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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第2章 暗闇の世界編

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62話 主たる者の行方

 私はカクとヨクが戻るのを待った。

 その間にブラックやジルコンと今後の事を話し合ったのだ。

 主たる者が消えてどこに行ったのか・・・


 私は主たる者の立場になって考えたのだ。

 精霊を取り込む事で、きっと主たる者は明るい光の下でも存在出来るようになったのだろう。

 そうであるなら、まずは試したいと思うはず。

 それに一瞬で消えた事を考えると、それは精霊の力と思われるのだ。

 精霊は私に渡した種によって現れた訳で、魔人などの空間把握による移動では無かったはず。

 そうなると、一瞬で消えるとしたら、精霊の森に戻ったとしか考えられなかった。

 それに彼にとっては、人間などどうでも良い存在になっていると思うのだ。

 その証拠に、精霊を吸収した主たる者は、私を含めここにいる人間の事は放置して消えたのだ。

 やはり、自分の出来る事を試したいはず。


「ねえ、ブラック。

 主たる者は精霊の森に行ったのじゃないかな?」


 私がブラックにそう話すと、ブラックも頷いたのだ。


「そうかもしれません。

 それに、あの主たる者にとって邪魔なのは人間ではなく魔人のはず。

 そう考えても、舞の言う通りだと思います。」


 私は急いで自分のスーツケースから、持って来た漢方薬を取り出したのだ。

 そして薬草庫に行って、出来るだけの鉱石の粉末を持ち出したのだ。

 私は必要になるだろう薬を、すぐに作ろうと思ったのだ。

 それを見てブラックが心配そうな顔をしたのだ。


「舞、一応聞いておきますが・・・

 一緒に行くつもりなのかい?」


「もちろん。

 絶対に精霊を助けるわ。

 だからカクとヨクが来たら、学校はもう少し休む事を話すわ。

 ダメって言っても行くからね。」


 私は真っ直ぐにブラックを見て言ったのだ。


 そして精霊からもらった、優しく輝く弓矢を見て思ったのだ。

 絶対に精霊は消えてないはず・・・

 きっと今頃、不安や恐怖、怒りそして悲しみで溢れているに違いない。

 私はそんな暗闇の中でも、光が必ずある事を伝えたいのだ。

 人間も生きていれば、自分自身の闇に気付く事があるのだ。

 私も今まで自分の醜い気持ちに、どれだけ嫌になった事か。

 でも、そんな時でも家族や友人、仕事・・・色々なものから元気をもらい、こんな私でも壁を乗り越えて来たのだ。

 精霊はこんな時にどうすれば良いか、きっとこれから学ぶはずだったのだ。

 そんな矢先に、主たる者に出会ってしまったのだと思う。

 だから伝えたい・・・

 誰でも、同じような気持ちになる事を。

 そして、精霊の周りにはその事を理解して、側にいる人がいる事を伝えたいのだ。

 ・・・一人じゃないって。


 そしてもしも・・・私の希望でもあるのだけど、もし精霊が今の暗闇から光を見つける事が出来たなら・・・

 ・・・とにかく、今は主たる者を探さないと。


 そう思っていた時、お屋敷の扉が開いたのだ。

 カクとヨクが帰って来たのだ。

 ブラック達がいる事に二人は驚いていたが、すぐにヨクは険しい顔になったのだ。

 只事でない事を、すぐに感じ取った様なのだ。

 そして私は今までの事を話したのだ。


「それで帰って来たばかりなのに、薬の準備をしようとしているんだね。

 舞も行くのかい?

 とても危険じゃないかい?」


 カクは私の手を取り真剣な顔で見つめたのだ。

 本当に心配してくれている事がわかるので、私は申し訳なく感じたのだ。

 でもそれ以上に精霊を助けて、伝えたい事があるのだ。

 こんな弱い人間でも、きっと役に立つ事があると私は思ったのだ。


「それでも、行きたいの。

 心配ばかりさせてごめんね。」


 私はカクの手を握り返して言ったのだ。

 それを見ていたヨクが、私に鍵を渡したのだ。


「薬草庫の中の、戸棚の鍵だよ。

 光の鉱石はその中だ・・・

 必要なだけ持って行きなさい。」


 そう言ってヨクは私の肩に手を置いたのだ。

 私は頷くと、急いで薬を作る事にしたのだ。

 カクはそんな私を見て、何も言わずに準備を手伝い始めたのだ。


 私はこの二人の期待に応える為にも、精霊を助けて無事に帰ってくる事を誓ったのだ。

 

 

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