6
「レン、変装うまくなってた」
「お、マジ?」
「へー、男をもてあそんでいたんだな」
「だろ?」
「ほめてねーよ」
「すごくね?」
「すごくねーよ」
「どうした悠真。過去から戻ってきたような顔をして」
連は自分の話を止め、たずねる。
どんな顔だよ。自分でも見てみたいわ。比喩だと知りながらも、そんなことを思う。
「なんのことだ?」
俺はとぼける。相変わらず凄い。というか、わけわからない。
「ソラもそんな気がする。はなしてよ!」
そう言ってソラは悠真の腕をはなさない。力強く握りしめる。
「そうね。悠真すぐ、一人で抱え込む所あるから話してほしい」
俺は連をにらむ。
「何が起こるかわかっていたんじゃないのか?」
「さすがに未来予知まではできないよ」
「怪しんだよなー」
「悠真。話して」
優香は真剣な顔をする。
「そうだな。バレるの本当に早いよな」
こうやって浮気はバレていくのだろうか? いや違うなと思いながら、俺は過去を話す。
「そのまえに、場所を変えてもいいか?」
そう言い、走って移動する。
――――――――――
「まず、俺は殺された。そしてここに戻ってきた。ここまではいいな?」
「うん。術の効果でしょ? 術で殺されると、その人は生き返っちゃう。しかも、時間が少し戻って」
「ああ」
「あ、悠真俺に1万くらいお金貸さなかったっけ?」
「貸してねーよ。」
「じゃあ、普通に金くれ」
「あげねーよ」
「……悠真を術で殺そうかな?」
連はそんなことをつぶやき始める。
「やめろ。なにそれカツアゲ?」
「ええー、いいじゃん。一回だけ。一回だけだから。俺の運勢を試させて?」
「ばかじゃない? 俺もその際には全力で抵抗するよ?」
「マジ? ってことは俺が勝てば……」
「戦う前提だった。……しないからね」
「ふーん。別に悠真なら大丈夫だと思うんだけどなー」
ニヤニヤしながら連はその言葉を口にする。
触れないようにしよう。この話題に。
なんか、本当にやってきそうでこわい。これって殺人未遂になるのかな? でも、術で殺した人と殺された人とか、関わっていた人にしか、その過去に戻る前の記憶がないんだよな。やっかいなことに。
「本当は、この能力で、過去に戻りまくることでお金とかゲットできたらいいんだけどね」
優香がつぶやき、悠真はその話に乗っかる。
「そうだな。男は結局経済力だな」
「そうね。その時は喜んで悠真に死んでもらおうかな」
「おい。だから、そういう意味じゃないって。死ぬときの感覚はあるんだからな」
「ソラも、それさんせーい!」
「ソラも⁉」
「大丈夫だよ。悲しいときは慰めてあげるから」
「そういう問題じゃなくて」
「なによ。腎臓を売るのはありか? 貧しい子どもが腎臓一つでiPhoneを買うのはありか? そんな事を考えている暇があったら、悠真の過去の記憶でお金を手に入れるかがあってもいいじゃない」
「そうだな。そんな事書いてる本あったな」
「そうよ。本は実行しないと意味がない。って言ってたのは誰だっけ?」
「いやいや、君たち、どれだけ俺を殺したいの? 俺とお金、どっちが大切なの?」
「そりゃ、悠真のほうが大切に決まってるじゃない」
「どうい」
ソラもうなずきながら答える。
「お、おう。照れるな」
「まあ、死なない程度にならお金だけど」
「そりゃそうだな。生命保険入っても、俺に一円も入らないよな」
「まあ、術で殺されたり、殺すと、記憶の一部が消えちゃうからやらないけどね」
優香はそういって、結論に落ち着く。
「それでもやっている人はいるけどね」
「ね」
「あくしつ」
ソラはそう答える。
「ただ、一般の人にバレてないだけいいよな。もしバレていたら、富裕税みたいに、税金かけられそうだよな。生きているだけで」
「そうね」
「逆に、バラそうと思っても信じてくれないんじゃないか?」
連が疑問を投げかける。
「まあ、体験できないからな。実際に。すごい抽象的だし……どのくらい珍しいんだ? 術使いって?」
「そうだな……珍しいとしかいいようがないんじゃないかな? でも、意外と0.1%とかそうだよな。年収3000万超と同じくらいはいてもおかしくなさそうだけどな」
「それを多いと捉えるか、少ないと捉えるか。そういえば、先進国で障害に一度はうつ病を経験する人は10%とかって聞いたな」
「この時代、隠そうと思っても、隠すことはできないけど、公開しようと思って公開できない物は逆に少ないよね。きっと」
優香はつぶやく。
「そもそ、。術が発動すると、今いる世界とは別の次元に飛ばされる。そして、そこで建物が壊れたとしても、元の世界には何も影響がない。物が壊れても、壊れないみたいなことも起きるし」
術を使うのをやめると、元の世界の方に戻る。だから、術の世界で建物を壊したとしても、もとにいた世界の方にもどるだけだから、建物が治っているということになる。
「まあ、本当はもっと複雑だけど、そんなかんじだな」
具体的には、現実世界と、もう一つの世界の人間が一度に存在し、その二人の人間を一度に操るような感じである。
とはいっても、ゲームの主人公操作しているときと同じ感覚で、そんなに難しくなく、ゲームの主人公を操作している自分と、ゲームの中でプレイしている主人公の2人が活動しているイメージだと、比較的わかりやすくなると思う。
「あの感覚はなれないうちは大変だったな」
「何とも言えない感覚よね。止まっているエスカレーターに乗るときと降りるときに経験する変な浮遊感みたいな」
「へー、そんな感覚するの?」
「そうだよ。ソラは、なれてるからな。ずっと昔から使っているから忘れてるのかもな」
「エスカレーターの感覚のことじゃない?」
「そっちそっち」
「お、そうか。今度乗ってみよーな」
「うん!」