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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第3章 失われた記憶編

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96話 世界の異変

 サイレイ国の城での話し合いでは、画期的な意見が出る事は無かった。

 シウン大将の話の後、しばらく静まり返った時間が続いたのだ。

 そして、オウギ王が一番に口を開いたのだ。


「今まで採掘された鉱石を使い、我々人間は素晴らしい道具を作り出して来た。

 どれだけ石の恩恵を受けていた事か。

 それが永遠でない事は何処かでわかっていたはずなのだ。

 なのに湯水のように使い、天の怒りを受けたのかもしれない。」


 そうオウギ王が話すと、誰もが納得するように頷いたのだ。

 王は皆の顔を見回して続けた。


「・・・だが、それでも我々は国の為、今だけでなく先の事を考えて行動しなければならない。

 皆、良い意見があればお願いしたい。」


 そう言い話し合いが始まったが、その日に良い案が出る事は無かった。

 その後の知らせで、採掘量が減っただけでなく、光り輝く石という石が光を失い始めたこともわかったのだ。


 カクとヨクは屋敷に帰った後も、魔鉱石の話は尽きなかった。

 城とは違い、舞の事でだ。


「うちの屋敷には光の鉱石がほとんどありませんよ。

 舞が自分の生まれた世界とこちらの世界を行き来するだけの鉱石を手に入れられないかもしれない。

 舞とは未だ連絡も取れない事だし・・・どうしたら。」


 カクは絶望的な顔でヨクに話したのだ。


「その通りなのだ。

 今、舞と連絡が取れたところで、安易に来る事を勧められないのだよ。

 二度と帰る事が出来ないと、覚悟をしなければならない。

 そう考えると、舞が今、お父上の元に帰っているのは良かったのかもしれない。」


「もう、舞には会えないのだろうか・・・」


 カクは泣きそうな声で呟いたのだ。


「正直今回はわからないのう。

 だが、何か策があるかもしれん。

 良く考えてみるのだ、カク。

 絶望しているだけでは何も変わらん。」


 ヨクはそう言ってカクを元気付けたのだが、それは自分自身に言い聞かせた言葉でもあったのだ。

 ヨク自身も、この難題をどうにかする方法を簡単には思いつかなかったのだ。


             ○


             ○


             ○



 魔人の国では皆がブラックの帰りを待っていた。


 私はユークレイスと一緒に城に戻りすぐに執務室に入ると、そこには幹部全員が集まっていたのだ。

 私を見るなり、ネフライトは勢いよく話し出したのだ。


「ブラック様、お待ちしておりました。

 お話ししなければならない事が。

 ああ、ユークレイスも戻って良かった。」


「どうしたのだ?

 城の中が何やら騒がしいが。」


 城の中をここまで来る間、いつもに比べ皆が忙しそうに動き回っていたのだ。


「ブラック様、この国にある宝石と言うべきものが黒く変色しはじめたのです。

 それも、城の装飾に使われているものや、ブラック様がこの国の結界を作るために作った魔力を込めた石まで、まるでただの岩が置いてあるかのように輝きがなくなり黒ずんでしまったのです。

 いったいどういう訳なのか・・・」


 ネフライトは不安そうな顔をしながら、今わかる範囲の情報を伝えて来たのだ。

 この世界に移り住んでから、いや以前の世界にいた時も、そんな事が起きた事は無かったはず。

 ・・・石・・・


 そう考えていた時、執務室の扉がノックされたのだ。

 ネフライトが扉を開けると、人間の使者により王からの手紙が届いたとの事であった。

 私はネフライトからそれを渡され、すぐに開いたのだ。

 それを読んだ時、この魔人の国だけでなく、人間のいる世界、そして翼人のいる世界に関わる大きな事が起きているような気がしてならなかった。

 私はすぐに人間の王に手紙を書くと、黒翼国の王にも同じように書き記し、両方ともすぐに届けるように話したのだ。


「とにかく、今は情報を集めてください。

 人間の国も同じような事が起こっているようです。

 翼国でも何らかの異変があるかもしれません。」


 幹部の皆にはそう伝え、仕事に取り掛かってもらう事にしたのだ。

 そして、ユークレイスにも皆と同じようにお願いしたのだ。

 舞のいない世界で、ラピスがこの仕事を邪魔する理由は無いと思ったのだ。

 

 ユークレイスの事や舞の事が心配である最中に、国の事も考えなければならない事に、私は頭が痛くなるばかりであった。

 ただ、この世界の鉱石の事に一番詳しい者を知っているのが救いだった。

 私は一人執務室に残ると、自分の手を見つめたのだ。

 そして優しく光る指輪を見つめたのだ。

 この指輪の色は今までと変わらない事にホッとして、指輪を触りながら目を閉じ、心の中で念じたのだ。


『どうしても教えてほしい事があります・・・

 いったいこの世界に何が起きているのか、教えてほしい・・・』


 すると、指輪が温かくなったかと思うと、霧状の光が現れある人物に変わったのだ。


「やあ、ブラック久しぶり。

 相変わらず、この部屋は殺風景だねー

 また問題が起きているようだね。」


 そう言って、ブラックの前にある椅子に腰掛けて微笑んだのだ。

 そう、やはり指輪に宿し者である彼に聞くしか無いと思ったのだ。

 

 

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