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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第2章 暗闇の世界編

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77話 ドラゴンと精霊

 精霊は暗闇の中、光る小さな種を見てどうしたものかと考えていた。


 私は自分を取り戻す事が出来たのだ。

 舞の使う薬の匂いで、思い出す事が出来たのだ。

 しかし・・・これからどうすれば。

 この場所から抜け出す事を色々考えていたのだが、良い考えは中々浮かばなかった。


 そんな時、ある者の気配を感じたのだ。

 私はそれがわかると少しだけ顔を緩めたのだ。

 明らかに彼の気配、あの封印されていたドラゴンだった。

 きっと舞が彼を解放したのだろう。

 すると、あっという間に私の周りは彼の思念で溢れたのだ。

 姿は見えないが、私はドラゴンに囲まれているようだった。


『こんなところで何をしておるのだ?』


 そう言って笑うように話しかけて来たのだ。

 その余裕のある声に私はとても安心したのだ。


「ああ、油断してしまったよ。

 君は上手く封印の石から出て来れたんだね。

 舞のおかげかな?」


 私も少しだけ元気に答えたが、ドラゴンは全てお見通しだった。


『出る事が出来ず、困っておるのだろう。

 我が助けてやろうか。』


「大丈夫・・・と言いたいところですが、その通り。

 さっきまで自分が何者かもわからなかったのです。

 でも、舞の使う薬の匂いを嗅いで思い出しました。

 こんなところからすぐに出たいのですが、今の私では無理のようですね。」


 私はそう言ってため息をついたのだ。


『そうかもしれないな。

 精霊・・・お前は純粋過ぎるのだ。

 だから、自分が正しいと思う事以外は全て悪としか考えられないのだろう。

 そこに闇が入り込んだのだ。

 光と闇は隣り合わせなのだぞ。

 自分の中の闇の部分も受け入れるのだ。

 それも自分であるとな。

 折り合いをつけて、答えが出れば良いのだ。

 ただ・・・忘れるな。

 お前にも大事に思う者がおるだろう。

 その者が悲しむ事や裏切る事だけはしないと考えれば、自ずとコントロールが出来るはずだ。』


 確かにそうなのだ。

 舞の為と思って行った事全てが、本当に舞の望む事とは限らないのだ。

 自己満足でしかなかった事もあった気がする。

 

「流石ですね。

 舞の為に消滅も恐れないあなたの言葉には、重みがありますよ。」


 私がそう言うと、ドラゴンは少し照れたように話し出したのだ。


『我は今まで邪悪な存在でしか無かっただろう。

 だが、そんな我を信じてくれる者がいるなら答えたいと思っただけだ。

 舞もそうだが・・・精霊、お前もそうだろう。

 我に森を預けると言ってくれたお前に答える為に、ここに来たのだ。

 簡単な話だ。

 さあ、我を信じるなら、これから話す事を良く聞くのだ。』

 

 ドラゴンはそう言って、私に計画を伝えたのだ。



             ○


             ○


             ○


 主たる者は焦っていた。


 何者かわからない存在のエネルギーを吸収してみたものの、何かがおかしいのだ。

 確かに自分の糧となった事は明らかなのだが、その量が少な過ぎるのだ。

 さっき見たエネルギーの集合体を考えたら、こんな少ないわけは無かった。

 しかし周りを見ても、その存在は感じられない・・・

 後はどこに消えたと言うのだ。

 それとも思い違いだったのか・・・


 考えながらふと下を向くと、魔人の街が金色に輝く霧に囲まれているのが見えたのだ。

 この光と匂い・・・

 あの人間の娘の使う何かによって、引き起こされた事は明らかだった。

 森で見た光と同じ・・・

 すると、私が生み出した同胞達が次々と倒れていくのが見えたのだ。

 ・・・なんて事だ。

 あれには意思が存在しない為、街中のエネルギーを吸い取った後、回収しにいくつもりだったのだ。

 動けない状況にされた今、すぐに回収に行かなければ消滅させられてしまう。

 下に降りようと考えた時である。

 あの人間の娘と魔人の王が戻って来たのだ。


『娘・・・何をした!!』


 私は込み上げる怒りを抑えられなかった。

 その弱い人間の娘は動じる事なく、吸い込まれるような黒い瞳で私をじっと見たのだ。

 そして私に向かって話して来たのだ。


「精霊を返して。

 精霊の力を、誰かを傷つける為に使われたく無いの。

 彼の力は誰かを守るためのものよ。」


『私にとってはどんな力も全て同じだ。

 私の力の糧となるなら喜んでいる事だろう。

 我らはそう言う存在なのだよ。』


 その人間の娘は表情を変えずに、私をまっすぐに見て話したのだ。


「・・・可哀想ね。

 残念だけど精霊はあなたと違い、そんな存在では無いわ。」


『私が可哀想?

 ふざけた事を!!』


 私はそう叫ぶと黒い剣を作り出し、人間の娘に向けて投げたのだ。

 魔人の王が左手を出し止めようとしたので、私は剣を幾つも出して向かわせたのだ。


 その時である。

 人間の娘と魔人の王の前に、ある光の集合体が現れたのだ。

 それは遥か昔に見た事があるもの・・・

 何故今ここに・・・

 

 


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