75話 舞とドラゴン現る
魔人の街に降り立った緑色の奇妙な者達は、攻撃を加える事もなく、街の中を彷徨っているように見えたのだ。
しかし、一見無害に感じるその者達が何かに触れると、命ある者は全てのエネルギーを消失する事になったのだ。
それは、彼等が通った後の植物達を見れば明らかであったのだ。
その者達に接触した植物達はあっという間に下を向き、全てが茶色く変色し枯れたような姿になったのだ。
ジルコンは集められた情報の下、その緑の者達には決して触れない事をみんなに伝えたのだ。
剣などで真っ二つに切ったとしても、すぐに結合する事がわかった為、出来る限り消失させる事を伝えたのだ。
魔人達の中で、その者達を固める力を持っている者や炎を操れる者など中心となり、その奇妙な存在を消滅させたいったのだ。
ただ数がかなり多く、全てを消滅させるには至らなかった。
それに、その奇妙な者達がジルコンの張った結界に接触すると、ジルコンの力を少しずつ減らしているようで、かなり厄介だったのだ。
しかし、ブラックには主たる者に集中してもらいたかったので、ブラック以外の者達で上手く対応したかったのだ。
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主たる者は薄ら笑いをしてブラックに話しかけたのだ。
『この自然から生まれし者の力は素晴らしいな。
我が遥か昔からの望みをあっという間に叶えてくれたのだ。
この明るい光の下で問題なく生存が出来るとは・・・』
「そうですね。
それはあなたの力ではない。
あなたの中に存在する精霊の力ですからね。
それに、彼はいつまでもその中に吸収されたままの存在ではないと思いますよ。
彼を甘く見ない方がいいですよ。」
私はそう言って、黒い渦を巻いた衝撃波を主たる者に放ったのだ。
すると少しはエネルギーを消失したように見えたが、大きなダメージを与える事は出来なかったのだ。
その時である。
遠くに舞の気配を感じたのだ。
この世界に入った事が、ペンダントの石を通してわかったのだ。
と言う事は、ドラゴンの彼を復活させたと言うことかもしれない。
振り向くとどんどん近づいてくる黒い点が見えたのだ。
そしてそれはあっという間に大きくなり、怪鳥のような物が現れたのだ。
そして、その背中には舞を見る事が出来たのだ。
明らかにその巨大な怪鳥からは、あのドラゴンの気配が感じられたのだ。
忘れるわけがない。
私の中で共存したものなのだから。
そしてアクアの横まで飛んでくると、舞が勢いよくこっちに乗り移って来たのだ。
「ブラック、大丈夫?」
そう言った舞の瞳は黒く生き生きとして、迷いのない強い気持ちが伝わって来るようだった。
それを見ると、自分も何だか力が湧いてくるような気分になったのだ。
「舞、彼は復活したのかい?
そして、何も問題は無かったですか?」
「ええ、彼は私が思った通りよ。
いいえ、それ以上かも。
森の精霊にとっては友人と言うべき存在かもしれない。
精霊はドラゴンを信用して森を預けたのよ。
森はまた復活するわ。
それに、ドラゴンはその信用に応えようとしてくれている。
ドラゴンにとっても精霊は大事な友なのよ。」
舞はそう言って笑ったのだ。
しかし、上空から下の状況を見た舞は顔をしかめたのだ。
「何あれ・・・精霊の力を使ってあんな者を作り出すなんて許せない。」
そう言ってドラゴンに向き直った舞は叫んだのだ。
「ねえ、精霊の事はあなたに任せたいけど、いい?
私は下にいる怪しい者達をどうにかしたいわ。」
怪鳥の姿のドラゴンは笑うように思念を伝えて来たのだ。
『ああ、もちろんだ。
我は精霊と話さなければいけない事があるからな。
全く、本当に取り込まれるとはな。
ああ、魔人の王、久しぶりだな。
エネルギー体である我の方が、お前よりも役に立つぞ。』
そう言って、怪鳥の姿のドラゴンは主たる者を見たのだ。
『お前達は何を話している。
それに、お前は誰だ・・・』
主たる者が怒りを込めた思念を伝えてくると、ドラゴンは小馬鹿にしたような言い方で答えたのだ。
『なーに、その精霊の知り合いだ。
我は精霊に話があるからな。
お前ではないぞ。』
怪鳥の姿のドラゴンは主たる者の直前まで飛んで行き、エネルギー体を出現させたのだ。
解放された怪鳥は上空に飛んで行き、ドラゴンのエネルギー体は、困惑した主たる者を囲み出したのだった。




