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「あ、捕まえたー!」


 キープ。ソラは優香に捕まって(キープされて)いるかのようなニュアンスを込めて言う。


 と言うより、わざとやっている。


「つかまっちゃった」


 ソラと優香はお母さんと娘のようにじゃれ合う。


「で、何の話をしてたの?」


 やばい、こいつ、なぜ話が聞こえてた?


 前時代的異物。表層的感激。生成的恐怖。


 まさかお前……


「まさかお前……太った?」


「どうしてそうなるのよ! 面白くもない」


 なんかそれらしいことを適当に言うのって本当につかれる。前時代的異物ってなんだし、近代的異物とかあんのかな? ヴィーガンとかかな? すいません。


 うまく話をうまくそらすことができただろうか?


 ただ、ヒーローが遅れてくるからヒーローになるのと同じく、死亡フラグは前フリを用意するからこそ、死亡フラグになる。


 いや、ただあれは書くことがなくなった作者が書くことだ。「死亡フラグじゃないからね⁉」ということで、なんかギャグを用意できている感と、文字数を埋めることができたり……異世界の話って結構書きやすそうだよな。テンプレ決まってるし。


「そういやね。優香って彼氏たくさんいるんだね!」


 その瞬間、空気が変わる。俺にもはっきりと分かる。まるで、空中にやばいという文字が書いてあるくらいはっきりと分かる。空気って読めるんですね。


「はい?」


 ため息と、戸惑いと、怒りが混じった声で答える。


「ソラも真似してみるよ!」


「やめときなさい?」


 ソラは純真無垢の……今、悠真によって心がけがされている真っ最中の純真無垢の笑顔でそう答える。


 これはなんだろう……冷や汗というものだろうか? そうですね、すいません。


「ちょっと悠真?」


 「どういうこと? 説明しなさい。さもなければ、死ぬよ?」というようなことを言っているような気がした。


 だって顔に書いてある。


「そ、それより、なんで俺の家に入ってきてるの? 勝手に」


「それより、って何よ? 何がそれよ? やっぱり何かあるんじゃない。ど・う・い・う・こ・と?」


 優香は笑顔で悠真にたずねる。


 どちらかというと、大人の、なんというか、不純な意味ありげな笑顔でたずねる。


 と言うか、いろいろな意味で怖いんですけど。勝手に家に入ってきて、犯罪じゃないですか……?


 そのせいもあってかよりいっそう怖く見える。


 言葉って、こんなにも状況で意味変わるんですね。勉強になりました。


「いやー、ただジョウダンで言っただけで、その場のノリなんですよ」


「そう。……まあいつものことね。それよりも、ソラに


 自分のことは案外どうでも良かったのか、悠真と長い付き合いだからか、ソラのことが心配だからか……とにかく、次の話へ移る。


「良いだろ。楽しそうにしているじゃん。作戦会議とか言って自分の部屋に行っちゃったし」


「何が作戦よ。毎回、ここに来るたびに、驚かされるんですけど?」


「いいじゃん、刺激的な方が好きだろ。ジャンクフード好きだろ?」


「だ、ダイエット中よ」


「何いってんだよ。物語の中だから、


「そういうところだけど⁉」


「大丈夫だよ。だいたい、何だよ、物語の中で『〇〇(キャラ名)はこの世界じゃ可愛い方だ』


というわけで大丈夫だ。この業界の中では可愛い方だ。優香」


「これだけひく愛の言葉は初めて聞いたけどね」


「本当だよな。個性的であれとか言ってるけど、個性的だと他人からいじめられるし大変だよな」


「な・に・が個性的よ」


 悠真節とでもいうのか、またしても変なことというかぐちを言い始める。


 その正確には困ったものだと思いながら、悠真は謝る。


「すいません」


「だいたいね、悠真にはもっと、ソラに対して愛情を持ってもいいと思うのよ。何が愛情かって言われたら困るけど、もっと感情的にというか……何がなんだかわからなくなってきた……えーっと、なんか色々と適当なのよ。悪い方に変なことを教えているわけじゃない気がするから、別にいいんだろうけど、でもでも、もっとまともにソラと暮らしてほしいし、というか、そもそもなんでソラと一緒に暮らしているの? 子どもでもないんだしってところから疑問だし、ソラもそれはそれでなんで満足してるの? 楽しいから? それならそれで、私には言う資格がなにもないのかもだし、悠真には色々とお世話になっているし、たしかにあの時は、悠真のお陰で、今の私がいるというのもあるのかもしれないし、感謝はしているのだけど、そもそも、なんで悠真はソラと一緒に暮らしているのよ? 親はどこにいるの? って前に聞いたときも、死んだって言ったほうが色々と便利なんだよってなによ? たしかに、大体の物語では死んでいるし、親が作品に出てくるものは少ないけれど! せめてそこはいるでも良いんじゃない? なんなのよ? 私の親はいるってことは使いづらいってことでしょ? そうよ、そうなのよ。なら、私にだってせめて一人暮らしにくらいにしてもらっても良いんじゃないの? 私だって一人暮らししたいけど、悠真の家があるなら、私がする必要ないじゃない! 一応私大学生じゃない? 悠真は本当に、昼間から何やってるの? そんなかんじよね。別にお金に困ってないから良さそうだし、実際に困ってないし、色々裏でなにかあるみたいだし……どうすればいいのよ!」


 悠真は時々申し訳無さそうにうなずきながら、優香の愚痴を聞く。


 俺にはこれをすることしかできない。


 正直、何を話しているのかよくわからない。


 俺に関係のない内容が気がする。というかそうだろう。


 でも、反論をしてはいけない。


 これが効果的なのかもしれない。悠真に生きがい的な物はあっても、プライドなんてものはなく、逆ギレなんてものはせず、反論も、もしかしたら許してくれるんじゃないかな? 程度にとどめておく。カロリー低めに生きていくためには、怒られた方がいい。


 ……何一つ実行できてないような気がするが、気のせいだということにしよう。俺って結構カロリー高めに生きているのかもな。

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