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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第2章 暗闇の世界編

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73話 ストームの力

 ドラゴンの姿のアクアに乗ったストームは、左手をあげて空を見たのだ。

 すると、それまで殆ど吹いていなった風が強くなり、厚い雲が徐々にストームの真上を中心に渦を巻き始めた。

 そしてその渦の中心に光が見え始めると、その部分があっという間に大きくなったのだ。

 ストームの真上には円を描く様に青空が顔を出し、明るい光が差し込んで来たのだ。

 そして、厚い雲は外へ外へと押し出され、この一帯は快晴となったのだ。

 ジルコンの予想通り、ブラックの結界に張り付いていた黒い影達は急いでそこから離れようとしたのだ。

 しかし、あっという間のことで殆どの影達は移動出来ず、その場で強い光により消滅してしまったのだ。

 それは黒い灰のような物となり、風と共に消え去っていったのだ。


 ジルコンは城の中庭から上空の様子を見守っていた。

 ストームの力で厚い雲が無くなり明るい光が差し始めると、ブラックの結界に貼り付いていた黒い影の集団が、次々に黒い灰となり消滅していくのが見えたのだ。

 やはりストームの力を信じて良かったと思ったのだ。

 ジルコンはホッとして二人に城に戻る様に思念を送ろうとした時である。

 アクアから先に思念が届いたのだ。

 ジルコンはその思念を受け取るとやっぱりと思い、空の様子を見てため息をついた。

 遠くに黒い影を確認できたのだ。

『大地と闇から生まれし者』の主たる者が現れたのだった。


 ジルコンは二人に、すぐに結界の中に入る様に伝えた。

 精霊を取り込んだ主たる者の力が不明であった為、二人を危険に晒す事は出来なかった。

 主たる者には、強い光はもう効果がないはず。

 アクア達が結界内に入ってすぐに、主たる者である黒い影が城の真上に到達したのだ。

 それはよく見ると影と言うより、大きな鳥を思わせる姿であった。

 その怪鳥のような姿から人の姿に変わると、空を仰ぎ不快な顔をしたのだ。


『なるほど、この光のせいで同胞はほぼ消滅したのだな。

 そして、この街を囲む結界・・・

 魔人共はやはり人間とは違うな。

 だが、この私には効かないがな。

 それに・・・またあの者の力も使える様だ。』


 そう言ってニヤリとすると、自分の左手を見つめた後その手を結界に向けたのだ。

 すると左手から大小入り混じった蔓が多数出て来て、城の真上の結界に張り付いたのだ。

 主たる者は取り込んだ精霊の力を、また使える様になっていたのだ。

 そして結界のエネルギーを吸い取り始めたのだ。



             ○


             ○


             ○



 主たる者の中の片隅に追いやられた森の精霊は、震えながら光る種を握りしめていた。

 しかし暗闇の中でも、その種の光は優しく精霊を照らしていたのだ。


 私はそれを見ていると心が落ち着いてきて、何だか眠くなって来たのだ。

 それと同時に以前嗅いだことがある、ある匂いに気付いたのだ。

 それは私に何かを思い出させてくれそうだったが、私は夢の中にゆっくりと落ちていったのだ。

 それはとても心地の良いものであった。


 夢の中で私は、何もない大地に芽を出している1本の若木を見ることができた。

 そしてその木は大きな大木となり、徐々に仲間と言うべき森が作られていったのだ。

 そうだ!

 これが私自身だ。

 私は今までの生きていた過程を、早送りで眺めているようだった。

 あれは・・・そうだ!

 ハナに助けてもらい・・・

 そして彼女に出会ったのだ。

 舞!!

 私はそこで目が覚めた。

 夢を見ているうちに、私の実体も幼児から少年。

 少年から青年へと戻っていったのだ。


 そうだ、この匂いはハナや舞が使う薬ではないか。

 舞を忘れることがあるなんて・・・

 この匂いがすると言う事は、舞が近くにいるはず。

 私はさっきまでの恐怖と不安だらけの暗闇から抜け出た気がしたのだ。

 手の中の種から発する優しい光と落ち着く匂いで、私は元の自分を取り戻したのだ。

 私は暗闇に囚われていたのだ。

 何とか抜け出る事は出来たが、まだこの主たる者に取り込まれたままなのだ。

 どうすればここから出る事が出来るのだろうか・・・

 外には舞が待っているはず。

 それに、自分の力をこの主たる者に使われる事は我慢ならなかったのだ。

 しかし・・・この怒りで私は我を忘れたようなもの。

 この怒りのエネルギーをコントロール出来れば、何とかなるのだろうか。

 私は冷静に考える事にしたのだ。

 


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