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――――――――――連の変装が溶けたところへ
まあいいや、俺のやりたかったことはできたし。
たとえ、どんな相手がどんなやつであろうと、感情を表現するトレーニングになったよな?
「レン、変装うまくなってた」
「お、マジ?」
「へー、男を弄ぶのだけじゃなくて、変装もうまくねー」
「だろ?」
「ほめてねーよ」
「すごくね?」
「すごくねーよ」
羨ましい。何を言われるか気にしないで、どんどん前に進んでいくやつ。まあ、俺も似たようなものなのだが、ちょっと違う。
どっちかって言うとネガティブな方向に進んでしまうから、上司とかに反感を買われるのだろう。
「すごいよ!」
「そうなのかしら?」
「ありがと、まあ今日はこれから用事あるんだな」
「へー、どんな?」
「あんな」
「わからん。……言いたくないってことだな」
「そゆこと」
「ソラ、どんな用事なんだ?」
「なんか、良くはわからないけど、楽しそうなことみたい」
「ソラでも、わからいのか……まあいいや、ジャーな」
「おう」
そう言って、レンはさっていく。
「なんか、変な人の周りには変な人が集まってくるものなのね」
「楽しいだろ?」
「まあ、そうっちゃそうだけどね」
「ん? どーした? ソラ」
「あれ」
静かな声でいう。人差し指を震えさせながら、方向を指す。
「ソラ……あれ、本当に悲しい人だよな?」
「まあ、たまにやつね」
「違う……なんか、敵意っていうか、危ない匂いがする」
「え? どいういうこと?」
「別に、よくいる人にしか見えないけど?」
ブラウンの髪と目をした少年だった。金髪、黄色の目のソラと比べると、真逆のような存在。
悠真と優香には分からないが、ソラからすると、悲しいやつじゃなくて危ないに見えるらしい。
ということは確かなのだ。
主人が悲しいときに、
人の感情の匂いがわかる。この表現は的確ではない。人の匂いがわかるといったところだろうか? 何を言っているのか? 何をしようとしているのか? そういったことのすべての情報がなんとなくわかってしまう。
逆に言えば、ソラは正直な人としか一緒にいることができない。なぜなら、疲れてしまうから。いつも怒っている親と一緒に育ったと考えるだけでもゾットする。
人間不信。
昔のソラは、今から想像つかないぐらい、怯えていた。
それは誰に対しても。むろん、悠真と優香に対してもだった。
「ゆうま、ちょっと離れよ」
「ん? わかった」
「ユーカも」
「え? うん」
「ソラ……」
かろうじてでたその言葉。
俺は、命を落とす。