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旅路14「旅の途中・西へ」

閑話っぽい、ほのぼのH回だった話です。直接表現を削った後どう違和感を無くすか迷いましたが基本方針は一緒で。多分これならR15に納まるハズ・・・




「はぁ!? 勇者ぁ!? ペインがぁ?」

 レインの呆れた様な声が、秋晴れの街道に響く。


 温泉集落での出来事をを説明するのに、ペインが元勇者であった事や、その体質に対する説明をした直後の事である。


 あの時「訳は後で話す」と言っておきながら、色々あってほったらかしになっていた。

 温泉集落でのコボルト騒動が一段落してまた流浪の日々に戻り、街道をただ歩く間の慰みに、レインにはペインの事情を話すことにしたのだ。


 勿論レインになら話しても良いだろうと言う判断の結果だ。

 しばらく一緒に行動した結果、ペインはそう判断した。


「それであの時は、酷い怪我だったクレイ君を癒す為、どうしても早急に精神力を回復させる必要があったのです・・・」

「ふぅん、あの時飲んでた薬みたいなのがペインの血ねぇ・・・奇跡が使えなくなったフリージアがいきなりまた奇跡を連発できるとかおかしいとは思ったよ。オレだって『え?もしかしてフリージアって凄い神官なんじゃないか・・・もしかして聖女!?』って思ったくらいだもん、でもそれはフリージアが凄いんじゃなくて、ペインが凄かったって訳なんだ。」

「面目ないです・・・」


 フリージアはすまなそうにするが、そんなことは無い。


「まあそう言うなよ、コイツはあのガキを救う為に借金背負う覚悟で俺に泣きついて来たんだぜ?お前に出来るか?赤の他人の為にそんな事がよ?」


 ペインの言い分はもっともで、そんな事は余程のお人よしでなければ出来ないだろう、レインもその点についてはフリージアの人間性が「善」であると認めるしかない。


「ハァ・・・じゃあホントにあのクレイって子は運が良かったんだね。命に係わる怪我をした丁度その時にフリージアみたいなお人よしが居て、それを解決できるペインまで居たんだから」


 確かにクレイは運が良かった。だがそれはレインもそうだと言えるだろう、ペインに会わなかったらレインとてあのクイーザの街で今も酷い生活を続けているか、死んでいたかもしれないのだ。だが人の生き死になんてそんなものなのかも知れない、世の中には「たまたま生き残る事が出来た」だけで一歩間違えば違う結果になっていたなんて事はいくらでもあるのだ。

 

「でもそれで納得かなぁ? だってペイン、あのコボルトとの戦いのとき、凄かったじゃん?」


 あの温泉集落での戦いは、レインの前で見せた初めての戦いだった。

 レインとしてはペインが金を持っている事は知っているが、それが何故なのかは知らなかった。


「ああ~、そんで聖女様とも知り合いな訳か、なんかいろいろ繋がったかも」

「理解が早くて助かるぜ」


 普通こんな突拍子もない話をいきなりされても信じることは出来ないだろう。

 しかしレインは信じた。

 そしてそれだけでは無く、今までの出来事をペインが元勇者である事実と結び付けていく。

 

 それはレインのペインに対する信頼と、困難な生活を生き抜いてきたゆえの狡賢(ずるがしこ)さとも言える地頭の良さ、そして嘘を吐くとは到底思えないフリージアがそれを認めているという状況があっての理解の速さだ。


「ま、あの時の事はそれで分かったけど・・・まあ別に何も変わらないよね?」

 そしてレインはそれを理解した上でそう言った。


「ペインはペインな訳だし」と。


 レインにとってペインが元勇者であろうとそうではない・・・例えば傭兵だったりただのゴロツキであったとしても、自分と妹をあの地獄から救ってくれた、ちょっとくたびれた中年男である事は変わらない。

 そして、これから十年の間、盗賊(スカウト)兼愛人として一緒に行動する仲間である事も変わらないのだ。

 しいて言えば「強いって事は荒事があった時に便利だな」と思う位である。


 レインがその事をペインに伝えると、ペインは一瞬ポカンとした顔をした後、顔をくしゃりとゆがめて笑い。

「ああ、そうだな、何も変わんねぇよ・・・」と言ってレインの頭をグリグリと撫でる。

 

 一人前のレディに対し、その扱いはあまりにも子供っぽく、抗議したい気持ちもあるが、レインはそのまま撫でられている。

 髪がクシャクシャになるほど乱暴に撫でられるのは、何だかとても気持ちが良かった。


「ちょっとペイン!子供じゃないんだからやめてよ!!オレだって女なんだぜ!?」


 それでも一応抗議はしておく。怒りながらも口がヒクヒクと笑ってしまい、まるで説得力が無いのだが、それでもオレだって立派な(レディ)なんだ、一応抗議はしておかなきゃね。


「女か・・・確かにな。それじゃあもう半年くらい経って、もう少し肉がついたら味見でもさせて貰おうか(笑)」

 それはペインがオレをクイーザの街から連れ出してくれるときに約束した事だった。妹を地母神神殿の寄宿舎に入れてもらう代わりに、俺はペインの盗賊(スカウト)兼愛人になる。

 だけど今現在に至るまで、オレはフリージア程ペインの役に立てているとは思えない。


「半年?今じゃダメなのかよ?」

 そんな焦る気持ちが思わず出てしまったようなセリフだった。フリージアは神官として、そして女としてペインの役に立っている、なのに自分は何の役にも立っていないのに妹共々助けてもらって、そして今また唯食わせてもらっているだけではないか。


 世話になりっぱなしでなにも返せていない、それが苦しかった。そして今、レインはそうやって十分な食事を与えてもらったおかげで十分標準と言える程度に肉も付いた、女としては役に立てるはずだった。

 フリージア程美人でないのは分かっている、それでも何かの形で恩を返したかったのだ。たとえペインから女として見られていないとしても。


「いや?、そう言えばレイン、お前もあの温泉でゆっくりしていた間に大分肉がついて来たなぁ?」

 温泉地ではコボルト騒動もあったが、それ以外の時間、レインは山菜や畑で撮れる野菜、それから獣の肉などを食べ、ゆっくり温泉に浸かってのんびりした時間を過ごす事が出来た。

 おかげであれだけやせ細っていたレインの身体には女性らしい丸みが出て、ちょうど少女から女性へと変化する時期特有の瑞々しい魅力を発し始めている。

 男避けで汚らしく汚れた格好をする必要もないので、今ではすれ違う旅人が、フリージアだけでなくレインを見て振り返る事もあるのだ。


「そうだよ! それなのにペインってば全然手を出してこないんだもん、見ろよこの色気を!」

 レインはそう言ってわざとらしく()()を作って見せる、しかしレインはどちらかと言うと健康的で可愛らしいタイプなので全く似合っていなかった。


 その姿を見てペインが吹き出し、レインがわざとらしく怒って見せる。いつもと同じようなじゃれ合いにも似たやり取り。しかし今日のペインの結論はいつもと違った。


 今日のペインはひとしきり笑った後、「そうだな、それじゃあ今日はお前と寝るか!それでその気になったら抱いてやるよ、それでいいか?」と。


 いつもと違うペインの反応に、レインは一瞬驚き、そして「パァァァ」っと花がほころぶような笑顔を浮かべて「うんっ!」とその言葉に対する了承を伝えた。


 そんなやり取りを隣で聞いていたフリージアが、何とも言い難い複雑な顔をする。


 まあね、光の神の神官様としては、ペインのしている事はあまり褒められる事じゃない。だけどレインは思う。

(でもそれってフリージアだって一緒じゃん)


 ペインと旅をする間、何度もフリージアはペインに抱かれている。仮にも光の神の神官が、娼婦のように夫でも無い男に抱かれているのを知っているのだ。(それだって褒められる事じゃ無いだろ?)

 

 それはレインの、フリージアに対する可愛らしい嫉妬心。だがそこにドロドロしたものは無かった。

 ちょっと羨ましく思ってしまう事もあるけれど、レインはフリージアの事も大好きだし、信頼してもいるのだ。



◇ ◇ ◇ ◇

_________________



「フリージアはホントに混ざらないの? この天幕(テント)3人入れるんだからスペースは十分だよ?」


 ペインがオレと寝ると言った夜、フリージアは外で焚火をして見張ると言い出した。

 もう秋も深まって来て日が暮れると寒いのに。

 別にオレはフリージアだったら見られたってかまわないし、何なら混ざっても良いんだけどな?


「混ざりませんっ!!」


 まあでも真面目なフリージアの事だからそうなるよね、じゃあ今日はオレがペインを独占しちゃお~っと。


 天幕(テント)の入り口の幕を下ろすとそこは簡易的な二人の空間だ。

 天井付近に吊るされたランプのオレンジ色の明かりに、ペインの筋肉が浮かび上がる。


 フリージアや町の娼婦と比べると、やっぱり俺のプロポーションは子供っぽい。それでもペインは文句を言わないし、失望したような目で見る事も無かった。

 最初ペインはロリコンのケがあるんじゃないかと思ったけど、行動を見ているとそうでもない、色っぽい女ももちろん好きみたいだし、許容範囲が広いって奴なんだろうなぁ、きっと。


「んふふ、ヒゲがチクチクするぅ・・」


 ペインの無精ひげはキスしたり、首筋に唇を這わせられたりするとチクチクするのだが、それが何だかレインには「ペインに抱かれているのだと」いう実感のように感じられて、やけに嬉しかった。


 この日荒野の天幕の中で、レインはペインに抱かれた。

 しかし、それは孤児院の変態ジジイにされた死にたくなるような行為とは違い、温かく、とても安心できる交わりだった。


_________________



(ったく、何でこいつはこんなに俺に懐いてんだろうなァ?)

確かにコイツとその妹を助けはした、しかしその対価に愛人になるよう強要してんだぞ、俺は。


 俺のような中年親父(オヤジ)が若い女を好むのはよくある事だろう、しかしレインにとって俺は自分の父親よりも年上の中年男だ。いくら恩があるとはいえ、金ずくで愛人関係を迫ったりすれば軽蔑するのが若い女の常考だろうに。


 レインはそんな「普通」など関係ないという様子で、俺との関係を受け入れていた。

 むしろ女として見られて悦んでいる節すらある。


 レインからすれば金だけ出して貰って何も要求されないのが一番「得」であるはずじゃねぇのか?

 ペインはそう思うのだが、そこにはレイン自身の自尊心(プライド)に対する理解が欠けていた。


 もちろん貰いっぱなしを「ラッキー」だとしか思わない図々しい女は山ほどいるが、レインはそんなタイプでは無かったと言う事だ。

 レインにとってはやっと受けた恩を少しでも返せると思い、それに対してホッとしている部分もあるのだが、まあそれだけではあるまい。


「ペインが喜んでくれるとオレも嬉しいからさ・・・へへっ」


 最初は抱き合ってみて、その気にならなかったら添い寝でもしてやろうと思っていたのだが、レインのそんな物言いに、このまま何もせずに添い寝だけで終わらせては、かえってレインを傷つける事になるとペインは感じた。

 そして多分それは正しいだろう。

 レインはペインのする行為に身を任せる。


「何か少しデカくなってねぇか?」

 ペインがレインの小さな胸を弄りながら、そんな感想を漏らす。

 それは自分でも感じている、ペインと旅するようになってから、食べたいものを何でも食わせて貰えるるようになった。

 成人したとは言ってもまだ成長中だ、フリージア程とはいかなくてももう少し大きくなるかもしれない。


 最近はもう自覚している、ペインが好きだ。最初にオレを犯したのは孤児院のあのクソジジイどもだが、オレを女にしたのはペインだ・・・と、そう思う事にする。

 

 歳が二回り近く離れていたってそんな事は気にならない。

 ペインの事を思うといろんな感情がオレの中に芽生える。


 ペインは「父親が居たらこんな感じなのかな?」って思う時もある。

 まあ実の父はこんな事はしないけど、だから父親みたいだけど父親でなくて良かったとも思う。


 ペインは見た目は無神経に見えるけど、ああ見えてオレみたいな女でも意外と扱いは丁寧だ。

 前にその事について聞いたら「聖なる経典にも書いてあるだろ? 女を雑に扱う奴は神の罰が当たるからなァ」と言って笑っていた。


 もちろん光の女神シャーリアスの教義にも、大地母神ニースの教義にもそんな一節は載っていない。

 経典の内容を勝手に捏造するのは良くないが、言っていること自体は決して悪い事でもない為、フリージアも注意する事も出来ずに苦笑いしていたっけ。


 あの、オレと違って色白でスタイルが良くて、育ちが良い、美人の女神官。

 今も外で火の番をしているフリージアの顔を思い出すと一瞬胸が痛むが、それは温かく、幸せな時間だった。



◇ ◇ ◇ ◇

___________________



 ゴソゴソと天幕の中から衣擦れのような物音と、男女の営みの声が聞こえてくる。


 それをフリージアは焚火に薪をくべ、火の番をしながら顔を赤くして聞いていた。


 布一枚でしか無い天幕の中の物音や声は外に丸聞こえで、自分がしている時もこうなのだろうかと思うと顔から火が出そうだった。



「あのう・・・もう入っても大丈夫でしょうか?」


 睦み合いの声が聞こえなくなってからしばらく間をおいて声を掛けると、天幕の中から「いいぞ」という返答があった。


 フリージアがその返答を聞いて天幕の入り口の幕を跳ね上げると、なかでは未だ全裸のままのペインとレインが毛布に包まっている。


「服を着て下さいっ!!」

「ええ~、いいじゃん、この方が温かいよぅ♪」


 ペインの胸にしなだれかかったレインが小悪魔のような笑顔をたたえながらそう答える。恐らくフリージアを揶揄っているのだろう。


 天幕の中には二人の情事の匂いが濃く残っている、それもフリージアの顔を赤くさせた。


「んもう! 二人とも、動かないで下さいね! 今浄化の奇跡を使いますのでっ!! レインさんだってそのままでは妊娠してしまうでしょう!?」


 天幕(テント)の外に居ても聞こえる二人の遣り取りで、ペインがレインを抱いた事はフリージアにも分かった。


 既にフリージアの中に「浄化(ピューリファイ)」の奇跡を風呂や避妊薬代わりに使う事に抵抗はないらしい。最初はあれだけ抵抗を感じていたのにだ。


「は~い」

 レインはくすくすと笑いながらそう答えながら(オレ、別にペインの子供なら産んでも良いんだけどなァ)などという事をぼんやり考えていた。



________________つづく




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