに落ち込まないでよ! オレはずっと傍に居てやるからさぁ!」
「別に俺は落ち込んだりしてねぇぞ!?」
「もうっ、本当にペインは意地っ張りなんだから・・・素直に寂しいって言えばいいのに、オッサンが拗ねても可愛くないよ?」
「うるせぇ、ほっとけ!」
そう言いながら酒を飲むペインの態度は明らかに拗ねていた、ジジイの下に居るのが幸せだとは思えない。だが自分なら幸せにしてやれるとは、ペインには口が裂けても言えなかった。
大聖堂で聖女をやっている間は少なくとも衣食住は保証される、それが悪いこととも思えない、ともかくフリージアは聖女になる事を選び、今日、それは認められたのだ。
「ま、フリージアが自分で決めたんだ。しょうがねぇだろ」
「ハイハイ、それで、ペインはこれからどうするの?」
「そうだな・・これから寒くなるし、南の方にでも行ってみるか」
「分かった、じゃあ飲み過ぎない様にね、オレはちょっと用事あるから先に帰るよ」
「あん?用事、何の用だ?」
「へへ、内緒♪」
レインはそう言って酒場を出ていく。
後に残されたのはペイン一人だ。
レインもこうやっていずれ離れていくのだろう、約束では10年と言ったが、別にペインは本気でレインを10年も拘束するつもりはない。いずれレインが将来進むべき方向を見つけたならば気持ち良く送り出してやるつもりだった。
(寂しいなら素直に言えばいい・・・・か)
イグナスやリスティール、フリージア、レイン、そしてピリオドの娘、エリス。
そう言った優秀で前向きな若者たちを見る度に、ペインは既に自分達の時代が終わったのだと言う事をひしひしと感じていた。恐らくピリオド・マクレーンもそう感じたのではないのだろうか?
だがそれで良いのだ。
次の時代は若い奴らが作る。そして、寂しいからと、そこに自分のような老いぼれがいつまでも関わるべきでは無い。
もちろん経験不足な若者を補助する人間は必要だ。だがペインやピリオドなど戦い、殺す事しか出来ない古い戦闘職の人間はこれからは必要ないのかもしれない。
ペインの脳裏に『老兵は死なず、ただ消え去るのみ』という言葉が過る。
「そんな格好いいものでも無いか・・・・」
ペインは自嘲気味にそう呟くと、グラスに残った酒を一気に煽った。
◇ ◇ ◇ ◇
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翌日、出立しようとするペインは気温の低さに顔を顰める。
昨日の酒がまだ残っているせいもあるかもしれない。
「ちょっとぉ・・ペインってば、昨日オレ、飲みすぎんなって言っただろ? もう、しょうがないなぁ・・・」
「ちょっと黙っててくれ・・・う~、クソ、頭いってェ・・・」
それでもしばらく歩いている内に段々と酒が抜けてくる、隣を歩くのはレインと馬一頭。
ここ最近3人で歩く事に慣れてしまった為、何だか寂しい気分になる。
だが、ほんの半年ちょっと前までは一人で放浪していたのだ。
レインと二人なのにもまたすぐ慣れるだろう・・いや、いずれまた一人になったとしても、ただ元に戻るだけだ。
ペインは馬の轡を取りながらのんびりと歩いて行く。日が出てきて少し寒さも和らいだ。南に行けばもう少しマシになるだろう。
そんなペインの隣に並びかけてくる一人の神官がいる。
擦り切れた神官服の裾を見ると旅慣れた人間のようだ、足の小ささから女か。
そう思いふと顔を上げて隣を見ると、そこにいたのはフリージアだった。
「は?」
思わずペインの顔が呆けた様な間抜け面になる。
その隣ではレインがいたずらっ子のような表情を浮かべて「ププッ!」っと噴き出している。
「お前・・・・何でここに居んだよ・・だって聖女・・・えっ?」
驚きすぎて片言になったペインに、フリージアは何でも無い事のように言った。
「ああ、聖女ですけど・・・私にはやっぱり無理だと思ったんで、辞めてきました!」
「辞めた!? 聖女を!?」
もはやこいつが何を言っているか分からない、だがフリージアは何故か当たり前のようにペインに付いて来ようとしている。
「辞めたって・・・お前、あれだけ大々的に儀式とかやってよ、それで認定されたんだろ? 聖女を勝手に辞めるとか、無責任すぎるんじゃねぇのか?」
「それ、ペインさんだけには言われたくないんですけど!?」
フリージアは昨日、確かに聖女に認められた。
儀式が終わってから教団内は忙しくなり、司教ザッハール・ニルスを中心に、儀式の後片付けや新体制への移行で一気に慌ただしくなる。
フリージアはそんなバタバタしている教団幹部や職員たちを見て、本当に自分でいいのか・・・と。
今更ながら怖くて体が震えて来たのだ、本当は自分にこんな役目は相応しくない、自分は唯の見習い神官なのだ。
そんな時思い出したのがナレイア様の言葉だった。
「何かあったらいつでも相談してくださいね」
本物の聖女様はそう仰っていた。フリージアは藁にも縋る気持ちで、今だ大聖堂内に留まっていたナレイア様に面会し、今まであった事と今の気持ちを告白したのである。
「なるほど・・・ザッハール・ニルスも相変わらずですね」
聖女ナレイアはそう言ってため息をついた。
「それでフリージアさん、貴女はどうしたいのかしら?」
「分かりません・・もうどうしたらいいのか、でも一つだけ分かる事は私は聖女なんかじゃありません・・・出来るなら、こんな聖女なんて言う役職などいらないから、またペインさんやレインさんとの生活に戻りたい・・・」
「そう・・ですか。ならばお辞めになったらいいんじゃないかしら?」
「えっ・・・・?」
思わぬナレイアの言葉に、フリージアの涙が引っ込んだ。
「ですから、聖女を辞めたらいいと言っているのですよ。ふふふ、勇者を辞めた人がいるんですから別に聖女を辞める人間がいたっていいでしょう。それで放浪生活に戻ると言うなら、云わば「放浪の元聖女」と言った所ですね、ふふふふ」
そう言って楽しそうに笑う聖女様の顔は穏やかで、決して私を揶揄ったり馬鹿にしている様子は無かった。
「そんな事が許されるのでしょうか・・・」
「どうでしょう? でも出来ないという人間に無理にやらせても良い結果は得られないと思います。同じ出来ないにしても「やってみたい」という人間になら任せてみるのもいいですが、フリージアさんはやりたくないのでしょう?」
フリージアはその言葉にハッキリと頷いた。
「ではしょうがないですわね。それでも確かに辞めるなら替わりの人間が居ないと不味いかも知れませんわねぇ・・・・」
顎に人差し指を当ててそう呟くナレイア様。
「そんな・・・聖女の代わりなんて・・・」
「あら、そんなに難しく考えることは無いのですよ、貴女の目の前に居るのは誰?」
「・・・ナレイア様です」
「そうですね、そして私は20年以上聖女をやっているんですよ?」
頭の中に「自分に出来ないと思ったら、出来る人を頼ればいいんです」と言うリスティールの言葉が突然揺り返しする。
戦う事は護衛に、料理は料理人に・・・そして聖女の役割は本物の聖女に。
適材適所と言うならば、これ以上に適材が他に居るだろうか?
だからフリージアは泣きながら頼んだのだ「ナレイア様、私を助けて下さい、私を聖女の役目から解放してください!」と。
それに対して聖女ナレイアは「ええ、実は私、ペインから面倒事を押し付けられるのには結構慣れているんですよ?」と、そう言って笑った。
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「だから私はもう聖女じゃありません、『元聖女』なんです!」
在位期間1日。こんなふざけた聖女が今まで居たであろうか?
フリージアはその後、ナレイアと相談してシャーリアスの聖女の地位を、地母神ニースの聖女、ナレイアに兼任してもらう旨の委任状を作成し、そこに署名と聖女印を押した。
司教ザッハール・ニルスにとっても、こんな結果になるとは思いもしなかったに違いない。
自分達の意見を都合よく聖女の言葉として利用する為、周到に用意した聖女フリージアの聖女印が、まさか聖女ナレイアへの委任状に最初に使われるとは。
しかも認定式が終わったと言う事は、シャーリアス教団の中でフリージアの位階はその時点で司教ザッハールよりも上である。
なのでフリージアが署名捺印したその書類は、シャーリアスとニース、それぞれの教団の最高位の聖女同士が取り交わした正式な書類なのだ。そんなものが聖女ナレイアの手にあってはザッハールにはもうどうする事も出来ない。
それを聞いたペインは思わずザッハールに同情しそうになり、やはりそんな事はしなくてもいいかと思い直す。
教団内の立場でも位階でも上、そして政治的圧力も賄賂も、勿論ハニートラップもあの女には効かない。
ナレイアがすぐ上に居る限り、あのジジイ共も、もう以前のような好き勝手な真似は出来ないだろう。
世の中には他人の為に何かする事を全く苦にしない人間がたまにいるが、ナレイアはその類の人間だ。
シャーリアスの教団も、地母神ニース教団のように多少マシになるかもしれない。
「はは、、はははっは、あっっはっはっはっはっはは!!」
ペインは笑った、こんなに腹の底から大笑いしたのはここ20数年で初めてかもしれない。とにかく痛快だった、滅茶苦茶だ。だけど気分爽快とはこの事を言うのではないか!!
「もう、笑い過ぎですよペインさん! レインさんに聞きましたけどこの後は南に行くらしいじゃないですか、私もついて行っていいですか?」
あの時レインの言っていた用事とは、せめてペインの行先だけでもフリージアに知らせようと大聖堂に忍び込む事だった。
そして忍び込んだ先でナレイアとフリージアに会い、脱出にも手を貸したのだ。
ペインは笑い過ぎて出た涙を拭いながらフリージアに聞いた。
「一緒に来るのか?」
「ええ、出来れば。・・・私に出来るのは奇跡が3つと、放浪中の料理。後、体の方は気に入ってもらえると思うんですが、どうでしょう?」
どこかで聞いたような言葉だった。
それに対しペインは「ま、いいだろ」と答える。
「まったく、素直じゃ無いなぁ? 本当はフリージアが戻ってきてくれて嬉しいくせに」
レインがそう突っ込み、フリージアが「そうなんですか?」とペインに確認する。
「うるせぇな・・・」
照れたように鼻を掻きながら、ペインは再び歩き出す。
放浪の元勇者と、元聖女の旅の始まり。
それは初冬の良く晴れた日の午後で、日差しは温かく、3人の向かう街道の風は優しく頬を撫で、空は青く澄み渡っていた。
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_______エピローグ。
聖女認定式の翌日、突然聖女を辞め、行方知れずとなった聖女フリージア。
だが彼女はきちんと引き継ぎの書類を残しており、シャーリアスの聖女はナレイアが兼任する事になった。
ナレイアは聖女失踪の翌日演説し、聖女フリージアは自分がまだ未熟である事、そして市井の皆さんと共にありたいという想いの為、旅を続ける事を選んだと民衆に訴えた。
「もしかしてあなたの所にも、聖女フリージア様が来るかもしれない」
その言葉に民衆は心踊らされ、聖女失踪の混乱は起きずに済む。
それから暫く概ね平和な時代が続いた。
北の旧魔王領とオスカの街の交流は深まり、領主夫婦以外にも魔族と人間で結婚するものも現れ始める。シャーリアス教団も綱紀粛正が図られ以前のように羽振りの良い生臭坊主は減ったという。
そして、それから約20年後、ペインとの旅を終・え・た・フリージアが大聖堂に帰還する。
その頃既に老境に差し掛かっていた聖女ナレイアは、フリージアに聖女位を譲り正式に引退。穏やかな余生を送る。
聖女に復帰したフリージアは放浪の中で得た経験や知識故に、歴史上最も民衆に近い聖女と呼ばれ、親しまれた。
そんな聖女フリージアのやった事の中の一つに、ある物語の改編がある。
その物語とは『放浪の勇者』と言う児童向けの物語。
「ふふふ・・・ペインさんはこんなに格好良くありませんから」
そう言って聖女が自ら改編した物語の主人公は、下品で、野蛮で、助平で、とても子供に読み聞かせる事の出来ない内容だった。
あまりに破廉恥な内容に「本当に聖女様が書いたのか、友人だとか言って聖女様の所にたまに遊びに来る、少しガラの悪い女性が書いたのでは」と言う噂もたびたび出るが、その主人公の人間臭く、悲しく、時に胸躍る物語は、主に成人男性を中心に人気を博したという。
聖女フリージアが改編したという、物語のその章のタイトルは
『放浪の元勇者、ペイン・ブラッド』
実際に見たと言う者に聞いた話では、聖女はその物語を記す時、いつも優しい目をしながら懐かしそうに微笑んでいたという。
_______放浪の元勇者、ペイン・ブラッド・完。
ここまで読んで下さりありがとうございました。需要があるようなら3章「エルドフィスア編」を考えていたのですが、無いようなのでここで完結します。
R18>R15への修正で不自然に短くなった話もあるかと思いますが、楽しんで頂けたのなら嬉しいです。この後、ペイン・ブラッド《ゼロ》と言うペインの勇者時代の話を全9話で書き終えてこのシリーズを終わりにしたいと思います。それでは本当にありがとうございました。
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読んでいただき有難うございました。




