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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第2章 暗闇の世界編

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72話 結界の外

 舞とシウン大将は転移の洞窟の入り口に着くと、怪鳥の姿のドラゴンから降りたのだ。


「シウン大将、色々ありがとうございます。

 後は私とドラゴンで向かいます。」


 シウン大将も一緒に行くと言ってくれたのだが、人間では黒い影達の侵食を防げない可能性があると話したのだ。


「確かにそうですね。

 かえって足手纏いになるかもしれません。

 舞殿も気を付けてください。」


 シウン大将はそう言い納得してくれたのだ。


「ええ、私もブラックのペンダントが無ければ、ただの人間です。

 気をつけて行動するつもりです。」


 そう言い、シウン大将と別れて私達は転移の洞窟に入ったのだ。

 実はドラゴンが怪鳥の姿のままだったので、私達が現れた時洞窟の管理の人達はかなり驚いていたのだ。

 しかし、シウン大将がいたおかげで、私達は難なく魔人の国に向かう事が出来たのだ。

 本当にシウン大将がいて良かったと思ったのだ。


 洞窟は、以前魔獣が飛び出せた大きさはあったので、怪鳥の姿のドラゴンと私は問題なく入る事が出来た。

 そして少し歩くと、見慣れた草原と岩山が目に入って来たのだ。

 ただ、空を見上げると厚い灰色の雲に覆われていて、今にも雨が降りそうな空だった。

 黒い影達が活動するには、好都合な天候であったのだ。

 私はドラゴンである怪鳥の背中に乗せてもらうと、急いで魔人の城に向かったのだ。


 

              ○



              ○



              ○


 

 アクアとスピネルが黒い影達に遭遇した頃、魔人の国ではジルコンが難しい顔で何やら考えていたのだ。


 とりあえず人員の配置はしたものの、主たる者が現れた時に防ぎきれるかが心配だった。

 やはりブラックがいるといないでは、みんなの精神的な部分がだいぶ違うのだ。

 そんな時、スピネルから思念が送られて来たのだ。

 黒い影の集団がこちらに向かって来ていると。

 しかし、主たる者がいない事は確認できているらしい。

 すぐにスピネルは配置に着くように話し、アクアは城の中に戻る様に伝えたのだ。

 そして少しすると、アクアが執務室に移動して来たのだ。


「ジルコン、私はどうすれば良いのだ?

 あいつらは、この街の中でエネルギーを吸い取れる者を狙っているぞ。」


 部屋に現れるなり、アクアが詰め寄ってきたのだ。

 どうも、暴れたくて身体がウズウズしているように見えた。


「大丈夫よ。

 すでに、魔力の弱い魔人達は城に移動してもらったから問題ないわよ。

 アクアはここで待機して。

 いざという時に動いてもらいたいのよ。」


 部屋には銀髪のストームが静かにソファーで待機していた。

 彼女が何故ここにいるのかアクアにはわからなかったが、指示通り待つ事にしたようだ。

 流石のアクアもふざける事が許されないのはわかっている様だった。

 

 私はふと窓に目を向けると、外がいつの間にか暗くなっている事に気付いた。

 しかし、まだ日が沈む時間では無いはず。

 窓に駆け寄り、外を見たのだ。

 すると黒い影達が広がり、ブラックの作った結界に張り付いていたのだ。

 その為、元々曇っていたところに黒い影達により、辺りは夜の様に暗くなってしまったのだ。

 とは言え、結界のため入って来れるわけは無いはず。


 だが、本当にそうなのか不安があったのだ。

 ある程度の時間をかければ、結界のエネルギーを吸い取り入り込む事が出来るのでは無いかと・・・

 もちろんすぐにと言うわけでは無いのだろうが。

 ・・・念のためにストームとアクアに動いてもらう事にしたのだ。


「アクア、この城の上空にストームを連れて行ってくれる?

 あなたなら、問題なく結界を通れるはずだから。」


「ん?どう言う事だ?

 ブラックしかあの結界は通れないはずでは?

 ・・・あ、この額の石の関係だな。

 何で早く言わないのだ。

 そうすれば、もっと簡単に出入りできたでは無いか。」

 

 アクアはそう言ってジタバタしたのだ。


「だってそれを知っていれば、すぐにどこかにいなくなってしまうでしょ。

 まあ、とにかく指示に従って。

 後は彼女に話してあるから。」


 アクアは納得のいかない顔をしていたが、渋々指示に従ってくれたのだ。

 アクアは城の外に出ると、大きなドラゴンの姿に変わったのだ。

 そしてストームを翼の横に乗せて上空に急上昇したのだ。

 問題なくブラックの結界を越えると、厚い雲はあったが結界の中のような闇ではなかった。

 やはり黒い影の集団が結界にへばり付いていていたのだ。

 よく見るとブラックの魔力を込めた石の色が少しずつ薄くなっている様に感じたのだ。

 黒い集団が結界のエネルギーを吸い取っている事は明らかだった。

 アクアがこのままではまずいと思った時、ストームが声をかけたのだ。


「さあ、久しぶりに私の魔法を披露することが出来るわ。

 まあ、見ててね。」


 そう言ってストームは空に向かい、左手をまっすぐに上げたのだ。


 

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