旅路28「大聖堂入り」
前回、今回とやっぱりエロを削ったら短めになりましたwあと2話、お楽しみください。
結局昨晩はレインの勢いに押され、三人で同じベッドで眠ることになった。
別に旅の間には同じ天幕で3人で眠る事もあるのだ、今更部屋が同じだの同じ布団を共有しただの、そんな事をどうこう言うような関係ではない。
だけど昨晩は・・・
(ああ、シャーリアス様・・・私は何と罪深い事を・・・)
翌朝目覚め、正気に戻ったフリージアは深い後悔にに襲われた。
ペインに身体を許し、みだらな行為をした翌朝にはよく見られる光景なのだが、今回は特に反省の度合いが大きいように見える。
起きてまず最初にしたのは神に「浄化」を願う事だった。一瞬にして清潔さを取り戻す寝具と体を見て、確かに連れ込み宿の清掃員としてはこれ以上優秀な人間はいないかとも思う。
それにしても・・・・
元々規則正しい生活をしていたフリージアは昨日あんな事があっても定刻に目覚めるが、ペインとレインは自堕落を絵に描いたように未だ寝こけている。
とても乙女とは思えないレインの寝相は足を大の字に広げていて、見ている方が恥ずかしくなる。
フリージアは二人の身体に布団をかけ直してそれを隠してやり、出発に向けて旅装を整えた。
__________
_____翌日。
こちらはフリージア様だけ連れ帰れば良いのだが、フリージア様がどうしてもというので付いて来る事は許すが、遅れるようならば遠慮なく置いて行く。
聖堂騎士はペイン達にその様に宣言した。
司祭とフリージアが馬車に、護衛の聖堂騎士2名が馬に乗る。今回はそれに二人乗りでペインとレインがついて行く形となった。
だがいくら二人乗りとは言え、馬車や鎧を着た騎兵に遅れる訳も無いと思っていたが。馬車は作りが良いらしく、スピードを出しても揺れにくい作りになっているようで、市井の乗合馬車とは明らかにスピードが違った。
二人乗りで必死について来る二人を、馬車の窓から心配そうに見守るフリージア。
「せめてレインだけでも馬車に」と訴えたが「シャーリアス信徒でもない者をこの大聖堂の馬車に乗せる訳にはいきません」と断られてしまった。
まあたとえ「乗っていい」と言われても、レインならば「こんな男と同じ馬車に乗るくらいならペインと一緒が良い」と言いそうだが。
そして半年近くかけ、寄り道をしたり温泉に寄ったりしながら進んできた道を、最短距離で飛ばし続ける事3週間。本格的な冬が来る前に一行は首都である王都・カナンに到着する。
遠くからでも良く見える大聖堂の尖塔を見て、ペインが複雑な顔をした。。
◇ ◇ ◇ ◇
______________
フリージアにとってはほんの少し前にここで一年だけとはいえお務めをしていたというのに、大聖堂の建物は半年ぶりなだけで随分と冷たい印象を受けた。
中で作業している神官たちの神官服は染み一つなく、皆清潔で栄養状態もいい。騒ぐ人間がいないからひっそりと静まり返っている。
そんな中、くたびれた旅装や神官服で聖堂内の廊下を歩くフリージア達は周りから浮いていて、すれ違う人すれ違う人がみな振り向いて眉を顰める。
多くの人が出入りする礼拝堂。フリージアがペインの元へ行くように言われ、誓約をかけられたその同じ場所に、司教ザッハール・ニルスは居た。
「よくぞ帰った、フリージアよ!」
(ケッ、何でこうお偉いさんってのは「よくぞ」から話し始めるんだろうなぁ?そう言う決まりでもあんのか!?)
「後ろに居るのはペイン・ブラッドか。久しいな、息災であったか?」
「お蔭さんでね、何とか生きてるよ。残念だったな、死んでなくて」
不機嫌さを隠そうともしないペインの態度に司教はため息を吐く。
「此度はフリージアを呼び戻したのだが・・・なぜ貴様まで一緒に戻って来た? 神殿の管理下で勇者職に復帰すると言うならば歓迎するぞ、その態度は改めてもらわねばならないがな」
「誰が復帰なんかするか、冗談じゃねぇ!」
「あのっ、私が、私が頼んで付いて来てもらったのです」
「ふむ、そうか・・・フリージア、すぐに用件は迎えに行った司祭から聞いておるだろう。聖女としての認定式は10日後だ、シャーリアス様やニース様だけではない、光の神々に属する各宗派の関係者もお集まりになる。そのつもりでいるように」
どうやら大聖堂側はフリージアを確保した時点で早馬や伝書鳩での連絡を行い、フリージアが帰って来る間にどんどん準備を進めていたらしい。すでに王都に入っている関係者も居るという。
「先に外堀を埋めて断れなくするつもりかよ、相変わらずやり口が汚ねぇな」
こういうやり方は優柔不断で流され易い奴には効くだろう「もう全部準備は出来てしまっていて、今更キャンセルはできません」って奴だ。
「ペイン・ブラッド、貴様が我らを嫌っているのは理解しているが、我らも民衆の事は一応考えておるのだ。我らのやり方が気に食わないと言って貴様が今私達を含むこの国の上層部を全員殺しても、残るのは無政府状態の国民だけだぞ?」
「そんな事は分かってらぁ! だからブッ殺さずにいてやるんだろうが・・・」
こんな奴らでも民衆の扇動は上手い。国というのは誰かが方向性を決めて先導して国民に同じ方向を向かせなければ運営は成り立たない。
その旗振り役は清廉潔白でもいいが、必ず汚れ役というのはどの国にも居るものだ。
それが軍であったり、政治家であったり、宗教組織であったりの差はあるが、ともかくすべての国民が賢く完璧な善人などという事はありえない。
そして問題のある国民を従わせるには、より大きな力やカリスマが必要だ。
例えばヤクザクランを騎士団が取り押さえられるのは、騎士団の方がヤクザクランよりもより大きな暴力機関だからである。
言い方は悪いが、愚衆を従わせるにはより狡猾な人間や組織が必要なのだ。
事実愚衆は今聖女を望んでいるらしい、望んでいる理由は恐らく「何となく」だ。カッコいいからとか、見てみたいからとか、大して何も考えて居ないだろう。
このジジイが望んでいる事は、恐らくついでに自分の権力を拡大したり、より強い発言権を得る事が目的だろう、だが、やろうとしている事は国民の支持を得ている。
フリージアが聖女に認定されれば国民は喜ぶだろう、だからそれを推進している司教ザッハール・ニルスは国民にとって正義だ。
そこにフリージアの意志など関係ないとまでは言わないが、大抵愚衆は自分の信じたい事しか信じない。
だからこのジジイは民衆の望みを叶える方向で立ち回り、平和的に扇動する。そしてその過程で自分だけが利益を得る。
それでも民衆にとっては知らないことはどうでもいい事だし、自分達の希望通り聖女が見れて「よかったよかった」となる訳だ。
ここでフリージアが「嫌だ」と断れば最悪、聖女を騙った「偽物」扱いを受ける可能性すらある。
何が正しい正しくないではない。愚衆が「こうだったら良いのに」と思う事に逆らう人間が悪なのだ。
こう言った政局にあってはペインの個の力は役に立たない。
ここで暴れてジジイを含め、王族を皆殺しにする事は出来る。
しかしさっきジジイが言ったように、そんな事をしても残るのは無政府状態で暴動と略奪がはびこる、乱れた「元」王国だけなのだ。
今まで黙っていたフリージアが口を開く。
「準備とは、何をすればいいのでしょうか・・」
「フリージア!!」
レインが叫び、悲しそうにフリージアを見る。しかし今まで何とかしてくれたペインは何も言わない。
「ペインさんとレインさんは私の友人です、私の晴れ姿を見てもらいたいので、この大聖堂に滞在する許可を。そしてペインさんまでとは言いません、せめてレインさんとは何時でも話せるように取り計らって下さい」
「・・・・まあいいだろう、話し相手も居ないのは辛いか。よろしい、そのように手配する」
「ありがとうございます」
「だがペイン、貴様はダメだ。聖女様を攫って逃げられたりしても困るのでな、伝えたい事があるのならその・・・レインとか言ったか、そのお嬢さんに託すようにしたまえ」
「チッ、分かったよ」
こうしてペインとレインにはそれぞれ大聖堂の宿舎に部屋を与えられ、聖女認定式まで宿泊できるようになった。
「ねえペイン、本当にフリージアは聖女様になっちゃうつもりなのかな?、そうなったらもう簡単に会えなくなっちゃうの?」
「・・・わからねぇよ。それはあいつが決める事だ」
自分が聖女の器では無い事はフリージア本人にも分かっているだろう。何しろ未だ奇跡を3つしか授かっていない見習い神官なのだ。
それなのに自分が聖女など。
フリージアの性格上、国民を欺き続ける事に罪悪感を感じるだろう。
あいつにとって聖女になる事は、あまり幸せな生き方では無いような気がする、だがペインにとっても今回ばかりは何をすればいいのか、あるいは何もしない方が良いのか判断が付かなかった。
ペインは煙草に火をつける。
大聖堂内にふさわしくない紫煙が漂い出し、ペインはその煙を大きく吸い込む。
だが普段なら気分を落ち着かせてくれるこの煙草も、何故か今日は全く美味いと感じられなかった。
____________つづく
さていよいよ次回R18での最終回です、需要があるなら続けようと思いましたがなかなか厳しいようです。最終回ご、ペインの勇者時代の話ペイン・ブラッド《ゼロ》(全9話)が始まりますので、興味のある方はよろしくお願いします。
皆さんの応援が次話執筆の励みです、気に入って頂けたら↓にある☆☆☆☆☆評価をポチッと押して頂いて評価、あるいはブックマーク、イイね等で応援して頂けるととても嬉しいです!
また感想、レビューなど頂けるとモチベーションが上がります、よろしくお願いします!
読んでいただき有難うございました。




